自由落下
アトラ姉ちゃんの近くにいた山賊達は、大けがを負って横たわっていた。
残りの山賊たちは、クモの子を散らすように逃げている。
あれだけの破壊力を目の前で見せられたら、誰だって逃げちゃうよね。
アトラ姉ちゃん、エイル姉ちゃん、そしてヒミン王女の3人は、逃げ惑う山賊達を追っている。
でも、3人しかいないから、このままだと逃げおおせる山賊がでるよ〜〜!
バルボを降ろして、俺も参戦しないとな。
王妃様を見ると、ラーズスヴィーズルの手首を縛ってある縄をほどいている。
それにはきっと、魔法が発動できない魔石が付与されている。
ちょうどいいよね。
それをバルボの手首につければ彼の魔法が使えなくなる。
バルボはすでに戦意はないのだけれど、もしものためにしないとな。
俺は王妃様の近くにバルボを降ろした。
王妃様は、上空から人が降ってきたので少しだけ驚いている。
しかし、上空にいるハゲワシの俺の勇姿……、を見ると手を振ってくれた。
王妃様は俺の思っていた考えを、すぐにラーズスヴィーズルに指示している。
さすが国を治めるだけあって、機転が早いです。
それに、馬車の馬の一頭を護衛の1人が馬車から自由にしている。
馬を自由にすると、その馬にまたがって元来た道を猛スピードで駆けていく。
応援を呼ぶために馬を走らせているんだ。
段取りがいいよね。きっと、昼に休憩していた国境警備の人達を応援に呼ぶためだ。
バルボをもう一度見ると、彼は完全に戦意をなくしているのでこれでよしと。
あとは、逃げ惑う山賊達だな。
俺の近くに山賊に来てもらうと、恐怖におちいるみたい。
今後のためには、彼らに恐怖を味合わせないとな。
もう二度と、山賊はしたくありませんと彼らに思わせないと。
これも、大賢者になるための一歩かな……?
手始めに、1番遠くに逃げている山賊に、重力魔法でここに移動させた。
「お、お、お、願いだから。は、は、ハゲワシさん。く、食わないでくれ」
そう言う山賊は、震えながら俺に訴えている。
顔面が蒼白になっていき、今にも気絶しそうだ。
このぐらいでいいかな?
これだけ恐怖を植え付ければ、二度と山賊はしないだろうか?
ねんのため、山賊を無重力落下させる。
「ギャアァァァーーーーーーーーー!」
ワォーーー、すごい悲鳴!
彼を、地面すれすれで止めた。
下では、待っていましたとばかりに、ラーズスヴィーズルらが彼を捕まえた。
あ……、山賊が気絶して……、口から泡が出ている。
少し、やりすぎた……?
でも、今まで旅人に同じように恐怖を植え付けていたので、これぐらいは体験してもらわないとな。
だって、小さな子供や俺みたいな赤ちゃんまで、奴隷として売り飛ばしてきたんだから。
次の山賊も同じようにここに来てもらった。
「お、俺を殺さ、さ、さないでくれ!」
さっきと同じように怯えている。
今度の山賊はオシッコを漏らした。
あ……? オシッコがラーズスヴィーズルの方に降っていく……。
ご、ごめんね、ラーズスヴィーズル……。
気を取り直して、同じように無重力で降ろした。
「助けてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
これまた凄い悲鳴。
湖の島では、拉致された人達がこれを見て喜んでいる。
もうこれに懲りて、山賊に戻りたいとは思わないだろうし。
これだけ恐怖を植え付ければいいよね?
このあとも、同じように自由落下を山賊に味わってもらった。
山賊が終わったので、湖の島にいる人達を移動させる。
この人達は、空中移動を楽しんでいるようで、満面の笑みを浮かべている。
子供の中には、俺に手を振ってくれた子もいた。
とっても嬉しい。助けた人達に感謝されるのって。
全ての人達の移動が終わったので、俺は誰も見ていない建物の陰に舞い降りた。
そして、元の赤ちゃんの姿に戻る。
ヨチヨチ歩いて王妃様のところに行った。
近くにラーズスヴィーズルがいたので、お疲れ様と王妃様は目で合図を送った。
アトラ姉ちゃん達も返って来た。
3人とも、あれだけ走っていたのに、息が上がっていない。
さすがだね。
エイル姉ちゃんが怒っていて、アトラ姉ちゃんに文句を言う。
「アトラ姉さん、全力を出しすぎよ!
もしかしたら、山賊を殺していたかもしれないのよ!」
「旅人を襲っていたこいつらに対して、無性に腹がたってきてね。
ついね……」
「お姉さん!!
悪人といえども、私達が殺していいはずないでしょう?」
王妃様がエイル姉ちゃんに言う。
「エイルの言いたいことはわかります。
法によって悪人を裁かないと、この世界は無法とかしますからね。
でも、アトラさんの行動も分かるのです。
無実の旅人を拉致して奴隷として売っていたのですから。
もうすぐ、国境警備の人達が来ますから、あとは彼らに任せましょう。
彼らは、法の下によって裁かれます。
山賊は、30年間の重労働がほとんでですが……」
マジ!
ま、考えてみればそうだよね。
多くの幸せな人達の人生を狂わしたんだから。
法律も、ある程度知っておかないと大賢者にはなれないよな。
「あのう、助けて頂いてありがとうございます。
失礼ですけれども、貴女様はエル・フィロソファー国の王妃様ですか?
昔、建国記念日に遠くから拝見したのですが?」
王妃様はにこやかに微笑んで言う。
「助かって良かったですね。
おっしゃる通り、私はエル・フィロソフィー国の王妃アンゲイアーです」
「やはりそうでしたか。
ハゲワシさんに私達は助けられたのですが、何方がハゲワシさんになられたのでしょうか?
お礼を言いたのですが?」
王妃様は近くにいた俺を抱き上げ、その大きな柔らかな胸で抱いてくれた。
突然でビックリする俺。
「残念ながら、彼はすでにここには居ないのです。
いずれ彼に会える日が来ると思いますよ」
「失礼ですけれども、その方のお名前は?」
「今は訳があって言えないのです。
近い将来、誰もが名前を知る事になるでしょう」
「そうですか。将来が楽しみなってきました。
その方に、宜しくお伝えください。
私達を絶望から救って下さってありがとうございました、と」
「彼に会ったらそう伝えます。
彼も、それを聞いたら喜ぶでしょう」
ウンウン、ここで聞いている。
本当に、助かって良かったよね。
ヒミン王女が何かを発見したみたいで、湖を指差して言う。
王女の視力は俺と同じで視力が格段に上がっている。
「湖の真ん中で、人が流木につかまっています!
このままだと溺れますよ」
そう言って、ヒミン王女は俺を見た。
あ〜〜〜〜〜〜!
わ、忘れてた〜〜〜〜!!
でも、生きててくれてよかった〜〜。
ヒミン王女の忘れていましたよねって目付き、キツゥーーーーーー!!




