表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/195

水の妖精ウンディーネ

 

 魔王の娘ニーラ、ウール王女、水の妖精ウンディーネ、そして俺がリヴァイアタンに近付いて行くと、予想をはるかに上回る大きさに戸惑う俺達。

 以前戦った、クラーケンの数倍の大きさだ!


 島が、そこにあるのではと思うぐらい巨大。

 リヴァイアタンが俺達に気付くと、怒り、狂った声で言う。


「お前は噂のハゲワシ!

 ニーラ様をかどわかしたのはお前だったのか!


 ニーラ様、こちらに早く!

 奴から離れるのです」


 リヴァイアタンの言葉は耳をつん裂き、大波が周りに発生している。

 言葉を発するだけで、大波が起こるなんて!


 魔王によって、心を支配されているリヴァイアタンに向かって、ニーラは必至に言う。


「自分の意思で、お父様から逃げて来たのです。

 リヴァイアタン、目を覚まして!


 貴方はお父様に操られているのです!

 お願いだから私を信じて!」


 リヴァイアタンは、ニーラの言葉に動きが止まった。


 でもリヴァイアタンはすぐに動き出し、大きな口を開けて俺達に襲いかかって来た。

 帆船をも丸呑みに出来そうな巨大な口!


 しかし、余りにも大き過ぎるリヴァイアタンは、動きが少し遅い。

 俺とウール王女は、余裕でニーラを連れて上空に逃げる事が出来た。


「おのれ〜〜、ハゲワシめ〜〜!」


 下の方でリヴァイアタンが‘悔しがっている。

 俺達を捕まえるのが無理だと判断すると、帆船の方に泳ぎだした。


 や、やばい!

 リヴァイアタンは巨大だから、泳ぐのが無茶苦茶早いィィィ〜〜!


 このままだと、全速で逃げている帆船に追いつく〜〜。

 俺は横に居る、ウンディーネに早口で言う。


「おおうずを、おこちゅーー!」


 起こすが、い、言えない……。

 イヤイヤ、そんなことよりもリヴァイアタンだ!


 ウンディーネはリヴァイアタンと帆船の間に、いくつもの大渦をつくった。

 さっきよりも泳ぐ速さが落ちたリヴァイアタンだけれど、大渦に飲み込まれる事なく帆船との距離を縮めている。


 大渦とリヴァイアサンと同じぐらいの大きさだから、足止めにはなっていない!

 このままだと、いずれ追いつかれる。


 どうする俺……?


 そうだ!

 ニーラの能力を使って、リヴァイアタンを魔王の支配から開放するのを忘れていたよ。


 きっと、オシャブリを念入りに吸わなかったから忘れたんだ。

 俺も、まだまだ若いよな……。


 俺は今度、ニーラに早口で言う。


「にーらの、のうりょく〜〜、つかう〜〜!」


 お……。

 思った以上に早く、しかも正確に言えたよ俺〜〜!


 嬉しい〜〜!

 って、喜んでいる暇はな〜〜い!


 ニーラは頷くと、リヴァイアタンに向かって呪文を唱え始める。

 今まで使ったことの無い能力なので、精神統一の為に呪文を唱えているんだ。


 呪文を唱え終わると、ニーラは両手をリヴァイアタンに向けて魔法を発動する。

 黒い塊がニーラの手から放たれると、リヴァイアタンに向かって行く。


 しかし、リヴァイアタンの頭に狙ったであろう黒い物は、リヴァイアタンからそれて、虚しく海の中に消えた。

 遠くから狙ったから、リヴァイアタンに当たらなかったんだ。


 でも、リヴァイアタンの近くに行けば捕まってしまう。

 どうする俺!


 そうだ!

 絶対零度アブソリュートゼロの魔法だ!


 クラーケンを凍らして魔石に変えた魔法があったよ。

 オシャブリを念入りに吸って精神を統一すると、俺は手の中でイメージを開始する。


 絶対零度アブソリュートゼロのイメージができたので、リヴァイアタンめがけて俺は魔法を発動した。


 ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜。


 銀色の大きなかたまりが、リヴァイアタン目掛けて行く。

 かたまりの通った後には、ダイアモンドダストが冬の太陽を浴びてキラキラと輝いている。


 カッキィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!


 下の方で、海面が凍った音がする。

 ダイアモンドダストが風に流されて視界が元に戻ると、リヴァイアタンが氷漬けになっていのが見える。


 よかった〜〜。

 思ったより簡単だったよ。


 バッキィィィ〜〜〜〜〜〜!!

 バッキィィィ〜〜〜〜〜〜!!

 バッキィィィ〜〜〜〜〜〜!!


 何度も氷を割る音が聴こえてきている。

 氷は割れて、リヴァイアタンが再び泳ぎだした〜〜!


 リヴァイアタンの周りの海が凍ったと思っていたら、表層だけだったみたい……。

 凍っていなかった巨大な尻尾で、下から氷を壊したんだ。


 リヴァイアタンが大きすぎて、全部凍らなかったみたい……。

 さっきのが、今の俺に出来る最大の絶対零度アブソリュートゼロ


 クラーケンを倒した時みたいに、海が浅かったら全部一度に凍るんだけれど……。

 この辺りは大洋なので水深はかなり深い。


 どうする俺……?

 何か手はないのか。


 このままだと帆船が危ない!


 そうだ!

 水深を半分にすると、リヴァイアタンを一度に凍らせる事ができるはず。


 ウンディーネにその事を伝えると、悲しそうに言う。


「リヴァイアタンが余りにも大きいので、その海域の水深を半分にするのは、私の魔法能力では出来ないのです。

 魔法能力が高ければ可能なのですが……」


 リヴァイアタンがあまりにも大きいため、ウンディーネの能力が使えない。

 どうにかして、リヴァイアタンを止めないと!


 もしかして、痺れの毒が有効か?

 いや、リヴァイアタンが巨体なので、それ相応の毒の量が必要。


 今の俺のレベルでは、動きを止める量の毒が出せない。


 ウール王女を見ると、真剣な表情で俺を見ている。

 トルムルが、きっとリヴァイアタンを止めてくれるという感情と共に!


 どうする俺!

 もう、手がないのか?


 ウール王女を見ていると、王女の体に、俺の心が移動できた事を思い出した。

 もしかして、ウンディーネの体に、俺の心が移動できる……?


 もし出来れば、俺の魔法とウンディーネの能力が合わされば、水深を半分にできるはずだ!

 モージル妖精女王と俺は心で繋がっている。


 全ての妖精達は、王女と心で繋がっている。

 王女の心を通って、ウンディーネに入る事ができるはずだ!


 その間、俺の体はウール王女に守ってもらえればいい。

 何かあれば、隼のごとく逃げる事が出来る。


 迷っている暇はない。

 帆船にリヴァイアタンはもうすぐ追いつく。


 俺の考えた事をウンディーネとウール王女に伝える。

 それを聞いたウンディーネは驚きながらも言う。


「今まで聞いた事はないですが、もしかしたら可能かもしれません。

 トルムル様に、私の体を委ねます」


 ウンディーネはそう言うと、目を閉じる。

 俺の体は、隣で聞いていたウール王女に渡す。


 王女も驚いていたけれど、俺の体をしっかりと重力魔法で受け止めてくれた。

 俺はすぐに、モージル妖精王女の心を経由して、ウンディーネの気配を探した。


 見つけた!

 ウンディーネの気配!


 妖精の国に行った要領で、心だけウンディーネに移動する。


 ……?

 体が軽い……。


 ウンディーネの体が、こんなにも軽いなんて!

 しかも、海水を手足のごとく魔法で動かせるのが分かった。


 帆船と大陸に津波がいかないように気をつけて、リヴァイアタンの居る海域を、水深を半分にする為に魔法を発動する。


 ゴォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!


 リヴァイアタンの泳いでいる海域の海水が、急激に少なくなっていく。

 オシャブリを吸って精神を統一すると、俺は手の中で絶対零度アブソリュートゼロのイメージを開始する。


 イメージが出来ると、深度が半分になるまで注意深く観察する。


 今だ!


 リヴァイアタンめがけて俺は、絶対零度アブソリュートゼロを発動した。


 ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜。


 さっきと同じように、銀色の大きなかたまりがリヴァイアタン目掛けて行く。

 かたまりの通った後には、ダイアモンドダストが冬の太陽を浴びて、再びキラキラと輝いている。


 カッキィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!


 下の方で、海面が凍った音がする。

 ダイアモンドダストが風に流されて視界が元に戻ると、リヴァイアタンが完全に氷漬けになっていのが分かった。


 俺はウール王女に、命力絆ライフフォースボンドを使って言う。


『うーるおうじょ、いまだ〜〜』


 ウール王女は、俺が言ったと同時にニーラを連れてリヴァイアタンに向かって急降下して行く。

 ハヤブサの如く!


 ニーラも呪文を再び唱えている。

 リヴァイアタンに2人が近くと、ニーラが魔法を発動した。


 黒い塊が、凍った海面の少しだけでているリヴァイアタンの頭に当たる。

 内部に黒い塊が入り込むと、リヴァイアタンの戦意が急速に無くなっていくのを感じる


 成功したのか、俺たち……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] トルムルちゃんすごく可愛いです(喋ってるところ) 内容も面白くてよき!!! 売っていたら買うかもしれんそんなレベルですよ! 投稿楽しみにしてます
[一言] 更新待ってるよ〜 これからも投稿頑張って下さい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ