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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
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水の物語 6.Put together (7)

そして、興奮して話を続けた。

「でしょ、でしょ。演奏する人なら分かってくれるよね。元々ピアノ以外の楽器もやってみたいなって思ってたんだけど、なかなか本気で取り組むことができなくて。吹き方教えてくれる動画もあるし、オンラインレッスンもあるし、引きこもりでも上手くなろうと思えば色々な方法があるの」

得意げに話す奏に対して、桜桃は違和感を覚えた。

「でも、若宮さんは、それで満足できる人じゃないように見えるんですけど……」

桜桃が控えめに、けれどもしっかりとした口調でそう尋ねると、奏は苦笑いをした。

「やっぱりわかるか。楽器は弾けば弾くほど、吹けば吹くほどうまくなるよ。でも、1週間くらいでダメだった。感情を乗せられるくらいフルートが上手くなったわけじゃない。でも、違う。……これじゃどうしようもないなぁって思った。だから、何とかしようと思って色んなこと考えて、沓原先生にEmailを送ったんだ。だったら、ヨーロッパに来いって言われてさ。お金ないけど、行っちゃおうって……」

沓原というのは、ヨーロッパを中心に活動する若手作曲家で、桜桃もその名前くらいは聞いたことがあった。

「知り合いだったんですか?」

「話したこと、なかったよ。入賞したコンクールで、審査員をしていたっていうだけの関係だよ。……遠くに行きたくて、インターネットで連絡できるような感じだったから、もっと演奏が上手くなるためにヨーロッパに行きたいって……何書いたかなんて忘れちゃったよ。本当に必死だった。もう、絶対恥ずかしいこと書いてただろうな」

奏は恥ずかしそうに手のひらで顔を隠した。

「コンクールの中学生の部なんて、世界的に活躍している先生にとっては大したことないものなのに、覚えていてくれてさ、それで、先生の知り合いの旅が得意な人を紹介してくれて……飛行機のチケットとって、空港まで迎えに来てもらって……」

奏は約1年前の大冒険を雄弁に語り始めた。


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