魔王戦その1
魔王が地下神殿から、もうすぐ地上に出てくる!
ニーラがこの場所にいると、非常に危険だ。
「ウールはニーラを連れて本隊と合流する様に!」
ウールは了解の返事をすると、重力魔法でニーラを連れ、味方の本隊が居る方に高速で移動を開始する。
本隊では、各国の強者がニーラを守るので安心だ。
ボコォーーーーーーーーーーーーーー!!!
激しい音と共に、魔王が地上に出て来た。
怒りで体を震わしており、凄い形相で俺達を睨む!
俺の方を見ると、目が一際大きくなる。
「よくも儀式を邪魔してくれたなトルムル王よ!
お前を今すぐ殺し、ニーラを奪え返す!!」
そう言った魔王は、魔法を発動する動作を開始しする。
増強魔法を追加して、更にレベルが上がった猛火が俺達に迫って来た!
ゴォアーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
でも、姉ちゃん達や乳児部隊も、俺と同じ最強の防御魔法を付与した魔石を持っているので、この程度の猛火なら全然問題の無いレベル……。
魔王の猛火で周りの砂が熱で溶け始めたけれど、俺達に対するダメージは全く無い。
凄く熱いので、自分の周りだけ冷却魔法を発動。
みんなも同じ様にしており、日頃の戦闘訓練が生きている。
全くダメージを受けない俺達を見た魔王は、更に、怒り始めた。
「何故だ!
何故、儂の猛火を耐える事が出来るんだ!?
これならどうだ、トルムル王!」
そう言った魔王は、今度は冷却魔法と増強魔法を発動する。
ヒューーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
でも……。
これって、ブリザードの最上級魔法なのだけれど、同じく俺達にはダメージを与える事が出来ない……。
周りがとっても寒いので、今度は熱気の魔法で体を温める。
魔王ってば、ニーラを生贄にできなかったのでレベルがあがらず、現時点では俺達の敵では無いみたい。
もしニーラが生贄にされていたら、俺達はヤバかったかもしれないよな。
魔王は、驚愕の目で俺達を見る。
「そ、そんなバカな!!!
儂の攻撃魔法が一切効かないだと!?
これならばどうだ!」
上空で巨大な雷雲が発生した!
俺はすぐに細い針金を、雷雲から地上に向けて魔法で作り出す。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ!!!!
凄まじい音が雷雲から聞こえて来ると……。
ピカァーーーーーーーーーーーーーーー!
ピカァーーーーーーーーーーーーーーー!
ピカァーーーーーーーーーーーーーーー!
ドッガァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
ドッガァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
ドッガァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
凄まじい音と共に、巨大な雷が、細い針金を伝わって落ちた。
姉ちゃん達や乳児部隊は、過去に何度も見ているので、巨大な雷が近くに落ちても平然としている。
それを見た魔王は、更に驚いている。
俺達が巨大な雷に動じないのが不思議みたいだ。
「どうしてお前達には、儂の攻撃魔法が一切効かないのだ!?
ならば、伝説の剣である毒蛇剣の刃でお前達を見殺しにする!」
そう言った魔王はマントを脱ぎ捨てた。
武具で身を固めた魔王は、筋肉の塊だ〜〜!
まさか、魔王が剣の使い手とは驚き。
それに毒蛇剣は確か伝説の魔剣で、かすり傷でもそこから毒が入り、即死すると賢者の本に書かれてあった……。
ヤバイよ。
俺、剣できないし……。
って、魔王が襲って来る前に魔法で攻撃すれば良いんだよ。
こちらに高速で移動して来る魔王に、俺は魔矢で連射を始める。
シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ!
全矢命中……。
いや……、全矢、防御魔法で弾かれた……。
かなり強力な防御魔法みたいだ。
って、すぐそこまで魔王が迫っているんですが……。
岩石人間をだして、物理的に魔王を止めるしか無いよな。
魔法で岩石人間を出そうと思った瞬間……。
カッキィィーーーーーーーーン!
剣と剣がぶつかる音が聞こえた。
魔王の方をよく見ると、アトラ姉ちゃんが前面に出て魔王の剣を受け止めている。
カッキィィ、カッキィィ、カッキィィ、カッキィィ〜〜〜ン!
連続して剣がぶつかる音が聞こえ、魔王とアトラ姉ちゃんが剣で戦い始めた。
姉ちゃんてば凄い!
魔王と互角の戦いをしており、力でも負けてない。
魔王はアトラ姉ちゃんと戦いながら、再び驚いたみたいだ。
だって、顔が引きつっているから。
「何故だ! 何故だ! 何故だ!
人間の……、しかも若い女が儂と互角の戦いが出来るとは!?」
いや〜〜それには秘密があるんだよな。
以前俺が、姉ちゃんに命力絆をしたからで、今の姉ちゃんは人間の能力を遥かに超えています。
でも、姉ちゃんが魔王と互角に戦うなんて凄すぎて……。
え……?
素人の俺でも、魔王に隙があるのが判るんですけれど……?
これってまさか……。
罠……?
ヤ、ヤバイよ!
姉ちゃんを懐に飛び込ませて反撃し、小さな傷でもいいから傷つける気なんだ。
かすり傷でも即死すると言われている、毒蛇剣の能力を魔王は使う気なんだ。
姉ちゃんもそれが判ったようで、魔王の懐に飛び込むのを躊躇している……。
と思ったけれど……?
え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
姉ちゃんてば、危険を覚悟で魔王の懐に飛び込もうとしている〜〜〜〜!
もしかして、姉ちゃんがもっている伝説の魔剣である超音波破壊剣を至近距離から魔王に使う気か……?
魔王の防御魔法が強力とはいえ、まじかで使えばおそらく魔王の防御を突破出来ると姉ちゃんは思ったんだ。
超音波破壊剣の強大な破壊力を考えると、魔王に致命傷を負わせられるかもしれない……。
でもそれは……、やってみないと判らない……。
カッキィィ、カッキィィ、カッキィィ、カッキィィ〜〜〜ン!
再び、剣が交わる音が聞こえてくる。
魔王と姉ちゃんの剣を振るスピードが早すぎて、目で追えない……。
ザクゥ!
ドッゴォォ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!
ヒゥーーー!
ドッガァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
切られる音と共に、姉ちゃんが超音波破壊剣を使った音が聞こえて来る
それと共に魔王が遠くにぶっ飛ばされ、巨大な岩にのめり込んだ〜〜!
姉ちゃんを見ると、腕から血が少し流れている……。
姉ちゃんはふらついており、その場に倒れこんだ。
毒蛇剣の毒が体に入ったんだ!
俺はすぐに、姉ちゃんも所まで重力魔法を使って高速で移動。
姉ちゃんの所に行くと意識が無く、呼吸も浅い。
毒が全身を駆け回っているみたいで、非常に危険な状態だ!
治療が得意なシブ姉ちゃんが飛んで来て、治癒の検査魔法でアトラ姉ちゃんの体を調べ始めた。
最初、緊張していたシブ姉ちゃんは安堵のため息を吐く。
「ふぅー。
アトラ姉さんはすぐにでも目が開くわよ、トルムル。
そんな心配な顔をしないの。
命絆力のおかげで、毒に対しての抵抗力があるみたいね。
思えている、トルムル?
ヴァールがトリカブトの毒で命を落としそうになった時、トルムルが命絆力をしたので命が助かったのを。
命絆力って、毒に対しての耐性がかなり強いみたいね。
それを思い出したアトラ姉さんは、危険だと判っても魔王の懐に飛び込んだのよ」
よ、良かった〜〜。
アトラ姉ちゃんが死ぬかと思ったよ。
ボコォ!
音のする方を見ると、巨大な岩にのめり込んだ魔王が抜け出した!
首を左右に振っており、アトラ姉ちゃんの攻撃でも致命傷にはならなかったみたい……。
恐るべき魔王!
今度は、俺が魔王と戦う番だ!
読んでくれてありがとうございます。