大賢者の置き土産
王妃様が近寄って来た。
「ウール。お部屋で待っているようにと言ったはずですよ。
どうしてこの様な騒ぎを起こしたのです」
威厳ある王妃様の声は、体が固まってしまって何も言えなくなる。
し、しかし……。
ここで言わないと、ここまで来た努力が無駄になる。
せっかく苦労してここまで来たのに、ウール王女の部屋に戻されるのだけはごめんだ。
ミノタウルスに怪我を負わされて、苦痛を訴えていた人達のことを思う。
だんだんと勇気が湧いて来た。
俺はウール王女自信を指さして言う。
「ト、トームル!」
自分の名前を言っただけなのに、こんなに疲れたことはなかったよ。
言い終わると、王妃様が何かを考え始めたのが分かる。
そして、ほんの少し首を傾けて言う。
「もしかして、トルムルちゃんがそこに居るのですか?」
やったー。通じたよ。
「バブゥー」
俺はそう言って右手を上げた。
王妃様はニコッと笑って言う。
「分かりました」
そう言った王妃様は、警護の人達からウール王女のカラダを抱きあげた。
「あなた達は下がってよろしい。
きっとウールは、お腹を空かせてここまで来たのでしょうから。
引き続きウールの部屋の前で警護をお願いします。
部屋の中に誰も入れてはなりません」
2人は、誰も居ない部屋の警護を言い渡されて不思議がっている。
王妃様に了解の返事をすると戻って行った。
「トルムルちゃんがここに居ると言うことは、ミノタウルスを撃退したのですね?」
最後まで確認できてはいない。
けれど、アトラ姉ちゃんのあの強さなら、雑魚のミノタウルスなど問題なく撃退できているはず。
「とー」
王妃様が微笑んでいる。
「報告によれば、群で襲って来たミノタウルス達。
どこからか現れた謎のハゲワシが、火炎魔法でミノタウルスを魔石に変えていったと聞いています。
もしかして、ハゲワシはトルムルちゃんなのですか?」
王妃様に嘘を言ってもいずれは分かってしまう。
正直に俺は言う。
「とー」
王妃様はますます笑顔になっていく。
「やはり、ハゲワシはトルムルちゃんですか。
多くのミノタウルスを魔石に変えていったので、トルムルちゃんの魔法がなくなった。
そこで、ウールのカラダの魔法を使って、城に来ている負傷者達の治療に来てくれたのですか?」
さすが王妃様。
国を治めているだけあって、読みが正確だ。
「とー」
「やはりそうでしたか。
治療を開始してもらう為に、先にトルムルちゃんに見てもらいたい物があるのです」
そう言うと王妃様は、ウール王女を抱いたまま上の階に上がって行く。
えーと……。よく分からない。
何を俺に見せたいのだろうか?
そこは、今までに来たことのない豪華な部屋で、ベッドが2つ並んでいた。
たぶん、王妃様の部屋だと思う。
さらに部屋の奥に進むと、いくつものドアがあった。
その中の1つのドアの前に立つと、王妃様は魔法の鍵を使う。
この中に見せたい物があるのと思うと、俺はドキドキしてきた。
王妃様が大切に保管している物を見せてくれるのだ!
でも、何だろう?
中に入って行くとカビ臭い匂いと、箱の中から魔法力を貯めている……?
まるで、家にあるダイアモンドと同じ感じ……?
いや!
それ以上の魔法力を感じる。
これほどの魔法力を貯めている物は一体……?
俺はその箱から目が離せなかった。
「その箱の中にある物を見せたかったのです」
そう言うと王妃様は箱に近寄って行き、再び魔法の鍵を使って開ける。
柔らかなクッションの上にある物は、家のダイアモンドと同じ物だ!
いや待てよ……、少し違うかな?
「これは、大賢者様が使っていたピンクダイアモンドです。
普通のダイアモンドよりも、さらに多くの魔法力を貯めて置くことができるのです。
我が王家に伝わる家宝で、持ち出し厳禁の非常に貴重なものです」
お、お、お、王家の家宝……。
何で……?
何でそんなに大事な物を俺に見せるの……?
俺、まだ赤ちゃんなんだよ!
それに、はるか昔に大賢者が使っていたピンクダイアモンドがあるのが凄い!
「この中には、私では分からないくらいの多くの魔法力が貯まっています。
大賢者様が、直接このピンクダイアモンドに魔法を貯めて下さいました。
今回、多くの国民がミノタウルスによってケガをしました。
治療師が治療をしているのですが、あまりにもケガ人が多い為に苦慮している所なのです。
トルムルちゃんが来てくれたのは、まさに天の采配だと私は思うのです。
このピンクダイアモンドを使って、多くのケガ人の治療を頼めるでしょうか?」
俺は、あらゆる意味で驚いて、カラダが固まってしまった。
まさか、伝説の大賢者が貯めていた魔法力を使っていいとは!
家宝にまでなっている、王家の大事な大賢者のピンクダイアモンドだよ!
それだけ、国民のことを王妃様が思っているってことか……。
それに、そこまで俺を信用してくれていたのかと思うと、驚きと共に期待に応えなければと思う。
さらに、このピンクダイアモンドには、一体どれだけの魔法力が貯めてあるんだ?
まるっきり見当がつかない。
俺にはもう後戻りはできない!
突然、武者震いが起きた。
「バブゥー」
俺はそう言って右手を上げた。
「ありがとうトルムルちゃん。
それでは宜しくお願いします」
そう言って、王妃様は軽く頭を下げた。
そして、ピンクダイアモンドを布で包んで胸の中に入れた。
王妃様がウール王女を抱いているので、目の前にピンクダイアモンドがある。
再び俺は、武者震いが起きていた。
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