最大魔法
万年眠亀の進行方向には町がある。
このままだと甚大な被害が出てしまう。
もとはといえば、ウール王女の忠告を無視したからこうなった。
地面の下に万年眠亀がいるのに、俺は分かってあげられなかった。
ウール王女を見ると、俺を可愛い目で見つめ返している。
どうにかしてくれと訴えている目だ!
魔法は残り少ない。
最大魔法を使うと,ほとんど空になる。
やるとしたら、もう一回だけ。
しかし……。
どうする、俺……?
もう一度、オシャブリをユックリと吸う。
ふと、ギガコウモリの被害状況が頭に浮かぶ。
城の城壁が、豆腐みたいに簡単に壊されていたのを。
そうだ、どうして俺は気がつかなかったのだろうか。
超音波で、亀の甲羅を破壊すればなんとかなるかもしれない。
手の中に、慎重にイメージを作り出す。
イメージができたので、俺は最大超音波魔法を発動した。
耳をつんざく音と共に、目に見えない最大超音波魔法が万年眠亀に襲いかかる。
爆音と共に、万年眠亀の甲羅が無数に割れて地面に落ちていく。
どうだ……。
今度こそやったか?
よく見ると、全ての甲羅を破壊できなかった。
まだ生きている!
万年眠亀は苦しみもがいてはいるけれど、致命傷にはなっていない。
俺にはもはや、魔法がほとんど残っていない。
マズイ!
父ちゃん達の方に向かい出した。
父ちゃん達が攻撃したと思っている。
どうしたらいい、俺……?
ウール王女を見ると、今にも泣きそうな顔だ。
自分ではどうにもできないので、悔しさを全身で表している。
ごめん、ウール王女。
俺も、……どうすることもできない。
オシャブリを口に入れたまま、何もできない俺。
こんなに、情けないことってないよ。
か、悲しい……。
「トームル、トームル!」
ウール王女は悲痛な叫びをあげている。
……?
そうだ!
ウール王女の体内の魔法を使えるかもしれない。
俺の意識をウール王女に飛ばして、彼女の体内にある魔法を使う。
よし、多分できると思う。
もう考えている時間はない。
俺はウール王女に意識を飛ばして、彼女に入った。
そして、再びイメージを開始する。
イメージが出来上がると、すぐに最大超音波魔法を発動した。
万年眠亀に直撃をした。
甲羅の殆どが破壊され、中から現れたのは……。
え……?
なにあれ?
やせ細ったヒョロ長い……。
亀の中身?
そうか、長く眠っていたので、やせ細っていたんだ。
あともう一回、最大超音波魔法を発動するとやっつけられるのに……。
ウール王女にも、魔法はほとんど残ってはいない。
もう、俺にはどうにもできない。
父ちゃん達が反撃をしている。
アトラ姉ちゃんが剣を鞘から抜くのが見える。
利き腕でない方で持っている。
アトラ姉ちゃんが、万年眠亀に攻撃を仕掛けていった。
ここからでも気合が聞こえてくる。
すごい気合だ!
襲ってくる万年眠亀に対して、剣で斬りつけていく。
胴体の下に潜り込んで、深く剣を刺した。
そして、その剣を胴体に沿って刺したまま切っている。
凄いパワーだ!
ハンマーを軽く回していただけあって、豆腐でも切るように見える。
さすがアトラ姉ちゃん!
万年眠亀はもがき苦しみながら突然消えていった。
そこに残っていたのは……、人間の頭ほどの魔石だ!
やった〜〜〜〜〜〜!!
とうとう俺たち、万年眠亀をやっつけたんだ。
今回は、俺1人ではどうにもならなかった。
「トームル。すー、ちぃー」
ウール王女がそう言うと俺に抱きついてきた。
わ、悪い気はしないな。
父ちゃん達が下で呼んでいる。
ウール王女と一緒にユックリと降りていく。
下では、みんなが喜んでいる顔が見える。
父ちゃんが安堵した声で言う。
「一時はどうなるかと思ったよ。
ありがとうトルムル」
「とーたん、バブブブブーーーー」
エイル姉ちゃんが笑顔で言う。
「トルムルお疲れさま。
今回もありがとう」
「エー、ねーたん。バブブブブーーーー」
アトラ姉ちゃんが、興奮しながら言う。
「まさか、トルムルが甲羅を破壊するとは思わなかったよ。
ありがとよ」
「アー、ねーたん。バブブブブーーーー」
ヒミン王女が、尊敬の眼差しで俺を見る。
「さすが、トルムル様です。
歴史上、万年眠亀を倒したのは大賢者様だけでした。
これで、新たな歴史が始まります」
「ヒー、ねーたん。バブブブブーーーー」
俺が言うと、ヒミン王女はその柔らかな大きな胸で抱いてくれた。
歴史よりも、こっちの方が良いと思った俺。
あれ?
オッパイに抱かれても、恐怖心が減っている。
少しだけ、成長したのかな……俺?
後ろから突然、ウール王女が抱きついてきた。
少し、怒っている。
なんで?
どうやらヒミン王女が俺を抱いたからで……。
それが原因……?
ウッソォーーーーーーー!!
も、もしかして、ヤキモチ?
その年で……?
心の成長が、あまりにも早すぎる気がするんだけれど……。
これから俺たち……、どうなるんだろう?




