神殿の崩壊
アトラ姉ちゃんの横に浮かんでいる、土の妖精であるピクシーも悔しそうに儀式を見ている……。
ん……?
ピクシーって、大地を操る事が出来る。
という事は……。
そうだ!
岩の中で最も硬いといわれる花崗岩を、砂に出来ないか……?
地下神殿は花崗岩をくり抜いて作られており、砂に変換させたら神殿は間違いなく崩壊する筈だ!
俺達も生き埋めになるかもしれないけれど、何としても儀式を止めないと、この世は魔王によって支配されてしまう!
時間が無いので俺は、端的にみんなに説明を試みる。
「みんな聞いて!
これから神殿を崩壊させるから、防御魔法を最大限にしてくれ。
神殿が崩壊したら重力魔法を使って地上に出るように!
ピクシー、そちらに意識を移すから待機してくれ」
姉ちゃん達や乳児達、妖精やヒミン王女、ウールが一斉に俺を見た!
目が飛び出る様な、超〜〜驚きの表情でみんなが俺を見る……。
そして、今まで俺達は死線を一緒に戦ってきたので、俺を信じるような表情に変わって行く。
又しても、一斉に話し出す……。
「「「「「「「「「「「「「「「「了解しました。頑張ってトルムル。信じています。おじさんがんばって。さすがです。神殿を崩壊って……。凄いです。了解。これからだよな!さっすがー。驚き過ぎて……。助かったら、温泉に一緒に入ろうねトルムル」」」」」」」」」」」」」」」
えーと……、温泉って……。
姉ちゃん達とは、もう一緒に温泉に入りたくない……。
と、とにかく、誰が何を言ったか分からないけれど、早急にピクシーに意識を移動させないと。
ウールを見ると、俺の言いたい事が判ったのか、微笑みながら頷く。
今回も、ウールに俺の体を守ってもらわなければ、神殿が崩壊したら俺の体が生き埋めになったら困るからな……。
ウールは近寄って来て、再び俺をきつく抱いてくれる。
痛いくらいに……。
本当はロマンチックなんだけれど……。
ピクシーに意識を再び移動させると、花崗岩でできている神殿を砂に変えるのは、さほど難しくないと判った。
すぐに意識を集中させて、神殿の花崗岩を砂に変えるイメージを開始。
イメージができたので、俺は魔法力を使って、花崗岩を砂に変える魔法を発動する。
ゴォゴォゴォゴォーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
突然、神殿全体が不気味な音を立て始める。
ズザァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
花崗岩が砂に変わった〜〜〜〜〜〜!
突然、津波の様に俺達に襲いかかって来る、大量の砂〜〜〜〜〜〜!!!!
ふと気がつくと、俺はアトラ姉ちゃんの肩に乗っているみたいで、アダラが心配そうな感情を俺に向けている。
俺達は地中を上に向かって移動中みたいで、狭い空間だけ確保され、砂の中を進んでいる。
「大丈夫か、トルムル?
意識がさっきまでなかったので心配したよ。
まだ……、ピクシーの中にいるんだよな?」
えーと……。
砂の津波に飲み込まれて、意識を失っていたみたい……。
ピクシーの体に慣れていないので、砂が襲ってきた衝撃に耐えられず、俺は意識を失っていた……。
ピクシーの意識を探ると、まだ意識を失っていた。
『ピクシー!
起きろ〜〜!』
俺は大声でピクシーを心の声で呼ぶ。
『ウゥーー!』
やっと、ピクシーは目が覚めたみたい。
『こ、ここはどこですか、トルムル王……?
真っ暗で何も見えないのですが……?』
「もうすぐ地上に出るから、心配しないでピクシー」
ポコ!
俺達は地上に出た。
しかし、俺達だけで、誰も居ない……。
アトラ姉ちゃんが心配顔で言う。
「あの硬い岩が砂になるなんて思ってもいなかったよ。
流石トルムルだ。
で……、あれで儀式を止められたのか?
それと……、みんなは大丈夫なのか?」
姉ちゃんがそう言うと、あちこちから何かが出てくる音が聴こえてくる。
ポコ、ポコ、ポコ、ポコ、ポコ、ポコ、ポコ、ポコ!
姉ちゃん達にヒミン王女。
それに、俺の体を守っているウールだ!
ニーラの事が気になり、意識を地下神殿のあった場所に向けた。
俺が渡してあった防御魔法を付与した魔石をまだ身に付けていたみたいで、無事なので安心する。
重力魔法を使ってニーラを地上に引き上げる事に。
ポコ!
ニーラを見ると、昨日会った時よりもかなり老けており、呼吸も今にも止まりそう。
まるで、老婆の様……。
儀式が成功して、俺達は間に合わなかったみたいだ……。
え……。
マジ……。
な、何と!
ニーラは、徐々に元の顔に戻って行く。
肌も以前と同じ様にシットリしているし、呼吸も普段通りになる。
間違いなく、ニーラは元に戻ったんだ!
ニーラの周りには姉ちゃん達も集まって来て、安堵のため息が漏れる。
俺達、儀式を止める事が出来たんだ!
ヤッター!
ん……?
これは……?
崩壊した神殿の辺りから、物凄い怒りの感情が伝わって来た。
怒りを発散させながら、地上に移動を開始している。
この気配は、間違いなく魔王だ!
読んでくれてありがとうございます。
いよいよ、魔王との戦いが始まります。
次話も宜しくお願いします。