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ヒミン王女のお願い

 ヒミン王女は、続きを真剣な眼差しで俺に話しだした。


命力絆ライフフォースボンドはトルムル様の命を分け与えて魔法を発動するので、大変心苦しいのです。


 ですが、トルムル様は将来、大賢者になる可能性が最も高い人物だと思うのです。

 もし、命力絆ライフフォースボンドの魔法を私に発動して下さるのなら、トルムル様に忠誠を誓います。


 そして、トルムル様の指示に従って、与えられた能力で魔物と戦いたいと思います。

 私の願いを、ご家族と時間をかけて検討して下されば嬉しく思います。


 命力絆ライフフォースボンドの魔法を私に発動する、あるいはしないかの判断をトルムル様の判断にお任せします。


 どうぞ宜しくお願い致します」


 そう言うと、ヒミン王女は深々と俺に頭を下げた。


 ヒミン王女が俺に忠誠を誓う……?


 それって、俺の方が立場が上になるってことだよな。

 俺が、嫌〜〜なことを指示したも、ヒミン王女は拒否できないってことだよ!


 ウール王女のことだけでも考えることがあり過ぎるのに、さらにヒミン王女も加わった。


 どう考えていいのか、全く分からない。

 庶民育ちの俺に言われても……。


 命力絆ライフフォースボンドの影響で、ウール王女の考えが俺に筒抜けになるし……。

 さらに、これからどんな関係が起こるか分からないのに……。


 体が固まってしまって、身動きが取れなくなってしまう俺。


 父ちゃんが助け舟をだしてくれる。


「突然の申し出なので、トルムルが珍しく固まっています。

 それに、親の私としても、どう考えて良いのか分かりません。


 大賢者の本を読んだ後で検討してもよろしいでしょうか?」


「はい。私もそれがいいのではと思っています。

 突然の申し込みで、トルムル様を混乱させたみたいで大変申し訳なく思っています。


 ですが、私の決意を早くお伝えした方がいいと思いました」


 エイル姉ちゃんを横目で見る。

 今までに見たことの無い真剣な表情で、親友のヒミン王女を見ている。


 何を考えているのかが、手に取るように分かる。


 エイル姉ちゃんも……、命力絆ライフフォースボンドを私にと考え始めている。


 み、みんな、気が早過ぎない!

 俺、まだ赤ちゃんなんだけれど。


 ◇


 6人で図書館に移動すると、その部屋はとてもかび臭かった。


 思っている以上に本が多くて、元の世界の本屋さんぐらいある。

 さらに、奥に行くドアがあり、閲覧禁止と書かれている。


 王妃様が魔法の鍵で開ける。

 サビたヒンジの音と共に、中からはさらにカビ臭い匂いがしてくる。


 俺がその部屋に入ると、上の方から呼んでいる感覚に襲われた。

 2階ぐらいある高さの棚には、本がビッシリと並べられている。


「トルムル、どうしたの。

 上の方を見ているけれど」


 エイル姉ちゃんが、聞いてきた。

 でも、理由を聞かれても、俺にも分からなかった。


 ただ漠然と、呼んでいる。

 本……、からか?


 机の上には、5、6冊の本が置かれてあった。

 たぶん、王妃様とヒミンが見つけてくれた大賢者の直筆の本だ。


 その本よりも、上の方から間違いなく俺を呼んでいる方が気になる。


 重力魔法を使って、その方向にユックリと上昇して行く。

 呼んでいる棚に着くと、一冊だけ薄ぼんやりと光っている。


 その本を手で持って下を向くと、ウール王女の心の声が聞こえてくる。


『トームル!』


 ウール王女に意識を向ける。

 鳥のように飛んでいるトルムルの所に行きたいと、ウール王女は考えている。


「トームル! トームル!」


 俺の名前を呼ぶと、いきなりウール王女が俺の方に急上昇している。


 皮の鎧をお互いにつけていないので、2人とも大怪我をするかもしれない!

 ウール王女を、魔法で跳ね返すわけにもいかない。


 ぶつかる〜〜〜〜〜〜!!


 俺は、ウール王女が怪我をしないように手足を前面に出して受け止めようとする。


 俺だったら、こんな無茶をしないと思った瞬間、奇妙な感覚に襲われた。





 ……?

 視界に……?


 見知らぬ赤ちゃんが……、いる。

 だ、誰?


 目を大きく開けたままで、驚いた顔になっている。

 ピクリとも動かない赤ちゃんは、そこだけ時が止まったように見える。


 確か、ウール王女とぶつかりそうになったはず。

 下を見ると、大騒ぎになっている。


 えーと……。それに。この赤ちゃん……、凄く親しみを感じるんだけれど……?

 ふと自分の手をみると、見慣れた手と違っている。


 この手は確か……?

 ウール王女の手……?


 え……?

 も、もしかして、俺たち入れ替わった?


 そう言えば、生まれてから自分の顔を見たことがなかった。

 庶民の家なので、鏡を買えるほどお金を持っていません。


 この世界では、鏡は非常に高価だとエイル姉ちゃんが言っていた。

 とすると、目の前にいるのは……、俺?


 俺って、こんなに可愛いの……?

 ちょっと待て! 男としてのプライドが……。


 でも、ウール王女の心はどこに行った?

 目の前の俺は固まったままで、瞬きさえもしていない。


『トームル?』


 え……?

 心の中から、ウール王女の声が聞こえてきた。


 頭が混乱してきた!

 俺が、ウール王女の体を動かしているのか……?


 落ち着け俺!!


 と、とりあえず。

 俺の体と光っていた本を、父ちゃんに渡さないといけない気がする。


 ウール王女の体を借りて、重力魔法で俺と本を父ちゃんの方に動かす。

 父ちゃんは、かなり動揺しているみたいだった。


 でも、しっかりと俺の体と本を受け止めてくれた。

 父ちゃんが俺の体に向かって言う。


「ト、トルムル、大丈夫か!

 ピクリとも動かない!」


「バブゥー」


 ウール王女の体から父ちゃんに返事をして、俺は右手を上げた。

 エイル姉ちゃんが、気が付いて言う。


「その仕草は、トルムル……。

 も、もしかして、ウール王女の中にトルムルがいるの?」


「バブゥー」


 俺はもう一度返事をして、右手を上げる。


「それは、トルムルの……。

 本当に、トルムルの心がウール王女に行ったの?」


「エー、ねーたん。

 バブゥー」


「そ、そ、そ、その返事は、ま、ま、ま、ま、間違いなくトルムルの返事。

 し、し、し、しかも、ウール王女の中にいると言っているわ。

 一体どうなっているの?」


 ヒミン王女が、興奮しながら言い始める。


「これは、とても素晴らしいことです!」


 え……?

 な、何が?


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