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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
37/38

水の物語 6.Put together (31)

 ギュフのCOEの部屋には、絹田槐が居た。部屋には、椎野真生、ピクシー、柊の3人とオンライン上の社員に向けて、槐からの報告が行われていた。

「ギュフという会社のブランディングも大事だとは思うんですけど、私の立場では奨学生たちの成長を優先的に考えています。奨励する代わりに、広報誌やインタビュー記事を引き受けていただくというのは良いとは思うのですけど、彼ら、彼女たちのイメージが守られるかどうか。望んだとおりになっているかということは、話し合いを繰り返していきたいと思っています」

槐は柔らかい雰囲気なのだけれども、その口調は強かった。それに対して、オンライン上の男はひときわ大きな拍手をした。

「素晴らしい。このような美しい理想を掲げられるのは、我々の会社がそれだけ豊かな証ですな」

ピクシーはそれが皮肉だということに気が付いて、嫌そうな顔をしたが、真生はニコニコと笑っていた。

「でしょう。うちの社員たちはとても優秀で、業績を上げてくれるんです。だから、教育に対して貢献する事業を展開できるんです。それもこれも、あなた方経営陣が嫌な仕事を引き受けてくださっているからですよ」

その言葉は皮肉ではなくて、本当に心からの言葉で嫌な感じがしなかった。

「僕は、人間の誇り、プライドは大切なものだと思っている。高校を設立して教育事業を展開することや奨励金制度でサポートを行うというのは、目に見える売り上げとの連関を直接的に説明できませんけど、人の心に対して訴えかけるものになるんです。教育や奨励金を受けている当人は勿論ギュフに感謝してくれる。社員にも生徒や若い人たちの育成に関わってもらうことで、新しい考え方や気付きを得ることができるし。そして、ギュフの顧客に対しても、訴えかけるものがある。良いことをしているというプライド、誇り。そういうものをギュフに付加する、そんな事業です」

「別に、それは教育に限る必要はないでしょう」

皮肉を言った男ではなくて、年配の男が異を唱えた。

「企業の社会貢献とギュフに携わる人間の誇りを繋げてのご発言だと思いますが、我々が出来る貢献は、教育に限りません。環境など他に充当するべきこともあるでしょう」

「……そうですね。じゃあ、言いますね。僕は、自分が頑張って大きくした会社のお金を自分の好きなものに投資したいんです。不特定多数に対する貢献ではなく、何に、誰にというターゲットをしっかりと定めて投資をする。芸術奨励金というのは、一企業としての見栄えをよくするものであると同時に、僕が僕の好きな者に対して尽力をする。そういう制度だと思っていただければいい」

強引な物言いをする真生に対して、オンライン上にいるメンバーたちは顔を歪めたが、彼らはその意見を結束させることは出来なかった。彼らは画面越しに同じ場所に居るのだが、現実世界では一人一人違う場所に居て、その場の空気を通じて団結をするということができない。一方で真生は真生の側近たちと一緒にいて、多数で会議に参加している。どのような形で話を通すのかというのは、戦略である。


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