地球だってぇ〜〜〜〜〜〜!!!!!
闇の神アーチが、狂気に満ちた若い女性の声で俺に言い始める。
「ウフフ、坊やがトルムル王ね、ウフフ。
魔王を倒すとは予想外、ウフフ。
でもウフフ、これで私は自由になれた、ウフフ。
この世界とウフフ、異世界を簡単に支配できるわ、ウフフ。
坊やが私の配下になるのなら、ウフフ、この世界を任せても良いのよ、ウフフ。
地球と呼ばれている、ウフフ、異世界の攻略に私は専念できるから、ウフフ」
な、何だって〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
地球だって〜〜〜〜〜〜〜〜!!
も、もしかして、魔王城を守っている魔族の数が極端に少なかったのは、彼等を地球に移転させていたからなのか……?
地球がヤバイ!!!!!
地球に住んでいる人達は魔法が使えないので、彼等には対抗できない!
機関銃などで魔族を攻撃しても、高度な防御魔法を付与している魔石を彼等が持っていれば、簡単に防御されてしまう。
地球に移転している魔族達が、地下神殿でアーチが出した巨大壁に似た防御魔法を持っている可能性が非常に高い……。
しかし……、多くの魔族達を地球に移転させるには、膨大な魔法力が必要になる筈だけれど……?
そうか、瘴気だ!
アーチがこの大陸全土に出していた瘴気で、魔物達の魔法力を奪い、それを地球に移転させる為に使っていたんだ。
とすると、地球を支配するために、何年も前から既に魔族の転移が行われていたのか……?
俺が地球で死んで、その後に魔族達が地球に移転を開始したのか?
「お返事が無いわよ坊や、ウフフ。
巨大壁を破らない限り、坊やには勝ち目が無いわよ、ウフフ。
人間が神に反抗するのが間違っているわ、ウフフ。
素直に私に従った方が良いわよ、ウフフ。
坊や、ご返事は、ウフフ」
ご返事って、答えは決まっている。
アーチを倒す事が答えだ!
でも、アーチの言う通り、俺のレベルでは巨大壁を破るだけの魔法力を持っていないのは明らか。
でも、心で繋がっている姉ちゃん達や乳児達、それにモージル妖精王女達と妖精達の全ての魔法力を俺は使える。
神であろうと何であろうと、俺達が負けるはずが無い!
既にアーチは、巨大壁を出現させている。
巨大壁を上回る魔法力の攻撃魔法で攻撃すれば、アーチにダメージを与えることが出来る筈だ!
俺は精神集中を始め、心で繋がっている人達の魔法力を把握し、半分の量を最初使う事に。
それでも凄い量の魔法力で、以前に感じた量よりも遥かに多い。
みんなが成長した証でもあり、予定外の魔法力の量に内心俺は安心した。
って、まだアーチを倒して無いので、攻撃する為のイメージを始める。
「ウフフ、黙っていてはダメですよ坊や、ウフフ。
私は気が短いので、攻撃を開始しますよ、ウフフ」
先手、必勝だ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
俺はゴゴク将軍を倒した灼熱龍刃を使う事にした。
アーチの部下を倒したのだから、更に威力を高めればアーチにダメージを与える事が出来ると確信する。
しかも、あの時よりは威力が十倍、いや、百倍、千倍になるのは間違いない。
イメージが完了したので、みんなの魔法力の半分を使って左右の手から同時に、灼熱龍刃の魔法を遥かに上回る、神灼熱龍刃を発動した。
バッシュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
バッシュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
2つの灼熱の刃が空中に現れたかと思うと、急速に周りの空気を熱していく。
2つの灼熱龍刃の交わっている箇所からは、眩いばかりの光と共に、もの凄く暑い熱気が伝わって来る。
俺が出した灼熱龍刃なので、自身の防御魔法が全く作用しなくて、焼け死んでしまいそうなので、冷却魔法を使う。
灼熱龍刃は、寸分違わない正確さでアーチの中心部分に襲いかかる。
ザク〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
「グッハァァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
以前よりも遥かに高い高温と、巨大な刃がアーチにダメージを与えたみたいだ!
「キィィィーーーーーーーー!
い、痛いわ!
人間が神である私に……。
ふ、深手を負わせるとは、キィィィーーーーーーー!」
傷を癒さなくては、戦えない、キィィィーーーーーーーー!
これ程の魔法力を人間が出せるなんて!!!
このままでは坊やには勝てないわ、キィィィーーーーーーーー!
地球の支配が終わったら、坊やを殺しに再び戻ってくるわ、キィィィーーーーーーーー!
それまで坊や、潤いのある首を洗って待っているんだよ、キィィィーーーーーーーー!」
アーチがそう言うと空が割れ、その奥に異空間の惑星が現れた。
その惑星は間違いなく、青い地球だ!
吸い込まれるようにアーチは異空間に移動していた。
俺は無意識の内に重力魔法を使って、高速でアーチを追いかける。
この世界からアーチが居なくなっても、地球がヤバイ!
それに、地球の支配が終われば、再びアーチは間違いなくこの世界に戻ってくる。
選択の余地はなく、俺1人でもアーチにトドメを刺さないと。
突然の出来事で、姉ちゃん達を始め、心で繋がっている人達や妖精達に動揺が広がった。
当然だよな。
地球の存在を知らない彼らは、そこに人間達や多くの生き物が住んでいる事を知らない。
俺がアーチを追っかけて行く理由が、彼等には判らないと思う。
二度と会えないかもしれない……、この世界の人達に別れの挨拶をする事に……。
『皆さん、長い間お世話になりました。
空に見える惑星の名前は地球です。
僕はあの地球で生まれて、狂人の手によって亡くなりました。
その後、この世界に転生してトルムルとして新たな人生を今まで歩んで来ました。
これで皆さんとお別れです。
僕はアーチを追って、地球に行かなければなりません。
長い間、未熟な僕を助けてくれて本当にありがとうございました。
再び、この世界に帰れるかどうかは判りません。
皆さんの事は決して忘れません。
皆さん、お元気で……』
俺はこれ以上話せなかった。
涙が滝の様に溢れて……。
みんなからは、又しても一斉に返事が来る。
『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『
トルムルが地球で生まれたって……。どうしてトルムルだけ行くの私も……。頭が混乱して……。転生って……。あの、青い惑星からトルムルが来たの……。どう考えていいのか……。きっとそこには美味しい……。アーチがその惑星に行く……。嘘でしょう……。これからどうすれば……。トルムルと温泉にもう行けないの……
』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』
余りにも多くの人達や妖精から同時に話しているのでよく分からない……。
空に開いている異空間が急速に小さくなっているので、引き返す時間が無いのは明らかだ!
アーチが地球を支配するのを、何としても止めなければ。
地球にいた頃の家族が、まだそこには住んでいるんだから!
俺は溢れ出る涙を拭いながら、異空間に入って行った……。
◇
異空間に入ってしばらくすると、突然辺りが真っ白になる……?
もしかして、罠か……?
「トルムル、大きくなったわね」
懐かしい声の方を振り向くと、化粧をしている中年のエイル姉ちゃんがそこに居た……。
でも、明らかに気配が違う。
これは母ちゃんのお墓で見た時の、母ちゃんの気配だ!
「もしかして、母ちゃんなの……?」
その人は俺に近付いて来て俺を抱き上げ、優しく抱いてくれた。
アトラ姉ちゃんみたいな胸だったけれど、抱き方は愛情が溢れる様な優しい抱き方。
俺を下ろすと、真剣にな表情に変わった。
「トルムルが地球から転生したのは、女神様から聞いたわ。
最初は驚いたけれど、トルムルの知識の高さの秘密が分かった。
でもねトルムル。貴方は間違いなく私の息子よ。
地球に行ってもお母さん、トルムルの事を見守っていますからね」
そう言った母ちゃんは俺の後ろに移動する……?
後ろを振り向くと、何と、アトラ姉ちゃんとアダラがそこに居た!
異空間が閉じるまでの短い時間で、どうやってここまで来れたのか不思議……。
っていうか、アトラ姉ちゃん、俺と一緒に地球に行ってくれるの……?
「アトラ、地球に行く決心をしてくれてありがとう。
トルムルだけだと、アーチを倒すのは流石に荷が重いからね。
アダラちゃん、初めまして。
まだ一才にもなっていないのに、すごい活躍をしているのでお婆ちゃんはビックリ。
これからもお母さんとトルムル叔父さんを助けてあげてね」
アトラ姉ちゃんとアダラは口を開けて超〜〜ビックリしている。
身動きできないで、母ちゃんを見ているだけ……。
母ちゃんは更に、アトラ姉ちゃんの後ろに移動する。
その方向を見ると、何と、スケベ……。
元賢者のリトゥルが居た!
母ちゃんがリトゥルに近付くと、あのリトゥルが固まっている……。
「リトゥルさん、お久しぶりです。
私が貴方をぶっ飛ばした後遺症はもう治りましたか?」
え……?
リトゥルてば、母ちゃんにも手を出したの……?
リトゥルは母ちゃんの顔をよく見ると超〜〜驚く。
「お、お前さんはナタリー。
後遺症も何も、お前さんにぶっ飛ばされて腰痛が完治しなくなったんじゃ!」
母ちゃんは和かに言う。
「私のお尻に触ろうとしたからでしたよね!?
それに、私の娘達にも同じ事をしましたよね!?」
アトラ姉ちゃん以上の闘気を出してリトゥルに威圧する母ちゃん……。
リトゥルは母ちゃんの威圧する闘気に負けて萎縮して行く。
「ナタリー様、もうしません。
海よりも深く反省しております」
「判れば宜しい。
貴方でも、トルムル達の役に立つ筈です。
くれぐれも、地球の若い子達に手を出さない様に!
ここから貴方を見張っていますよ!」
母ちゃんってば、怖!
流石、アトラ姉ちゃんの母ちゃん。
って、俺の母ちゃんでもあるのだけれど、姉ちゃんと同じ魔法剣士なので闘気が半端ないほど凄い!
母ちゃんはこちらに振り向くと、不思議な顔をする。
「おかしいわね……?
もう二つ、気配を感じるんだけれど」
え!?
もう二つって何……?
一つは、姉ちゃんの横に浮かんでいる土の妖精のピクシーで、母ちゃんには見えないみたい。
だけれど、あと一つは……?
あ〜〜、俺も感じるよ、アトラ姉ちゃんの胸の辺りで!
姉ちゃんの胸に向かって、威厳を込めて俺は三歳児の声で言う。
「アトラ姉さんの胸に隠れているお前、出て来い!」
やっぱり、可愛い声しか出ない……。
って、この気配は確かメデゥーサのヘビの……?
ヒョコ。
姉ちゃんの巨大な胸の谷間から出て来たのは、ヘビのニッキだ〜〜!
「よ、トルムル王、お久しぶり。
最後の決戦を見たくて、アトラさんの防具の中に潜りこんでいたんだよ。
心配しなくてもメデゥーサの許可は得ているからね。
でもまさか、こんな展開になるとは予想外だよ」
メデゥーサの許可を得ているんなら……。
でも……、今のメデゥーサはニッキが抜けているので、十円ハゲになっている……。
って、そういう問題ではなくて、ずっと姉ちゃんの防具の中に居たの?
姉ちゃんてば、ニッキを見て驚くどころか、笑顔になっている……。
「そうかい、仲間が増えて頼もしいよ。
魔族には石化魔法は効かないけれど、神々の偉大な系譜の髪の毛のニッキが居れば、色々な知恵を出してもらえそうだ」
そうなんだよね、魔族には石化魔法は効かない。
でもニッキは生きている年数がとても長いので、知識は豊富。
それに、細かな所にも入って行けるのでこれかも役に立ってもらえそうだ。
問題はリトゥルで、間違いなく地球の若い子に手を出しそう……。
それに、アトラ姉ちゃんの攻撃力は凄いけれど、後先考えなで行動する事が多いし。
娘のアダラの魔法攻撃は超強力だけれど、まだ乳児だし……。
このメンバーで地球を救うんだよね……。
本当に大丈夫なのかな……?
読んでくれて、ありがとうございます。
次話から新章、地球編になります。
今夜10時に次話を投稿予定です。
宜しくお願いします。