窓から失礼します。
山賊が出た場合の細かな指示を、王妃様が説明をする。
どうやら、山賊退治は王妃様の懸案事項で、いい機会なので退治したいみたい。
特に、上官殺しのバルボ率いる山賊を殲滅したいと王妃様は言う。
バルボは魔法が得意で、重力魔法だけなら賢者に匹敵する魔力の持ち主みたい。
王妃様が話す時、俺をチラッと見ていた。
もし俺より強かったらと、少し心配している感じ。
んーと。
戦って見ないとわからないよな。
重力魔法以外は得意ではなさそうなので、そちらで戦うか?
もしものために、あるていど作戦を立てないとな……。
昼食が終わって馬車に再び乗り込む。
今度は馬車酔いを抑えるために前の窓に立った。
俺は背が低いので……、赤ちゃんなので、席に立つと窓から前の景色が見える。
少しだけ窓を開けさせてもらって、常に新鮮な空気を吸う。
あ〜〜、気待ちがいい。
遠くの景色を見ていると、さほど吐き気もしない。
俺の可愛い……?
お尻をみんなに向けているけれど、誰も文句が出ないので良し、としよう。
ん?
これから通る遠くの街道で、人の動きがある。
30人ぐらいの人達が、武器を持って街道を見張っている。
魔法で視力を上げてしまったので、ハッキリと見える。
山賊だ!!
俺はみんなの方を振り向いて大きな声で言う。
「さー、ぞー、くー!」
うーーーーー。山賊と言えない俺。
そして、前方を指さした。
長年一緒に住んでいるエイル姉ちゃんが、すぐに分かってくれた。
「トルムルは山賊が前方に居る、と言っているの?」
「とー」
王妃様が落ち着いた口調で言う。
「思っていたよりも早く現れましたね。
トルムルちゃんには、特別なお願いがあるのです。
誘拐された人達を救出して欲しいのです。
アジトに私達が行った時、その人達を盾にされたら満足に戦えませんから。
お願いできますでしょうか?」
え……?
俺に、特別任務?
しかも、拉致された人の救出?
俺、まだ赤ちゃんなんだけれど……。
でも……、大賢者を目指すのなら、や、やらないとな。
「バブゥー」
俺はそう言って、いつものように右手を上げた。
念のために、俺もすでに皮の防具を着けている。
俺は、後ろの窓から飛んだ。
従者の人達は前に全員座っている。
俺が後ろの窓から飛んで行っても、誰も気が付かなかった。
すぐに俺は猛禽類となって……?
ハゲワシとなって空高く舞い上がる。
いい景色〜〜。
少し風が冷たいけれど、気分は最高!
でも……、いつになったらカッコイイ猛禽類になれるんだろうか?
毎回ハゲワシでは、カッコ悪いよな。
頭の毛の薄さが解消しない限り、ハゲワシに変身するしかないのは分かっているんだけれど……。
オット。
頭の毛は後回しにして、山賊達の方に行かないとな。
俺は、ハゲワシのように、優雅に……?
山賊達の方に行く
山賊達は総数で33名いる。
俺はこの情報をすぐに馬車に伝えた。
命力絆で、アトラ姉ちゃん、エイル姉ちゃん、ヒミン王女、ウール王女達に、遠く離れていても伝わる。
でも、口で言わないと伝わらないので、少しだけ苦労する。
『さー、ぞー、くー。
しゃん、しゃん』
うーーー。さんじゅうさん、と言えない……。
『山賊、しゃんしゃん?
山賊が光っているの、トルムル?』
エイル姉ちゃんがそう聞いてきた。
違うーーーーー!
『ぶー。
ミッチュ、ミッチュ』
『ミッチュ?
山賊が3人居るのね』
エイル姉ちゃんが再び言ったけれど、数が違う!
『ぶー。
ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ、ミッチュ!』
これで、どうだ〜〜〜〜〜〜!
この世界では、掛け算の概念が無いので言ってみたけれど……。
『3が11回。
すると、盗賊は33名になりますね』
ヒミン王女が、すぐに正解を出してくれた。
さすが、学園でもトップを争っているだけあります。
『ヒーねーたん。
バブゥー』
『分かりました。
トルムル様、情報ありがとうございます』
ふーーー。
やっと伝わった。
以前よりは話せるようになったけれど……。
大賢者への道は長〜〜〜〜〜〜いよね。
あとは、山賊のアジトを探さなければならないんだけれど……。
まわりの景色を見渡すと、山の峰に古い出城跡がある。
あ、人がいる。
きっとあそこだ。
ハゲワシが獲物を探すように近づく。
旋回を繰り返して出城の情報を得る。
見張りは、塔の上に2人いる。
横からだと分かりにくいけれど、上から見ているので丸見えだ。
最初に、この2人をなんとかしないといけないよな。
大きくて綺麗な湖が近くにあるので、とりあえずそこに移動してもらいましょうかね。
俺は重力魔法を使って、見張りの二人に最速でここに来るようにした。
2人が俺の近くに来ると、全身で恐怖を表している。
1人はオシッコを漏らした。
そんなに怖いのかな、こんなに気持ちがいい場所なのに?
「ハ、ハ、ハゲワシさん。た、た、た、頼むから食わないでくれ!」
1人が悲痛な叫び声をあげた。
えーと……。
食べるために、ここに来てもらったわけでないんだけれど……?
下の人に見つかるといけないので、湖のど真ん中に2人を移動させた。
あれ?
2人とも溺れてる?
たとえ悪人でも、殺すのが目的でないよな。
仕方ないので、流木を2人の近くに落とした。
2人は必死の思いで流木までたどり着く。
水が冷たいのか、2人が震えだした。
えーと、……。
今日中に、……助ければいいかな?
俺は出城に降下して、建物の周りをユックリと回った。
小さな窓から人の声が聞こえる。
窓は小さかったけれど、赤ちゃんの俺には十分すぎるほど。
ハゲワシのように優雅に飛行して、声のしていた窓にとまる。
「ハ、ハゲワシが、窓に居る!」
中の人が叫んだ。
えーと、なんで驚くんだろうか?
中を見ると、22名の老若男女が俺を見ている。
大人達は手首を縛られて、何かの魔法を感じる。
たぶん、魔法を使わせない魔法?
そう言えば、母ちゃんが言っていたよな。
『魔法を発動させない魔法もあるのよトルムル。気を付けるのですよ』
か、母ちゃん……。
もし、そうなった時の対処方法を教えてもらっていないよ〜〜!
その時になったら、自分で考えなさいってことかな?
それとも、母ちゃんの言い忘れ……?
えーと。それよりも、この人達のことを考えないとな。
この部屋の出口は、頑丈そうな扉と小さな窓のここだけ。
22名の人達を、どうやって救出したらいいんだろうか?
ブックマーク、評価、誤字脱字報告、本当にありがとうございます。
ブックマーク、評価まだの方で、
面白いよ〜
おいおい、もっと頑張れ〜〜〜!
更新待っているぜ。
と、少しでも思ってくれましたら、ブックマーク、評価をお願いします。
パワーを下さい。宜しくお願いしま〜す。




