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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
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水の物語 6.Put together (18)

海の渦という自然ではなく、それに近い感情……、それを覚えたのはいつだろうか。レッスンや自分で練習をしている時ではない。大きなステージでそれを覚えている。だとすれば、コンクールの一次予選の時だ。地方のそこそこ大きなホールでの一次予選、その時に弾いたヴァイオリン協奏曲は、特別だった。中学二年生の時の桜桃はどんな風にこの曲を弾いていた? どんな感情が桜桃の身体を駆け巡った?

(込めてた、感情……)

その時弾いた音は、激しくて気持ちよくて、どこか狂気めいていたのかもしれない。ステージで演奏できることが嬉しくて仕方なかった。また弾きたいと思った。ステージに立つと、自分ではない存在が、自分の知らない感情を教えてくれるような気がした。それは、聞いている人にも届くような響きを持っているように思った。

「桜桃、桜桃聞こえてる?」

画面上の奏に呼ばれて、桜桃は現実に引き戻された。

「次の予定があるので、そろそろ終わりにしようと思うんだけど……またレッスン依頼してよ」

「あ……うん」

桜桃は適当に挨拶をして、奏が通信を切った。

 忘れてた。船で遭難して、演奏の中で覚えた怒りも悲しみも、海の中に消えてしまっていた。音が、音楽が何かを導いている気がした。その引力は魅力的で、その何かを知りたいと桜桃は思った。

 今日は良い経験をした。面白い奏との出会いだったし、演奏した時間はほんのわずかだったけど、桜桃は気付きを得ることができた。桜桃が参加することができなかったコンクールの地方予選、そして全国大会……物語の続きを知ったことで、音楽を完成させたいと思った。ヴァイオリン協奏曲が導く感情、それが自分にもたらすものを捉えたいと思った。



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