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特殊な関係

 異常なまでのウール王女の能力に言葉を失う俺。

 ウール王女に、俺は何かしたのか……?


「話と言うのは、ウールの事なのです。

 すでにお気付きだと思うのですが、ウールは急激に成長しているのです。


 体の成長ではなく、知能とか運動能力に関して成長しているのです。

 更に、視力、聴覚、嗅覚も普通以上の能力を示しています。

 もしかして、味覚もかもしれませんが。


 親としては子の成長は嬉しいのですが、普通では考えられない事を次から次へとやってしまうのです。

 ウールが大きく変わったのは、明らかにトルムルちゃんが治療した後からでした」


 やっぱり俺が原因!

 ど、どうしよう?


 も、元に戻せない!

 ヤバイ!


「私とヒミンは、城にある治療に関する本を調べてみたのです。

 その中で、ウールと同じ様な事例が書かれている、とても古い文献を見つけたのです。


 それによりますと、魔法の名前は命力絆ライフフォースボンド


 命力絆ライフフォースボンドは、初めて聞く魔法だけれど……。


「この魔法は、最終的な治療魔法なのです。

 それは、自分の命を削って、その命の力で治療をするのです」


 父ちゃんとエイル姉ちゃんが、目を一杯に見開いて俺を見ている。


 確か、え〜〜と。

 俺の寿命を少しあげてもいいと思ったのは確か。

 でも、それって俺の寿命が少しだけ短くなったって事だよね。


 ん〜〜と、実感が湧かない。

 赤ちゃんなので、多少短くなってもいい気が……。


「その本によりますと、命を与えた人の能力によって、成長する速度が早くなる場合があると書かれてありました。


 例えば、能力が高い人が幼い子供に使うと、受けた側に急激な成長が起こると書かれてあります。

 トルムルちゃんがこの魔法を使ったので、ウールは急激に成長しているのです」


 俺って、能力が高いんだ。

 少しだけ……。ほんの少しだけ規格外と思っていたんだけれど……。


「更に、そこに書かれてあったのは、二人の間には特殊な関係が生まれると書かれてありました。

 しかし、あまりにも古い文献なので、どの様な関係かを書かれていたであろう部分が見つからないのです。


 喪失したか、あるいは……」


 そこで、王妃様は言葉を止めた。

 あるいは……?


 言葉のあと、王妃様が何を考えているのが気になる〜〜!


「王妃様。

 それはもしかして、書いた人がその部分だけ、わざと書かなかったかもしれないという事ですか?」


 父ちゃんがそう言うと、王妃様は頷いた。

 それって、ウール王女に都合が悪いって事……?


 でないと、書くよね。

 そういえば、ウール王女が何を考えているかが、ハッキリと分かる。


 ウール王女の周りを回っている、ツルのように飛びたいと思っている。

 もしかして、命力絆ライフフォースボンドを使った影響か?


 もしそうなら、ウール王女の考えが俺に筒抜けになっている。



「私もそう思うのです。

 しかも、それを書いた人も考慮に入れなくてはいけません」


「それは誰なのでしょうか?

 私達が知っている歴史上の人物ならいいのですが?」


「もちろん誰もが知っている人で、伝説の大賢者様が直筆で書かれた治療書なのです。

 しかも、その命力絆ライフフォースボンドを受けた人達が大賢者の仲間となって、当時の世界を救ったのです。


 つまり、治療を必要としない人でも、命力絆ライフフォースボンドを受けると、魔法も含めて急激に身体機能が全体的に上がるのです」


命力絆ライフフォースボンドを行う人は命を削る訳ですから、とても大変な事だと思います。


 しかし、受けた側は魔物に立ち向かう能力が飛躍的に上がる事になり、受ける恩恵は計り知れないのです」


 ちょっと待ってくれ!

 俺が目指しているのは大賢者。


 もし、魔王と本気で戦うのならば、ウール王女のように何人も命力絆ライフフォースボンドを使わなくてはいけないないって事?


 理論的には、その方が強力なパーティーが組めて理想かもしれないけれど……。

 俺の命を少しずつ分け与えるのって、どう考えていいのか分からない。


 どれだけ命を削るかが、全く見当もつかない。


 ま、待てよ!


 大賢者と一緒に戦った人数と、その人の寿命が分かればおおよその見当がつくはず。

 問題は、その質問をどうやって言っていいのか分からない。


 俺はまだバブゥーと、少しの単語しか言えない。

 そうだ、大賢者に関する本を読みたい!


「バブゥー」


 俺はそう言って、右手を上げる。


「トルムルちゃんは、何か質問があるみたいですね」


 王妃様が優しく訪ねてくれた。


「だーだ」


 そう言って、エイル姉ちゃんに通じた本の動作をここで繰り返す。

 動作を終わると、エイル姉ちゃんがすぐに反応してくれた。


「トルムルは何かの本が読みたいのよね。

 その本が『だーだ』。

 つまり、大賢者に関する本を読みたいんでしょう?」


 さすがエイル姉ちゃん。

 俺の言いたい事を言ってくれたよ。


「バブゥー」


「トルムルちゃんがそう言うと思って、本人が書かれた本をできる限り見つけてきました」


 さ、さすが王妃様。

 国を治めているだけあります。


「城の中にある本はあまりにも貯蔵数が多いいために、見つけるのに苦労するのです。

 これから図書室の方に移動して本を見てもらうのですが、その前に言っておいた方がいいと思うのです。


 それは、トルムルちゃんにヒミンからお願いがあるのです。

 ヒミン、本当にいいのですね」


「はい。お母様。

 私から、トルムルちゃん……。


 失礼いたしました。

 トルムル様に、お願いがあるのです」


 トルムル様……? 俺に!

 王妃様ではなくて、ヒミン王女からのお願い……?


「私にも、命力絆ライフフォースボンドをお願いしたいのです」


 それを聞いた俺は、目ん玉が飛び出るほど驚いた!

 ヒミン王女の考えが、俺に筒抜けになるよ!


 父ちゃんとエイル姉ちゃん達は、ポカーンと口を開けて驚きを隠そうとはしなかった。


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