温泉
ムルマルム国に居るヴァール姉ちゃんが、第一王子と婚約した。
山賊退治に時間を使ったけれど、予定通りに城に着きそうでよかった〜〜。
明日の夜に、城で婚約披露宴がある。
各国の王子級の人達が大勢集まる見たい。
そして、王妃様の話では賢者も1人来るらしい。
賢者と会うと緊張しそう。
赤ちゃんだから賢者と会話ができない。
けれど、一目見たいんだよね。
当面の目標が賢者だから、とにかく参考にしないとな。
最近、賢者なったばかりの若い男性らしい。
ヴァール姉ちゃんや、他の国に住んでいる姉ちゃん達に久し振りに会えるのも嬉しい。
けれど、やはり賢者に会うのが楽しみ。
……?
もしかして、俺って賢者のファンになっている……?
城に着くと、ヴァール姉ちゃんが出迎えてくれた。
姉妹の中では細身で背が低く、胸は小さいけれど柔らかい印象……、かな?
新生児の時、もっとも優しく俺を抱いてくれた優しい姉ちゃん。
眠くなった時、この世界の子守唄を透き通るような声で歌ってくれた。
最後まで聞きたかった。
眠気を誘う歌い方だったから、すぐに寝てしまった俺。
「お久しぶりでございます、アンゲイアー王妃様。
遠い所までお越しくださって、ありがとうございます。
ヒミングレーヴァ王女、そして始めましてウールバルーン王女。
本当にありがとうございます。
王様、王妃様、王子は公務で忙しいので、後ほど皆様に挨拶に伺いたいと申していました」
このあと、丁寧な挨拶が交わされている。
ヴァール姉ちゃんの婚約の知らせを聞いたあと、父ちゃんから姉ちゃんについて、いろいろと教えてくれた。
ヴァール姉ちゃんは、弓使いのグルヴェイグ教授の愛弟子なんだって。
グルヴェイグ教授の技を全て受け継いでいて、世界でも5本の指に入るくらいの弓使い。
教授の推薦で、この国の弓矢隊副隊長に就任。
それって、エリートコースそのものだよね。
部下の中に第一王子がいて、彼を教える立場だったヴァール姉ちゃん。
それで親しくなったんだろうって、父ちゃんが言っていた。
決まりきった会話のやり取りを終えると、ヴァール姉ちゃんは俺の所に来た。
「トルムルもお久しぶり。もう歩けるのね。凄いわ!
まだ8ヶ月なのに!
ウールバルーン王女もすでに歩いているし、2人とも成長がとても早い。
本当にビックリ。
トルムルは生まれた時は少し痩せていたのに。
今ではプックリとしていて、とても可愛いわよ」
「バ、バブゥー」
俺がそう言うと、ヴァール姉ちゃんは俺を抱き上げてくれる。
姉ちゃんに抱かれるのは新生児以来だ。
今回も優しく抱いてくれるヴァール姉ちゃん。
胸は小さいけれど、しっかりと柔らかさを感じている俺。
ヴァール姉ちゃんの様な胸だと、恐怖心を感じなくなったみたい。
成長したよね俺。
「この城の地下にはねトルムル、大きな温泉があるのよ。
今夜、一緒に入ろうね」
え……?
この世界にも温泉があったんだ。
……って言うか、なんで男の俺とヴァール姉ちゃんと一緒に入らなくてはならないわけ。
断固拒否!!
「ブー」
俺がそう言うと、近くにいたエイル姉ちゃんが言う。
「ダメよトルムル、拒否しても。
旅で埃まみれになったんだから、体をキレイにしないと」
イヤ……。
そう言う意味でなくて……。
「とーたん。
バブゥー」
父ちゃんが、会話を聞いていたみたいで振り向いて言う。
「他の国に行っている、お姉さん達と会える機会はなかなかないよトルムル。
お父さんのことは心配しなくても、一人でユックリと温泉に入るから大丈夫だ」
あのう……。
意味が違うんですけれど……。
ど、どうしよう。
誰も理解してくれない。
アトラ姉ちゃんを見ると、大きなオッパイを天に向けて……?
俺の近くに来て言う。
「父さんは毎日トルムルの世話をしていたんだ。
だ・か・ら。ここにいる間だけでも毎夜温泉に私達が連れて行くからね。
逃げてもダメだよ!」
こ、怖!!
ま、マジですか?
毎晩……?
それもアトラ姉ちゃんと?
だんだんと手が震え出してきた。
新生児の時に受けた恐怖が、再び俺の脳裏をよぎっている!
藁をもつかむ思いで王妃様を見る。
王妃様はにこやかな笑顔で言う。
「トルムルちゃん。
みんなの言う通りですよ。
私とヒミン、そしてウールも一緒に入りましょう。
ここの温泉は、肌のツヤによきく成分が含まれていると言われています。
トルムルちゃんの肌が、ますますキレイになりますからね」
王妃様やヒミン王女までも一緒に……。
さらに悪い結果を招いている。
「トームル。おー、せー、んー」
ウール王女は喜んで俺を見ている。
の、望みはヒミン王女だけだ!
俺に……、忠誠を誓うと以前言っていた。
恐る恐るヒミン王女を見る俺。
ヒミン王女は目を細めている。
俺に言った言葉を思い出したんだ。
これでなんとかなりそうだね。
少し安心する俺。
でも……。すぐに答えないで考えている。
も、もしかして……。
「今回は皆さんの言うことが正解です。
最終的には、私の良心に沿って行動します。
間違った行動だけはしたくありませんから」
ウッソォーーーーーーーーー!
俺の判断が間違っているって!!
マ、マジで言っているの?
誰も俺の意見に賛同してくれない。
ヴァール姉ちゃんが不思議そうに俺を見ている。
今までの会話を、トルムルは理解しているのかと。
でも……?
ど、どうしよう……?
……?
……?
◇
さらに、最悪な事態が俺を待ち受けていた。
「こちらの部屋で御座います」
執事に案内された俺たち。
部屋は大きくて、ベッドが7つ置いてあった。
「ヴァール様のお父様は、こちらの部屋になります」
父ちゃんだけ執事に付いて行くので、両手を広げて俺も行く動作をして言う。
「とーたん。
バブゥー」
父ちゃんは振り向くと、笑顔で言う。
「トルムルは、お姉さん達と同じ部屋だよ。
ヴァールの希望で、姉弟と久し振りに同じ部屋に泊まって、夜通しおしゃべりをしたいそうだ」
え〜〜〜〜、
温泉に加えて、部屋まで姉ちゃん達と同じなの?
姉ちゃん達、部屋で着替えるんだよね。
男の俺がいてもいいの……?
父ちゃんと姉ちゃん達は、俺を男として認識していないみたい。
赤ちゃんだからか……?
ハ、ハッキリ言って、姉達の胸を見たくはありません!
新生児の時に味わったオッパイ恐怖が……。
これから俺、どうなるんだろう……?
部屋にヨチヨチ歩きで入ると、他の国に住んでいる懐かしい3人の姉ちゃん達がいた。
「「「トルムル、カワイィィィィ〜〜〜〜!」」」
そう言った姉ちゃん達は、俺を抱いてくれる。
懐かしさと、ちょっとだけオッパイ恐怖を感じながら。
「トルムル、ムチムチしていて、まえに会った時と全然違うわ」
「見て、トルムルの肌のキメの細かさ。
私にも分けて欲しいわ」
「あ〜〜、乳歯が生えかけている。
なんてカワイイ歯なのかしら」
3人の姉ちゃん達は、俺の体をあちこち触って感想を言っている。
あのう……、俺、人形ではないんですけれど……。
やっと床に下ろしてもらって、オシャブリを吸う。
精神安定にはこれが1番だよね。
久しぶりに姉ちゃん達に会ったので挨拶をする。
えーと、名前は確か……。
「ヴァーねーたん。シーねーたん。ディーねーたん。イーねーたん、バブゥー」
俺がそう言うと、姉ちゃん達は一瞬固まった。
「トルムル……。もしかして、私達の名前を言ったの?
まだ、8ヶ月だよね?」
「バブゥー」
そう言って、いつものように右手を上げる。
3人の姉ちゃん達はさらに驚いている。
「えーと。トルムルは私の言っていることが分かるの?」
もちろん分かるよ。
でも、口ではそれを言いにくい。
仕方がないので、いつもの言葉を言う。
「とう」
あ……、4人の姉ちゃん達が今度は完全に固まった。
ヴァール姉ちゃんは首を少し斜めにしている。
近くにいたエイル姉ちゃんが言う。
「トルムルと一緒に数日過ごすので、お姉さん達にも秘密を言わないとね」
ヴァール姉ちゃんの大きな目が、さらに大きくなっていく。
何か、心当たりがあるみたい。
「これは噂で聞いたのだけれど。
突然現れた謎のハゲワシが、一回の魔法でミノタウルスを魔石に変えていったと。
そして昨日。またハゲワシが現れて山賊を退治したって聞いた。
まさかトルムルなの?
お母さんの葬式の時に見せた圧倒的なトルムルの魔法を見て、もしかと思ったんだけれど?」
ヴァール姉ちゃんって、凄い感しているよね。
正解も大正解。
「ヴァール姉さんの言う通りなの。
トルムルがハゲワシになって、ミノタウルスを魔石に変えていったんだ。
昨日は山賊退治で活躍したし」
姉ちゃん達は、両手で口を押さえて目を大きく開けていく。
あれ、どっかで見た驚き方。
姉妹って、クセが似るんだね。
「あ、そうだ。
トルムルから、お姉さん達にお土産があるんだ」
そう言ってエイル姉ちゃんは、カバンの中から紙の折り鶴と、ゴブリンの魔石を取り出す。
魔石に、折り鶴に魔法を送り込むように合図を送る。
折り鶴は消えて、本物そっくりの小さなツルが現れて飛び立った。
ツルはゴブリンの魔石の上をゆっくりと飛んでいる。
「これは、トルムルが全て考えて作った物。
お店の人気商品で、町では知らない人がいないくらい」
ヴァール姉ちゃんが、右手を出した。
何か言うみたい。
「エイル、ちょっと待ってよ!
トルムルがこれを考えて、そして魔石にスキルを付与したって事なの?」
「私も最初驚いたけれど、間違いなくトルムルが全て一人で作った。
これを検査魔法で調べてくれると、もっと驚くわ」
そう言いって、エイル姉ちゃんはゴブリンの魔石をヴァール姉ちゃんに渡す。
ヴァール姉ちゃんはすぐに検査魔法で魔石を調べた。
「嘘よ!
信じられない。
初級魔法しか付与できないゴブリンの魔石に、中級の魔法が付与されているわ!
本当に、これもトルムルが考え出したの?」
エイル姉ちゃんは俺を見て笑顔で言う。
「トルムルが考案した新しい付与のやり方。
この方法で、お父さんの商売が繁盛している。
それに、大量のゴブリンの魔石とミノタウルスの魔石は、全てトルムルが魔石に変えたの。
元手がかかっていないので、安く売っても全て利益になる。
常識では考えられない事を、トルムルが次から次へとやるのはお母さんのおかげ」
「お母さんの……?
どうしてお母さんが関係しているの?」
ヴァール姉ちゃんは不思議そうに言う。
「母さんがトルムルに胎内教育をしたの。
トルムルがまだお母さんのお腹にいる時に、あらゆる知識を教えていたわ。
『無駄よ母さん、トルムルは理解できないわよ』
何度も私はお母さんにそう言ったわ。
母さんのやっていることを、私は否定した。
母さんは、自分が死ぬかもしれないと思って、全力でトルムルにいろいろなことを教えていたわ。
まるで、トルムルが生まれたら自分が死んでしまうので、今教えなければいけないと必死で」
エイル姉ちゃんは涙を流し始めた。
「お母さんの胎内教育を手伝えばよかった。
今でも、それが心残り。
ごめんね、母さん」
エイル姉ちゃんは、涙を流しながら俺に言う。
「トルムルもごめんね。
理解のない姉さんだったわ」
ヴァール姉ちゃん達も涙を流している。
あれ、みんなの顔がよく見えない……?
もしかして、俺も泣いている……?
扉を叩く音がした。
近くにいたアトラ姉ちゃんが言う。
「はい、どうぞ」
執事が入って来て言う。
「温泉に入れる準備ができましたので、ご案内いたします」
エイル姉ちゃんは、涙を拭いて俺に言う。
「これからは、理解のある姉さんになるからね、トルムル。
そういうことで、温泉に行こうか?」
「ブー」
俺は最後の抵抗を試みた。
断固拒否!!
「トルムルが拒否しても、しなければならない時はさせなくてはね。
それが理解ある姉さんだと思うわ」
なんで、その思考になるの?
り、理解してないよ、エイル姉ちゃん!
完全に、誤解している〜〜〜〜〜〜!!
そのあと、強制的に温泉に連れて行かれる俺。
最後の手段で、寝たふりをする。
「トルムル、寝ちゃった」
「旅の疲れで寝たんだ。
このまま温泉に連れていけばいいよ」
もう、抵抗できない……。
姉ちゃん達が、裸で俺を抱いて温泉に入っているのが分かる。
そして、交代で俺を抱く姉ちゃん達。
肌の感覚で、姉ちゃん達のどこに当たっているのかが分かる……。
また、何か当たったよ〜〜〜〜〜〜!!
オッパイ恐怖症が!
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おいおい、もっと頑張れ〜〜〜!
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