アトラ姉ちゃんの決意
町で大騒ぎになっていると、翌日常連のおばさんが店に来て教えてくれる。
「ミノタウルスが大挙して攻めてくるなんて、この国始まって以来らしいですわよ。
それでも私達は勝ちましたのよ。
なんと言っても、ミノタウルスに勝ったのは謎のハゲワシの出現でしょうか。
目の前で見た人達の話によれば、圧倒的な火力で瞬時に魔石に変えていったとか。
私の推測では〜〜〜〜」
このあと、ハゲワシになりそうな候補者の名前を言って、その人の能力を説明をしていた。
俺は、常連のおばさんの話よりもアトラ姉ちゃんが気になっている。
アトラ姉ちゃんの心を俺は読める。
だけれど、土足で姉ちゃんの心の中に入っていくのは好きではない。
緊急時以外はしないと決めている。
そうしないと、大賢者にはなれない気がしているからだ。
あ……、またアトラ姉ちゃんが窓の外を見た。
その方角は、前にいた国だ。
もしかして、本当に美人のアトラ姉ちゃんに彼氏がいたのかもしれない。
頻繁に窓の外を見ている。
「〜〜なのよね。
それで、これは噂なんですけれど、ミノタウルスの防具を砕いたのは伝説の魔剣、超音波破壊剣なんですって。
信じられますか?
あの、失われた伝説の魔剣ですよ。
私は信じられませんね!
なぜなら、魔剣に付与するスキルが判らないみたいですからね」
もうすでに、魔剣の話が町で噂されているのには驚いた。
翌日なのに、町中の人が知っている。
「そういえば、アトラさんの活躍を町の人達が言っていましたよ。
学園の建物内にいたミノタウルスを、次から次へと一撃で倒していったと。
アトラさん、それ本当ですの?」
常連のおばさんは、真偽を確かめたくてアトラ姉ちゃんに質問をした。
けれどアトラ姉ちゃんは、突然自分の名前が出たので少しビックリをする。
そして、話を聞いていなかったみたいで、おばさんに何の話なのかを聞き返した。
「ええ、まあ……。本当のことです。
母さんに、小さい時から鍛えられましたから」
アトラ姉ちゃんは無愛想にそう言う。
常連さんは、アトラ姉ちゃんの対応に少し機嫌を損ねたみたいだ。
こ、ここは俺の出番だよな。
アトラ姉ちゃんが何かを悩んでいるので、常連さんのご機嫌取りは俺がしないとな。
常連さんの方を俺は向いて、思いっきり笑いながら両手を出す。
「バブゥブゥーーー」
抱いて下さいと言う動作をした。
すると、常連さんは俺に近付いて来て抱いてくれる。
「やっぱりトルムルちゃんは私が好きなのね。
こんなに喜んでいるわ」
そのあと常連さんは、お孫さんのためにパンティを2枚も買っていってくれた。
なんだ〜〜、お孫さんのために買っていたのか〜〜。
俺はてっきりおばさんが履くために、妖精の動くパンティを買っていたのかと思ったよ。
アトラ姉ちゃんは常連さんが帰ると、心痛な面持ちで父ちゃんの方を向いて言う。
「父さん、そしてトルムル。
聞いてもらいたい大事な話があるんだ」
父ちゃんはミノタウルスの魔石から手を離す。
付与師として、国から大量のミノタウルスの魔石を無料で配分されたのだ。
これを店で売って、町の人達の武具の攻撃力を上げてほしいと。
でもそれは表向きで、俺がほとんどミノタウルスを魔石に変えた。
当然の権利として、俺が受け取るようにと王妃様から言われていた。
おっと、この話よりもアトラ姉ちゃんの話の方が重要だよな。
「実は、王子から別れ際にこう言われたんだ。
『アトラさんの怪我が治ったら是非戻って来てほしい。
私のわがままかもしれないけれど。
どうやら私は、貴女のことを好きになったみたいだ。
このまま貴女に会えないのであれば、私が王子の権利を捨ててもいいと思っている。
令嬢方の貴女に対する仕打ちは、家臣の良識ある人から全て聞いた。
私の地位しか興味のない令嬢方には、はっきり言って私はうんざりしている。
貴女は優しくて、私に対して自然に接してくれた。
今までそのように接してくれた女性は誰一人居なかった。
少しだけ粗野なところがあるけれど、返って私には新鮮に映っていた。
魔法剣士として、今まで修行をして来たためだと私は理解をしている。
別れ際に、このような話をして大変申し訳ないと思っている。
どうか私を王子としてではなく、1人の男として見てほしい
国元に帰ったらこのことを考えて、貴女の気持ちを私に教えて欲しい』
王子は国境まで来て、私を見送ってくれたんだ。
父さん、私……。
もう一度彼の居る国に行きたい。
そして、私の気持ちを正直に打ち明けたいんだ。
私も貴方のことが好きですと」
ほ、本当に〜〜〜〜〜〜!
王子様と相思相愛!
ワァオーーーーーー!
そ、それって、アトラ姉ちゃんは将来王妃様になるってことだよね。
でも、令嬢方が居るんだよね。
アトラ姉ちゃんを罠にはめた……。
姉ちゃんが戻ると、一波乱ありそう……。
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