まさか、妹……?
闇の神アーチを追って地球に来たのだけれど、見慣れた景色が広がってた。
だってここは、間違いなく東京のビルの谷間……。
電柱には、銀座2丁目と書かれた文字が目に飛び込んで来る。
今居る所は裏通りみたいで、じいちゃんのパン屋さんがあるすぐ近くだ!
アーチの気配は既に無く、せっかくここまで来たのに、これから何をしていいのか途方にくれる……。
もしかしてここに移転した来たのは、住み慣れたこの場所に俺は惹きつけられたのか……?
俺と一緒に異世界から来たアトラ姉ちゃんと、抱かれている娘のアダラ、それに元賢者のリトゥルが上を見上げてポカーンとしている。
更に、姉ちゃんの胸の谷間からはニッキが顔を出し、土の妖精であるピクシー達も上を見上げて口をポカーンと開けているだけ。
ま、仕方ないよな、前の世界とは全く違うから。
「トルムル、ここが地球なのかい?
岩をここまで深くくり抜いて、ガラスをあんなに薄くして窓にはめているなんて、凄く驚いているよ」
えーと、何て姉ちゃんに説明していいのやら……。
「キャーーー! ま、魔物〜〜」
「逃げろ〜。殺されるぞ!」
「ここにも現れるなんて!」
突然、表通りから悲鳴が聞こえて来たので、俺は重力魔法で移動する。
表通りに出ると人々が逃げ惑っており、逃げてくる先からは魔族の気配がした。
ドォッゴォ〜〜ン!
ドォッゴォ〜〜ン!
逃げ惑う人達を避けながら音のする方に急いで歩いて行くと、魔族が人々を襲っていた。
魔族の標的になっている人達に魔法力を使って防御魔法を発動。
シュゥーーーーーーー!
これで、取り敢えずは大丈夫かな?
キャァーーーーー!
車の陰から悲鳴が聞こえ、誰かが魔族の攻撃をもろに受けたみたいだ!
ここから見えなかったので、その人に防御魔法をしてあげれなかった……。
アトラ姉ちゃんが魔族に対して、いきなり伝説の魔剣で攻撃しようとする。
ビルの立ち並ぶここで、超〜〜破壊力のある超音波破壊剣を使ったら、間違いなくビルが倒壊する!
命絆力を使って、攻撃を止めさせないと!
『姉さん、止めて下さい!』
ドォッゴォ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
お、遅かった……。
姉ちゃんが放った超音波破壊剣は魔族達を魔石に変えた。
「魔族を倒したけれど、これで良いんだろうトルムル?」
って、姉ちゃんは笑顔を俺に見せたけれど……。
でも、ビルの柱が既に壊されており、壁にもヒビが……。
ビシィ、ビシィ、ビシィーーーー!!!
ビシィ、ビシィ、ビシィーーーー!!!
ビシィ、ビシィ、ビシィーーーー!!!
多数のビルの壁に亀裂が入り、それが更に広がっていく〜〜!!
一部の柱が既に無く、亀裂が入った事によってビルの群れは予想通り傾き始める。
ビルの中に人が大勢いる気配がし、このままでは大惨事になるのは間違いない!
俺は重力魔法を発動して、ビルの倒壊を食い止めようとした。
けれど、傾き始めたビルの数が多く、更に、重量があるので俺だけでは止められない!
アダラが手伝ってくれたけれども、それでもダメだ!
急いでピクシィーに言う。
『ピクシィー、ビルの倒壊を止めてくれーー!』
『わかりました、お任せください』
ピクシィーがそう言うと、急速に地面が盛り上がってビルの半分が埋まる。
そこで、やっとビルの傾くのを止められた。
しかし、異様な光景に唖然とする俺。
ビルが半分、完全に岩で埋まっているんですが……。
そうだ、車の陰に居た人はどうなった?
俺は走って急行する。
中学生ぐらいの女の子が地面に座っている。
怪我は無いみたいで、魔族の攻撃をもろに受けても無傷とは驚きだ!
いや、待てよ!
女の子の胸の谷間から、防御魔法を発動している……?
よく見ると、首からお守りがぶら下がっていた。
こっれて、お守りが魔族の攻撃を防いだのか……?
お守りに、こんな効果があるとは驚きだ!
女の子は俺を見ると、俺に指を指した!
「も、もしかしてお兄ちゃんなの?」
え……?
お、兄ちゃんって言ったよね……、この子……。
……?
何故か、とても懐かしい気配がこの子からする。
……。
ウッソォォーーーーーー!!
この気配は、間違いなく俺の妹だった葵だ!
そういえば、地球で俺が死んだ時には妹はまだ小学生だった。
年数からして、妹は中学生になっている……。
しかも、小学生の時だった頃の面影があるのだけれど、超〜〜可愛くなっている。
妹は、こんなに可愛かったか……?
「あ、ごめんね、坊や。
亡くなったお兄ちゃんと似た気配を坊やが持っていたから、お姉ちゃんビックリしちゃった。
でも、全然違っていたわ!
坊やを見ていると、まだ小さいのに世界を救う程の器を感じるの……。
あ……。
おねえちゃん、変な事言ったよね、忘れて」
妹って、こんなに感がよかったか……?
今の俺と、昔の俺とでは雲泥の差があるのは間違いの無い事実。
えーと、ここで何か言わなければ怪しまれてしまう。
3才の言葉で……。
って、4才になったのかな俺?
と、とにかく4才児の言葉で話さないと。
「おねえちゃん、だいじょうぶ?
まもの、いなくなったよ」
これで大丈夫かな?
でも、妹にお姉ちゃんて言うのって、違和感があり過ぎ!
「居なくなったの魔物?
教えてくれてありがとうね、坊や。
そのコスプレ、坊やに似合っていて、とっても可愛いわよ」
可愛いって妹から言われると、兄としてのプライドがぁーー!
妹は魔族がいた方を見ると超〜〜〜〜〜〜驚き、岩で半分埋まったビルの群れに指を指す。
妹は驚いた時には、指を指す癖があったけれど、昔のままだ。
「う、嘘でしょう!
ビルが半分、岩で埋まっているわ!
何でこうなったの!?
さっきまでは普通の通りだったのに……」
時間が無かったので、ピクシィーに細かな指示ができなかった……。
でも、緊急だったので仕方ないよな。
ビルの中からは、多くの人達が外に出て来ている。
誰もが驚いた顔をして。
ピーポーピーポー、ピーポーピーポー。
ウーウー、ウーウー。
カンカン、カンカン。
緊急車両が集まりだした。
ここに居ると、俺達の事を根掘り葉掘り聞かれると説明が長くなるし、疑われる可能性もあるので去る事に。
姉ちゃんに抱かれたアダラ達と、リトゥルも集まって来た。
みんな武器と防具で身で固めているんだけれど、外国人がコスプレしているみたいで、ここにいても全く違和感が無いので不思議だ。
とにかくここから離れて、今後の行動を姉ちゃん達と相談しないとな。
「おねえちゃん、バイバイ」
俺はそう言って歩き出す。
突然、妹から異音がした!
ピポパパ、ピポププ、ピッピピ、ピポパパ、ピポププ、ピッピピ。
何だと思って、歩きながら聞き耳を立てる。
「もしもしおばあちゃん、どうしたの?」
さっきの音は、電話の呼び出し音だったみたい。
妹が返答したおばあちゃんは、母方のおばあちゃんで、由緒ある古い神社で巫女をしている。
「魔物を倒したその人達が、世界を救って下さると神託あった。
私の所に連れて来なさい」
え〜〜〜〜〜〜〜〜!!
遠く離れた山奥から、おばあちゃんからの電話に超〜〜驚く俺!
おばあちゃんて、普通の巫女ではなかったの……?
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作者です。
読んでくれてありがとうございます。
いよいよ地球編が始まりました。
皆さん、宜しくお願いします。
読んでくれて、ありがとうございます。
次話は遅くなりそうです。
宜しくお願いします。