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機密

 エイル姉ちゃんが、いつものように元気に学園から帰って来た。


「ただいまーー」


「お帰りエイル」


「バブゥー」


「お帰りエイル。久しぶりだね」


「アトラ姉さん! ど、どうしたんですかその腕!

 それに、王子を守る仕事に新たに就任したと、姉さんは喜んでいたのに」


「あはは。色々あってね。

 次の仕事が決まるまで、ここで働かせてもらおうと思ってね」


 アトラ姉ちゃんはエイル姉ちゃんを心配させまいとして、さっきの話をしなかった。

 貴族の令嬢方が、アトラ姉ちゃんを罠にはめた話だ。


 妹思いの優しいアトラ姉ちゃん。

 どうにかしてあげたい。


 けれど、何人もの治療師に診てもらってもダメだと言っていた。

 悲しいけれど、俺にはどうにもできない。


「それだったら、また一緒に暮らせるのね。

 今夜は、美味しい晩ご飯をアトラ姉さんのために作るわ」


「ありがとうエイル。

 当分世話になるけれど、よろしく頼むよ。

 私は、どうも料理が苦手なんで」


「まかせて姉さん」


 エイル姉ちゃんは、そのあとすぐに買い物に行く。

 きっと今夜は、アトラ姉ちゃんのために美味しい晩ご飯を時間をかけて作るだろう。


 そういえば……。

 今日はエイル姉ちゃん、あの柔らかな胸で俺を抱いてくれなかった。


 でも、今日だけは許せる。

 だって、久しぶりにアトラ姉ちゃんが帰って来たんだからな。




「アー、ねーたん。こえー」


 出来上がったツルの折り紙をアトラ姉ちゃんに渡す。

 少しでも、元気になって欲しかった。


「ありがと、トルムル。

 手が小さいから、細かな所まで器用に折っているよ」


「そえ。アー、ねーたん、のー」


「これを私にくれるのかい?

 ありがとうな。


 トルムルはお利口さんだね。

 思っていた以上に話しているのでビックリしているよ」


 アトラ姉ちゃんは、ツルの折り紙を目の前に持ってきて見ている。


「アトラ、それには小さな魔石が組み込まれている。

 魔法を少しだけ入れてごらん」


 父ちゃんがそう言うと、アトラ姉ちゃんは不思議そうに見る。


「この紙に?

 何が起こるんだい?」


 アトラ姉ちゃんが魔法をツルの折り紙に入れると、紙が突然消える。

 本物みたいな小さなツルが現れると、姉ちゃんの周りをユックリと飛んでいる。


 アトラ姉ちゃんは不思議なものでも見るように、ツルが飛んでいるのを見ている。

 魔法がなくなりかけると、ツルはアトラ姉ちゃんの前に舞い降りた。


 そして、元の紙のツルへと戻っていった。


「父さん、これは素晴らしアイデアだよ。

 1日中でも見ていたほどだ」


 1日中でも見ていたい?


 もしかして……。

 ゴブリンの魔石を使って、ツルを一日中飛ばせるかもしれない。


 近くにあったゴブリンの魔石を手に取る。

 イメージを開始する前に、いつものようにオシャブリを吸って精神統一。


 開始の合図を魔法で送ると、ツルの折り紙に魔法を供給するようにイメージをする。


 イメージが完成したので、ゴブリンの魔石にスキルを付与した。


 シューーーーー。


 小さな音と共に、無事にスキルがゴブリンの魔石に入った。

 検査の魔法ですぐに確かめてみる。


 大丈夫だ。

 ちゃんと安定して中にスキルが入っている。


 そのゴブリンの魔石を、アトラ姉ちゃんの近くにあったツルの折り紙に近付けた。

 ゴブリンの魔石に、魔法で開始の合図を送る。


 すると、紙のツルは消え、本物そっくりのツルに変わる。

 そして、ゴブリンの魔石の上をゆっくりと回り出した。


「トルムルは、また新しいのを考え出したんだね。

 ゴブリンの魔石が、ツルに魔法を供給しているんだ。


 これだと一日中飛んでいることになるよ。

 アトラがさっき言った言葉から考えついたのかい?」


「とー」


「やっぱりね。

 これはさらに商品価値が高まって、お客さんも喜ぶよ。

 ありがとう、トルムル」


「バブゥー」


 そう言って、いつものように右手を上げる。


 すると、アトラ姉ちゃんが驚いて父ちゃんに言う。


「父さん、ちょっと待ってくれ!

 このずっと飛んでいるツルは、トルムルがさっき考えて魔石に付与したのか?」


「そうなんだよ。

 私も驚いているけれど」


 父ちゃんはそう言ったけれど、さほど驚いてはいない。

 いつものことだよね、という感じで言っていた。


 アトラ姉ちゃんは、父ちゃんのあまり驚いていない態度に困惑している。


「いや……。そうではなくて……。

 なんて……、言っていいのか……。


 トルムルが魔石に付与すること自体信じられないのに……。


 その場で考えて、すぐに実行に移す能力が信じられない!

 しかも、一回で成功している!」


 父ちゃんは少し考えてから言い始めた。


「これからトルムルと一緒に住むのならば、彼の能力を知っておく必要があるね。

 でもこれは、この国の機密に属する。


 アトラ。これから話すことは絶対に口外しないようにしてくれ!」


 まさか、俺に関して国の機密と関連があるとは思わなかったアトラ姉ちゃん。

 驚きの目で俺を見つめる。


 そして、自分の親指をオシャブリのように吸い始めた。


 アトラ姉ちゃん……。

  その年になってもオシャブリ……?


   俺に、恐怖を植え付けたあの姉ちゃんが……?


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