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ぐだぐだ話す風太の話を要約すると、こうだった。
私の対象の政治家の政敵が風太のお得意さんで依頼者、対象の目に余る行動の連続に今回の依頼をしたようだった。私の依頼者とは違うため、この依頼が終わったら依頼者に報告しなければ。
風太自身は私と同じ(!)16歳で、高校に入学した今年の春から依頼を受け始めたそうで、その点では私の方が6年以上実践経験を積んでいることになる。
ただ、ポニーテールの長さ、意思の強そうな吊り上がり気味の目、全身についたしなやかな筋肉を見るに私より少し後か私と同じくらいに忍術の練習は初めていそうだった。
また、彼は10人の忍者の組織にいるらしい。
しかも同県。大戦後、忍者同士の情報は入ってこなかったのでありがたいと思おう。
話しているうちに夕方になった。そろそろ対象が移動し始める時間だ。風太がこれから細工しに向かっても絶対に間に合わないだろう。
「風太、私も依頼を受けているんでね。そろそろ動くことにするわ。…さよなら」
風太に向けていたナイフが一閃し、朱が飛び散り、風太が動かなくなったことを確認すると、私は路地裏から密やかに走り去った。
結論から言うと、今回の依頼は成功した。予定通り、対象を乗せた車が予定地点に来た時に細工を作動させて事故を起こし、対象に怪我を負わせて会合に間に合せなかった。
これで事前に邪魔が入ることを想定して、どう動くか判断していたであろう会合相手からの印象を下げられただろう。
依頼者に速報をメールで入れると私は新幹線に乗り、家へと帰った。
報告書を早く上げなくては。
日曜日の夜に家に帰りつき、風太の依頼者のことも含めた報告書を書き上げ送った後、私はお風呂に入り次の日の古文の予習をしていた。
殺してしまった同い年の風太のことは少し気にかかったが、既に自分の手は汚れている。どうせ後戻りもできない。それだったら、自分のためになることをした方が良いと、古文に現代語訳をつけていく。
そうして夜は更けていく―――
死体処理はファンタジーなので割愛します