子連れの美人コスプレイヤー
服を買う為に、俺たちは地下鉄に乗る事に。
地球に来てまだ初日なので、姉ちゃん達は物珍しそうにあちらこちらを見ている。
姉ちゃん達からは、命力絆を使って再び質問の嵐が押し寄せる……。
魔法を使ってないのに何で絵が動くのとか、階段が動いているなど……。
土の妖精であるピクシィーが、壁を触って興奮している。
『地球って凄い世界ですね。
石の表面を真っ平らにして、滑らかに加工してある技術が普通ではないです!』
ピクシィーがここまで興奮するとは珍しいよ。
でも言われてみれば、向こうの世界では岩を荒く削っていただけだった。
突然アダラが、命力絆を使って緊急連絡を入れて来る。
『とても、おおきな、なにかがくる!
このままだと、キケン!』
え……?
俺は全くキケンを感じ無いんですが……?
もうすぐ、地下鉄の駅に電車が来るのを感じるんだけ。
もしかして、アダラが感じた大きな物って電車の事かな?
そういえば、地球に来てアダラ達は電車をまだ見ていないんだった。
アトラ姉ちゃんとリトゥルは、アダラの警告を受けて反射的に身構えており、姉ちゃんは剣を鞘から抜いて、いつでも攻撃できる体制だ〜〜!!
それを見た周りの人達が、姉ちゃん達を好奇心の目で見ている……。
隣に居た妹も、姉ちゃん達の異様な行動に戸惑いを感じているみたい。
口を半分開けて、呆けている
俺は急いで命力絆を使って、みんなに連絡をした。
『先程アダラ言ったキケンは、電車が向こうから来ているだけです。
敵では無いので、警戒を解いて下さい!』
姉ちゃんが緊張した声で言う。
『洞窟から来る巨大な何かが来るのを私も感じるんだけれど、これがトルムルの言っていた電車という乗り物なのか!?
信じられないくらいの重圧を感じる!』
ガタッーン、ゴットーン、ガタッーン、ゴットーン。
ガタッーン、ゴットーン、ガタッーン、ゴットーン。
電車が駅に入って来た。
プッシュゥーーーーーーーー!
ドアが開き、多くの人達が降りて来る。
まだ信じられない様に、降りて来る人達を姉ちゃんは見ており、警戒をまだ解いていない……。
パシャ、パシャ、パシャ、パシャ。
多くの人達が、姉ちゃんの写真を撮っているんですが……。
「こんな偶然に鉢合わせるとは、運が良いわ」
「凄く美人のコスプレイヤーだな」
「親子連れの外人コスプレイヤーって、とっても珍しいよ」
……。
プルルルル。
発車のベルが鳴っている。
急がないと、この電車に乗れないよ!
『この電車に乗るので、すぐに移動!』
命令口調で俺が言うと、やっと姉ちゃんとリトゥルは電車に乗ってくれる。
プッシュゥーーーーーーーー!
ドアが閉まると、姉ちゃん達は電車内を見回している。
目を最大限に見開いて!
妹は、そんな姉ちゃん達を見て頭を傾げた。
周りに居る人達は、俺達のコスプレ……、に写真を撮り始める。
パシャ、パシャ、パシャ、パシャ。
なるべく目立たない様に行動しようと思っていても、目立ち過ぎだろこれって?
特にアトラ姉ちゃんは、大柄で美人なので目を引きやすいし、動き易い様に、素肌の露出度が高い防具を身に付けているので尚更。
弟の俺から見ても姉ちゃんの姿って、一枚の絵になるくらい見応えがある……。
更に、人形の様に可愛いアダラを抱いているから、コスプレイヤーとしては珍しく、赤ちゃんを抱いた女剣士に見える。
って、俺の写真を撮る人達もいるんですけれど……。
ガタッーン、ゴットーーン、、ガッタァ〜〜〜ン!!
電車の速度が落ちたと思うと、最後には電車が止まった!
止まったかと思うと今度は、車内が真っ暗になる。
すぐに非常灯がついて、乗客達が騒ぎ始める。
「また停電かよ!」
「魔物が現れたんだわ!」
「日本もこのままだと、魔物が支配する国になるのかよ!」
え……?
日本もって、どう言う意味なの……?
まさか、既に魔物に支配された国があるって事?
それって、思っていた以上に地球がヤバイよ!
まだ地球に来たばかりなので情報不足。
停電が何度も起きているみたいで、この停電は魔物の攻撃によるものに間違いなさそう。
魔物の気配を探る為に神経を集中する。
すると、前方から魔物の気配を感じた!
魔物が居るのは次の駅辺りみたいで、急いで行かないとヤバイ!
でも……、妹に俺達の正体を明かすのは避けたい……。
しかし、人の命がかかっており、魔物達によって人の命が失われている。
俺は一大決心をして、妹の方を向いた。
少し不安そうにしている妹と視線が合う。
「僕達は、魔物のいる世界から来ました。
魔物達を倒すのが僕達の使命です。
葵さんは、ここに居て下さい。
アトラ姉さん、ドアを開けて下さい。
そこから出て、重力魔法で前方に移動します」
妹は、俺に指を指して、超〜〜〜〜〜〜〜驚く!!
「ト、トルムルちゃん達って、魔物の世界から来たの!?
お、おばあちゃんの言っていた通りだわ!
しかも、4才のトルムルちゃんが、大人と同じ様に話しているし!
貴方は一体、何者なの!?」
「時間が無いので、後から詳しくお話しします」
プッシューーーーーーーー。
姉ちゃんが力ずくでドアを開けると、俺達は重力魔法で移動を開始する。
それを見た妹は、更に目を大きく開けて、俺に指を指したままだ!
電車の窓と壁の間を、高速で移動すると多くの人達が驚く顔で俺達を見ている。
ま、人間が空中移動しているんだから驚くのは当たり前か。
見ている人達の中には、写真や動画を撮っている人達もいた……。
目立ちたくないのに、これでは更に目立っている気がする…。
でも、仕方ないよな。
選択の余地はなくて、魔物を倒すのが最優先だからな。
電車を通り抜け、更に進むと次の駅に俺達は入って行った。
トルムル達は目立ちたく無いのに、益々目立ってしまいました……。
魔物が又しても現れたようですが、トルムル達は大丈夫なのでしょうか?
次話をお楽しみに。