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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
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水の物語 6.Put together (4)

桜桃にとって、音楽とはその演奏者とかそういうのの性格とか感情とかを描写するもので、感情が溢れるような音楽を桜桃は良い音楽だと考える。楽譜は作曲家の音楽の設計図で、それ通りに弾くことも大切だけれども、作品にどう自己を投影させるかというのがより大切だと考えている。

「今は日本じゃないんですか?」

「うん、そうなの。ヨーロッパで、色んな先生のところで勉強させてもらってる。カバン持ちってのかな。見たり、聞いたりするのをメインでやってる。時々弾かせてもらったりするけど、まぁお遊びみたいな……。コンサートに行くと、本番は勿論なんだけど、それ以外の時間も大事で、雰囲気掴めるし、良い経験させてもらってる。あ、最近は雁湖の勉強が大変になってきたから、頻度は減ったけど、旅も楽しんでる。ヨーロッパの色んな所を知っておかないと、分からない曲、たくさんあるでしょ。クラシックの楽譜を読むのなら、作曲家のことを理解することが大事。ただ譜読みするだけならAIだって出来ることだから」

奏は桜桃に説明すると同時に、自分のスタンスを確認するように話をした。

「ヨーロッパってどこですか? 私、イギリスには行ったことあるんだけど、海外生活って、結構大変じゃないですか?」

「えーいいなぁ。私、まだ行ったことなくて。今、居るのはドイツで、ホームステイしてる。先生についてイタリア、フランス、ポーランドに行ったけど、まだまだ。イギリスには旅行で行ったの?」

桜桃は首を横に振った。

「親の仕事でです。……ちょっと田舎だったので、現地校に通って、全然英語分からなくて……」

「だよね。最初のステイ先の時に、現地校に行くように勧めてもらったんだけど、全然分からなくてさ。もうさ、どうしていいのか分かんないから、もうその後は現地校に通うっていうのはやめちゃった」

「現地校は英語?」

「そんなわけないじゃん。ドイツはドイツ語、フランスはフランス語、イタリアはイタリア語、ポーランドはポーランド語だよ。まずそれが大きな壁なんだよね」

危機的な状況のことを話しているのに、奏はとても楽しそうだった。

「不思議? そんなことないでしょ。翻訳使えば、自分がやりたいことは伝えることできるから、Wi-Fiあればなんとかなる。ナシで伝えられないと心が通じてるとか対等とかそういう感覚はないんだけど、生活するのは問題なくなったよ」

「……親とかはいないんですよね?」

「親は勿論、日本だよ。最初の頃は、日本人の先生についてたけどね、今は一人。もう何とでもなる感じ」

「……強い」

強そうなのは外見だけではなくて、中身も強いのだ。奏の強さは見ていて気持ちがいい。


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