魔王の最後、でも……。
怒りに体を震わせていた魔王は、何かの魔法を放った。
ズズッーーーーーーーーーーーーーー!
突然、俺の体が地面にのめり込んで行く……。
魔王は超強力な重力魔法で俺を押しつぶす気だ!
俺の防御魔法がすぐに反応して、俺を守ってくれる。
それに、これ位の重力魔法なら俺にでも可能。
魔法力を使って重力魔法を発動し、地上に上がって行く俺。
ボコ。
魔王の重力魔法より、俺の重力魔法の方が完全に上回っている。
魔王って、魔法力が俺よりも下みたい……。
魔王に勝てるか不安な日々を送って来たけれど、これだと勝てそう。
ようし、今度は俺の番だ!
巨大な魔矢で魔王にダメージを負わす事が出来たので、追加の魔法を加える事に。
これは以前から考えていた戦法で、巨大な魔矢と、二重螺旋絶対零度猛火《ダブルフィリックスアブソリュートゼロ ファイア》を同時に発動する。
魔矢の周りを、二重螺旋絶対零度猛火《ダブルフィリックスアブソリュートゼロ ファイア》で覆い、超高温と超低温で攻撃する。
って、試した事は無いので少し不安……。
でも、今がこの魔法を使う時だ!
俺が地上に出て再び驚いている魔王に、俺は魔法力を使って魔法を発動。
ゴォァァァーーーーーーーー!!!
ヒューーーーーーーーーーー!!!
巨大な魔矢が現れ、その周りを猛火と絶対零度の冷気が高速で回っている……。
近くに現れた魔矢なので、超〜〜暑いし、超〜〜寒い……。
と、とにかく、魔王に狙いを定めて射る。
ビューーーーーーーーーーーーーーー!
巨大な魔矢を俺が出したので、魔王は二度と当たりたくないみたいで高速で動き出していた。
しかし、俺はこの魔矢に追尾機能の魔法も追加で発動していたので、どこまでも魔王を追って行く。
ドォコォォーーーーーーーー!!
魔矢が魔王を直撃して、岩に再びのめり込んだ!
魔王の気配を探ると徐々に生命力が無くなって、最後には消えた……。
も、もしかして魔王をやっつけたの、俺……?
敏感に感じるアトラ姉ちゃんの娘のアダラが、命力絆を使って興奮しながら言う。
『まおうの、けはいが、きえたわ……。
トルムルおじさん、もしかして……、やっつけたの……?』
他の乳児や姉ちゃん達が、驚きながら俺を見る。
え〜〜と……。
確かに魔王の気配は消えたんだけれど、魔王の居た場所から、凄まじい狂気の気配が急速に大きくなって行くんですけれど……?
この狂気の気配は間違いなく闇の神、アーチだ!
魔王の中に居たみたいで、魔王が死んで、器が壊れたから出て来た感じ……。
魔王が闇の世界からアーチを召喚したんだよな。
って事は、魔王が死んだので、その柵《しがらみ』が無くなってアーチは自由になったのか……?
当初の目標であった魔王を倒したのは良いのだけれど、これって最悪の展開……。
俺……、闇の神に勝てるの……?
闇に染まったとはいえ、元は神。
その能力は、人間の能力を遥かに超えているのは間違いない。
狂気の気配が段々と強まるにつれて乳児達は勿論、姉ちゃん達も顔が強張り始め、戦闘隊形になった。
闇の神アーチと互角以上の戦いをするには、俺1人では到底無理だ!
過去に何度も経験した集合魔法を使うしか、アーチに勝てる手段が無い……。
命力絆で繋がっている姉ちゃんや乳児達、それにモージル妖精王女や、王女に繋がっている全ての妖精達に緊急連絡を入れる。
『魔王は倒しましたが、闇の神アーチとこれから戦います。
激戦が予想され、アーチに勝つためには皆さんの魔法力が必要になると思います。
各自、安全な所に移動して、いつでも魔法力を僕に移動させる準備をして下さい』
みんなから、又しても一斉に返事が来る……。
『がんばって、トルムルおじ……。ご武運を祈っ……。頑張れよトルム……。!トルムル様に、この世界の命運……。マジで神と戦うの、それっ……。俺達が居るから間違いなく……。母さんもきっと見守って……』
誰が何を言ったのかよく分からなかったけれど、みんなの応援は間違いなく受け止めた。
母ちゃんもあの世から俺達を見守っている筈だ。
母ちゃんにはとても感謝している。
前の世界ではのんびりと暮らしていて、生き甲斐など無かった……。
この世界に転生してから、胎児であった俺にこの世界の事を詳しく教えてくれた。
もし母ちゃん以外の人だったら、今の俺は存在していないのは事実だ!
この世界を救いたいとういう母ちゃんの願いを叶える為に、俺は今まで一所懸命生きて来た。
前の世界では到底考えられないような激変に、俺自身も驚いている。
これも母ちゃんのおかげ。
母ちゃん、俺、最後まで諦めないで闇の神アーチと戦うよ。
それに、俺1人で戦うのでは無く、多くの仲間が今回も助けてくれる。
これが本当に最後の戦いになるのは間違いなく、この戦いに勝たなければ、人間と妖精の未来は無い!
武者震いが再び起きた。
前方には黒い霧の塊が、狂気を撒き散らしている。
読んでくれてありがとうございます。
明日の朝10時に次話を投稿します。