水の物語 6.Put together (19)
生徒会長になることのメリットは、生徒代表として、教師たちだけではなく、雁湖学院の経営母体であるギュフに対しても対等な立場で意見したり、議論をすることができるというものである。勿論、他の生徒会役員も議論のテーブルに着くことはできるのだけれども、最終決定は生徒会長が下せるという「特権」を持つ。
珊瑚は生徒会選挙というシステムのことを訝しげに思っていた。椎野真生は、より実践的な教育を目指しているので、社会の中でも使える力を育む機会として生徒会というシステムを作ったはずだが、何かが引っかかる。
「ただいま~」
「こんばんは。もう珊瑚ちゃん帰ってたんや。久しぶり」
双葉が律を連れて戻ってきたので、珊瑚はPCを閉じて脇に移動させた。
「勉強? 偉いなぁ」
「そうよ。暫く見なかったけど、生きてたのね」
「心配してくれとったん? 意外やなぁ、珊瑚ちゃん」
「まさか。アンタは狐なんだから、何やられたってピンピンしてるでしょ」
毒のある言い方だけれども、珊瑚に悪気はない。
「それで、アンタは何を企んでるの? こっちに全然いないでしょ」
「札幌おるだけ。ワシは何も知らん。呼ばれたから行ってるそんだけや」
「何それ。全然主体性ないじゃない」
「人間らしいやろ?」
「何それ。プライドとかそういうのはないわけ?」
「人間ごっこやもん。社会人ってそういうやつやん? 会社に入るってそういう感じっていうし? 与えられたことをする。それがどういうことに繋がっとるとか、仕事しながら分かるようになってく。なかなかおもろいけどな」
「それ、社畜って言うんでしょ。主体的に働かないっていうのは、飼われている動物とおんなじ」
「よぉ知っとるやん。まぁ、珊瑚ちゃんは知識だけは豊富やからねぇ」
馬鹿にされてるが、的を射ているので、相手にしない、無視をするという態度をとった。
「りっちゃんは人を馬鹿にするという性に逆らえないからね。慣れるしかないね」
双葉がフォローを入れると、律は少し笑みを浮かべた。
「一緒に居ればわかるよ。りっちゃんからは悪意を感じない。執着がないんだよ。それが多分人間との違いかな。刹那的な面白さとか、そういうのが貴方を動かす力になってる」
「双葉はどうしてそんなに余裕があるわけ?」
「……私じゃなかった時の記憶があって、それが、自然を教えてくれる。風の感じ方、水の操り方……」
「いつの間にか、出来ることが増えとる。ワシ、何もしてへんのに」
「分からないんだけど、きっとね、それは違う世界の話。時間も空間も違うから、りっちゃんとは違う強みを持っている。だから、引け目とかそういうのを感じない。……りっちゃんからすれば、気に食わないかもしれないけど」
「そういう怖いもの知らずなところも含めて、ワシは双葉ちゃんが可愛いと思うとるからな。それに、ひと悶着ありそうやから、どうもなぁ……」
律はそう言いながら窓の外を眺めた。




