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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
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水の物語 6.Put together (20)

 雨がシトシトと音を立てて降り始め、それは間もなくザァザァという大きな音になった。桜桃はカバンを雨避けにしながら、慌てて屋根のある方へと向かった。他の人には見えない河童の緑衛門が桜桃の後ろに付いてきて来ていた。

 111号室の扉を開けて、水を滴らせながら中に入ると、桜桃は他の住人に対して言った。

「タオル……貸して欲しいんだけど……」

双葉は立ち上がり、急いで部屋に向かった。双葉と律には河童の緑衛門が見えていたから、何かが起こっていることを察することができた。律は、息を少し切らしている桜桃に歩み寄って言った。

「それ連れてとるんやったら、しっとりするで?」

「……そうなんだけど、付いてきちゃってて……。でも、楽器濡らすとまずくて……」

律が、緑衛門を見ると、緑衛門は頷いて、小さくなった。

「カパパ」

そして、緑衛門はそう言い残して、窓から外へと出ていった。珊瑚には緑衛門の姿が見えていないから、向こうで他のことをしている。桜桃は、緑衛門を見て驚いたけれども、冷静さを保った。妖怪とかそういうのは、姿かたちを自由自在に変化させるものなのだろう。

「あれ、もう居なくなっちゃった? タオル、もういらないかな?」

「いや、渡したって。拾ってきてはるみたいやからね」

「拾ってきてる? 臭う……とか?」

桜桃が心配そうに自分の匂いを嗅ぐと、律は鼻で笑った。

「強い感情。厄介そうやから、取れへんやろけど」

双葉の渡してくれたバスタオルで身体を拭きながら、桜桃は自分の身体から何かがはがれていくような感覚を覚えた。双葉がほんのりとかけた術が、解呪として働いたようだ。

「やるやん」

律はそれに気付いて呟いた。双葉は感覚的に術を使う。それは無意識で、無駄がなくて美しい。余計な負荷がかかってない使い方を見て、律は双葉により好感を抱いた。

「丁度いいわ。集まっていることだし、生徒会選挙の戦略練るわよ。本当は椥紗もいる方が良いんだけど」

珊瑚は良いタイミングで3人に呼びかけた。

「じゃ、ワシは退散……」

「この部屋でくつろいだ分、情報位は置いていくべきだと思うけど? 通信科の立候補者とかそういうの、アンタのアカウントから調べりゃ分かることもあるの。協力するでしょ?」

「そんじゃ、ゆっくりさせてもらいますか」

強気の珊瑚を見て、律は面白そうだと思った。


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