攻防
ミノタウルスが学園に迫っているのに、有効な対策が立てられない。
4回しか最大魔法を使えないので、広範囲に広がっているミノタウルスに全て当たらない。
もはや考えている暇はない!
もうすぐ、ミノタウルスの前衛がアトラ姉ちゃん達と接触する。
あ……。アトラ姉ちゃんが剣を抜いて何かを始めようとしている。
そうか、伝説の魔剣、超音波破壊剣を使おうとしている。
今使わないとダメなのを、アトラ姉ちゃんは知っているんだ。
防御の高いミノタウルス戦では、最初に防具を破壊しないと不利になる。
バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!
凄い!
ここまで防具の音が壊れる音が聞こえる。
ミノタウルスも深手を負っているのが分かる。
よし! 俺も早速しないとな。
いつものようにオシャブリを吸って精神統一する。
手の中に、最大超音波魔法のイメージを開始する。
イメージが完了した。
いくぞ〜〜〜〜〜〜!!
耳をつんざく音と共に、目に見えない最大超音波魔法がミノタウルスを襲う。
バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!
どうだ?
よし。うまく防具を破壊できて、深手を負わせた。
今度は違う範囲に向けようとしたら、ミノタウルスの群れの中から大声で叫んでいるのがいる。
「ギガコウモリを倒した奴出てこ〜い!
俺はギガコウモリの義兄弟で、弟の仇を取りに来た〜〜!
早く出てこないと、町を殲滅してやるぞ〜〜!」
えーと……。
ミノタウルス達は俺が目当てなの?
どうしよう?
下に降りて行って、バブゥーと言っても通じないだろうし。
と、とにかく、ミノタウルスをやっつけるしかないよね。
さっき言ったミノタウルスを中心にして、最大超音波魔法を発動する。
バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!
さっきと同じように防具が壊れる音がしてくる。
ギガコウモリの義兄弟と名乗るミノタウルスも、防具を破壊されて狼狽している。
どこから攻撃されたか分からなかったみたい。
周りを見回している。
残りのミノタウルスも同じように最大超音波魔法を発動して、防具を破壊した。
これで、ほとんどのミノタウルスの防具が破壊できた。
しかし、深手を負っているとはいえ、ミノタウルスは戦意を失ってはいないのがここからでも分かる。
町の方を見ると、大騒ぎになっている。
子供達を迎えに来ている親御さんらしき姿が大勢見える。
それに加えて、武装した人達も学園へと向かっているのが確認できた。
城からも、大勢の武装した人達が学園へと向かっている。
見慣れた姿があって、思わず微笑んでしまった。
ラーズスヴィーズルだ!
武具をつけながら城から学園に走っている。
慌てて駆けつけようとしているのが分かる。
俺は魔法がほとんど空だけれど、家に帰ればダイアモンドに入っている魔法を利用できる。
しかし、このまま降りれば誰かに見つかるのは間違いない。
飛んでいる姿を見せてはいけないよと、父ちゃんに念を押されている。
王妃様からも、ウール王女と俺に同じことを言った。
2人の身の安全を守るためには必要だと、王族独特な威圧感で言われている。
ウール王女と俺を守るためには必要だと分かるんだけれど……。
もう俺には、やれることがないのか?
下では戦いが始まっている。
アトラ姉ちゃんを見ると、最前線で戦っている。
ここから見る限りでは善戦していて、ミノタウルス相手に力負けしていない。
やはり凄いパワーだ!
近くではアングルボーサ教授が戦っているのが見える。
アトラ姉ちゃんと同じように戦っている。
あの妖麗な姿で、どう戦うのか近くで見て……。
あ、いや。そう意味ではなく、今後の参考の為には見たいと思っただけで……。
んー?
弓矢?
ミノタウルスを次から次へと素早く倒している教授がいる。
弓矢にしては、連射を繰り返すのが速すぎて違う気が……?
あ、でも、弓矢だ。
瞬きを1回する短い間に3回も矢を連射している。
凄い!
ミノタウルスの防具がなくなったので、急所を狙えば一発で倒せるとは思う。
けれど、あまりにも早すぎる技は神技といってもいいくらいだ。
オッ!
町からの応援と、城からの応援が到着して参戦し始めた。
数ではミノタウルスが多いけれど、気迫では負けてはいないのが分かる。
教授、町の人達、城の人達が一丸となって戦っている。
しかし、あまりにも数が多いために、最前線が後ろに下がりつつある。
このままでは学園内に入り込まれてしまう。
俺も参戦したいのだけれど、魔法を供給しないと何もできない。
どうする俺……?
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