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自衛隊

 俺達が地下鉄の駅に入って行くと、多くの人達の悲鳴が聞こえてくる。


「キャァー!  だ、誰か助けてー!」


「逃げろ、殺されるぞ!」


「イ、イタイ!」


 ダァダァダ、ダァダァダ、ダァダァダ!


 自衛隊らしき人達がマシンガンで応戦しているけれど、魔族には全くダメージを与えていない!

 マシンガンでは、やはりダメみたいだ。


 既に自衛隊がここに居るって事は、重要な施設には常駐しているって事だよな。

 しかし、自衛隊は善戦しているとは到底言い難い……。


 やはり魔族達は、巨大壁グレイトウォールの防御魔法を付与した魔石を身に付けているので、マシンガンでは彼等の歩みを遅らせるだけ。

 並みの攻撃では魔族を倒せない……。


 でも幸いな事に、アトラ姉ちゃんの最強魔法で倒せるのは実証済みで、闇の神アーチの使う巨大壁グレートウォールまでの高い防御力では無いのは明らかだ。

 とすると、巨大魔矢を使うと、もしかして倒せるかもしれない。

 この魔矢は姉ちゃんの最大攻撃と同程度の破壊力を持っているから。


 それに、狙った所だけ攻撃できるので、周りに及ぼす被害は少なくなる……。

 姉ちゃんみたいに、広範囲に攻撃してしまうと落盤の可能性が大だ!


「ここから早く避難しなさい!」


 魔族の方に行こうとすると、20代前半の若い自衛隊員が姉ちゃんに忠告をする。

 俺が宙に浮いているのを見て、彼が超〜〜〜〜驚く!!


「き、君は、魔物なのか!?」


 自衛隊とは今後、協力関係を築かなけれならないので真実を言う事に。


「僕達は魔物のいる世界から来ました。

 魔物を倒すのが僕達の使命です。


 強力な魔法をこれから使うので、最前線の隊員を後退させて下さい」


 見かけが4才児の俺が、大人と同じ様に話したので自衛隊の彼は更に驚く!


「き、君は、魔物と同じ様に魔法が使えるのか!?」

 と言うか、宙に浮いているのは魔法によるものなのか?」


 誠心誠意の言葉で話さないと自衛隊の彼には伝わらない気がする。

 どうやら、ここを任されている司令官みたいだ。


「宙に浮いているのは、魔法によって起こっている現象です。

 どうか僕を信じて、最前線の隊員を後退させて下さい!」


 俺はそう言ってから、彼を真剣に見つめた。

 彼は少し考えてから俺を見て言う。


「分かった、君を信じる!」


 彼はそう言うと、無線で指示を出した。

 俺も仲間に指示を出す。


『ピクシィーは、壊れた構造物の修復と、これから壊れる構造物の修復もお願い。

 アダラは動けなくなった人達を、後方に重力魔法で移動させてくれ。


 リトゥルは後方で、怪我人の治療を担当。

 アトラ姉さんは、後方の守りに。


 以上、速やかに行動に移してくれ!』


『『『『お任せください。了解。分かった。りょうかいです』』』』


 返事をしたみんなは、すぐに行動に移してくれた。

 ピクシィーは損傷のあった柱の修復を開始する。


 アダラは重力魔法で、動けない人達の移動を開始している。

 空中移動を予告なしにしているので、恐怖に顔が引きつっている人達が多くいて悲鳴を上げている……。


「キャー!」


「うわ〜〜〜〜!」


「こ、怖いーー!」


 姉ちゃんは剣を鞘から抜いて四方に目をやり、警戒に当たってくれた。

 俺もすぐに重力魔法で前線に移動すると、自衛隊員とすれ違いう時、俺を凝視しながら後方に彼等は移動している。


 ま、驚くのは無理もないよね。

 だって、4才児が空中移動しながら、危険な最前線に行こうとしているんだから。


 前方に更に進むと、床に散乱している瓦礫の上を、魔族4名がゆっくりと歩きながらこちらに向かっていた。

 彼等の目は完全に死んでおり、一点を見据えたままだ。


 彼等が操られているのは疑う余地はなく、話し合いが通じる相手でないのは明らか。

 可愛そうだけれど、倒して魔石になってもらうしか彼等の魂は救えない……。


 ゴァーーーーーーーー!


 ゴァーーーーーーーー!


 俺めがけて猛火が襲って来た!

 身に付けている防御魔法が発動されて、猛火は左右に割れて後方に流れていくだけ。


 この程度の猛火では俺を倒せない。

 でも……、近くの柱を見ると、猛火で表面が流れている〜〜〜〜!!!


 このままだと、地下鉄の上部を支えている柱が熱で溶けて、地下鉄構内が崩壊するのは間違いない!

 俺はすぐに巨大な魔矢を魔法力マジックパワーで4っつ作り出し、魔族目掛けて射った。


 シュ、シュ、シュ、シュ。


 ドガァ、ドガァ、ドガァ、ドガァーーーーーー!!!!


 矢の先が真空状態なので、あっと言う間に魔族に到達する。

 そして、魔族に巨大な魔矢が突き刺さると、向こう側の壁に激突して彼等は魔石に変わっていった。


 壁が大きく崩れて、瓦礫が増えているんですけれど……。

 えーと、大きな穴が4っつ空いているけれど、ピクシィーが修復してくれるから大丈夫だよね。


 魔石を重力魔法で集めて、防具の中に入れる。

 他に魔族が居ないか気配を探ったけれど、近くには感じなかった。


 ピクシィーが地下鉄の駅を廻って、驚きながら柱などの修復をしている。

 今は俺の近くの柱を修復しており、目線が合った。


『地球って凄いですね。

 柱の内部には鉄が入っており、石を混ぜた混合物で強化しているんですよ。


 しかも、柱の表面は平らで滑らかなので修復に時間が掛かっています。

 申し訳ありません』


 え……?

 内部の構造から修復しているの……?


『凄いのはピクシィーの方です。内部から修復してくれて嬉しいです。

 修復に時間が掛かるかもしれませんが、引き続きお願い』


 それを聞いたピクシィーは微笑む。


『トルムル王に、そう言ってもらえると嬉しいです。

 妖精の名誉にかけて、完璧に修復してみせます!』


 そう力強く言ったピクシィーは、笑顔で修復作業に戻って行った。

 ビルが崩壊しそうになった時、ピクシィーは岩を出現させただけだった。


 その後、悔やんでいた感情があったのだけれど、今は喜んで作業している。

 本来持っている能力を、彼女は……?


 彼女だよね……。

 妖精の性別は外見からは判りにくい……。


 アトラ姉ちゃんに、ピクシィーの性別を聞いてみよう。

 ピクシィーの話し方が中性的なので、尚更判りにくいし。


 さっき話しをした自衛隊の人が近寄って来る。

 ピクシィーが修復している柱を、驚きの目で見ながら。


「こ、これって、魔法によるものなんですか!?

 溶けた鉄筋が元に戻り、コンクリートで覆われていく……。


 す、凄いです!

 表面の大理石も、元の平らで滑らかさになっていくわ!


 失礼しました。私は幹部候補生の、岡小百合おかさゆりと申します。

 もしよかったら、お名前をお聞かせいただけるでしょうか?」


 え……?

 この人、女の人だったの?


 ゴッツイ体つきで迷彩服を着ており、丈夫そうな盾を持っていて低い声で話しいたので、てっきり男の人だと思った……。

 俺って、妖精もだけれど、人を見る目もまだまだみたい……。


 しかも、改めて岡さんを見ると、とっても美人のお姉さん……。


「僕はトルムルです」


 岡さんは笑顔になっていく


「魔物が現れて4年になりますが、こんな素晴らしい方の地球来訪は初めてです。

 既に、世界の半分は魔物に支配されており、反撃さえできませんでした。


 それが一瞬の内に、ここに居た魔物達を撃退して下さるとは!

 本当に有難うございます」


 そう言った岡さんは俺に頭をさげる。


 リトゥルから緊急連絡が入ってくる!


『トルムル王よ、怪我人の数が多くて、儂1人では治療が間に合わん。

 戦闘が終わったのなら、こちらを手伝ってくれぬか?』


 おっと、怪我人が大勢いるのを忘れていたよ。

 アトラ姉ちゃんの治療は初心者レベルだし、アダラはまだ経験がないので、いきなり治療するのは無理だよな。


『分かりました。

 至急、そちらに向かいます』


 俺は岡さんに言う。


「怪我人が駅の反対側に大勢いるので、これから治療に当たります」


 岡さん目が大きくなって、再び驚く。


「トルムルさんは、怪我の治療もできるんですか!?」


「はい。詳しい話は後でします。

 今は緊急なので、これで失礼します」


 俺はそう言って、重力魔法で駅の反対側に急行する。

 現場に着くと、100名を超える人達が怪我をしており、もがき苦しんでいた。


火傷やけどが、燃える様に痛い!」


「痛い、誰か救急車を!」


「痛いよ、お母さん!」


 これ程の怪我人が居るとは!

 俺は早速、広域治癒魔法ゴールデンパウダーを使う事に。


 この魔法は、一度に多くの人達を治療できる。

 過去に何度もこの魔法を発動しているので、魔法を発動する為のイメージが、両手で覆われた空間にすぐにできた。


 魔法力マジックパワーを使って、広域治癒魔法ゴールデンパウダーの魔法を発動。

 俺の小さな両手で覆われた空間から、眩いばかりの黄金色の粉が吹き出して四方に広がって行く。


 黄金色の粉が駅の空間を満たして行き、人の中に吸収されていった。

 広域治癒魔法ゴールデンパウダーの黄金色の粉を見た人達は最初、突然の出来事で恐怖に陥っていた。


「嘘だろ、怪我治っている!」


火傷やけどがキレイになっていて、しかも、潤いの肌になっているわ!」


「おかあさん、もういたくないよ」


「宙に浮いている、あの男の子が黄金色の粉を出しているのを見たわ!

 これって魔法なの!?」


 若い女性が言った途端に、浮いている俺の周りを多くの人達が囲んで、写真や動画に撮っている。

「ありがとう」と言ってくれる人もいたので嬉しいのだけれど……。


 なるべく目立たない様に行動しようと思っていても、これは目立ち過ぎだ〜〜!

 これではあっという間に、日本全国に俺達の事が知れ渡ってしまう。


 でも……、時すでに遅しで、間違いなく俺達の事は拡散されている筈。

 仕方ないよね、人命救助が最優先だから……。


 岡さんが駆け足で俺の方に近付いて来た。

 さっきよりも、肌のつやが凄く良くなった様な気がするんですが……?


「お疲れ様ですトルムル様。

 一度に多くの人達に治療が出来るって、本当に凄すぎます。


 それに、私の肌が10代の頃と同じ潤いの肌になったのには感動しました。

 し、失礼しました。


 個人的な事よりも、上層部からの伝達がトルムル様にあります。

 私岡が、全面的にトルムル様の地球滞在を支援をする様にと命令を受けました。


 ご迷惑でなければ地球にいる間、困った事があったら私に何でもご相談ください。それで……、どこに住んでいるのでしょうか?

 トルムル様の連絡先を知りたいので」


 おじいちゃんのパン屋さんに住む予定だったけれど、妹に俺達の魔法を見せたので、迷惑になる……。

 何て答えたらいいのだろうか……?


「私の家に住んでいます」


 俺は驚いて後ろを振り向くと、妹が満面の笑顔で立っていた。



読んでくれて、ありがとうございます。


投稿が、かなり遅れてしまいました……。



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