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ガンダル兄弟

 ワイバーンの城には、大陸全土から魔物達が集まって来た。

 俺達と戦う為ではなく、一致団結して魔王を倒すためにここに集って来ている。


 魔族も噂を聞きつけたのか、日増しにその数は増えている。

 彼等は俺に従うというよりも、魔王の娘であるニーラに忠誠を誓い、魔王に代わって魔族の女王になってもらうのを望んでいる。


 今の魔王になってから重税になり、魔族達はかなり苦しめられていると聞いた。

 集まって来ている魔族の中にはニーラの親戚もおり、再開をとても喜んでいる。


 その中に、魔王の妹であるムギーナルがいて、どうも彼女に不信感を俺は感じている。

 心の中は読めないので、ハッキリとした事は判らないのだけれど、俺に対する憎悪を感じるからだ。


 他の魔族からは一切感じないのに、ムギーナルだけに感じるので、尚更、そう感じるのかもしれない。

 もしかして、魔王のスパイである可能性もあるので、姉ちゃん達や乳児達にはムギーナルに対して、特に注意を払う様にと言った。


 ニーラは叔母さんに会えたので喜んでおり、俺に対して増悪の感情を抱いている事実を言えなかった……。


 ◇


 相当数の魔物達がワイバーンの城に集まって来たので、いよいよ魔王城に向けて、魔族の領地に進軍を開始する。

 魔族の出城で戦い、多少の抵抗はあったのだけれど、こちら側が圧倒的な数なので殆どの魔族は白旗をすぐに上げていった。


 しかし、最初の城塞都市ではそうはいかなくて、魔物達では苦戦を強いられていた。

 大きな仮設テントは臨時の司令所で、戦況の報告が逐一入って来る。


「ゴロムの城塞都市は噂以上で、味方の被害が増えるばかりです。

 ガンダル兄弟の強力な攻撃魔法で、こちら側は手も足も出ません!」


 こう言ったのは、戦況を報告してくれたワイバーンの見張りの兵士。

 彼等は空を飛べるので、いち早く戦況の情報を俺達に教えてくれている。


「私が行くよ、トルムル!」


 闘気を四方に力強く発散し、伝説の魔剣を鞘から抜いて言ったのはアトラ姉ちゃん。

 俺が行っても良かったんだけれど、今回は姉ちゃんが適任かも。


 何故なら今回は、城塞都市の城壁を壊すのが主な任務になるので、姉ちゃんの持っている魔剣なら壊す事はたやすいはずだ。

 何たって、姉ちゃんの持っている魔剣は、失われた伝説の魔剣を俺が再現して造ったので、破壊力は実証済みだ!


 少し……、破壊力が強過ぎる場面もあった。

 塔の上部をぶっ壊して、瓦礫が降り注いだ事もあったけれど……。


「アトラ姉さん、お願いします。

 その魔剣で、城壁を破壊して来てください」


「おー!

 任せておけ、トルムル!」


 そう言った姉ちゃんは、大股でテントから出て行った。


 えーと……?


  姉ちゃんは将来、第1王位継承権の王子と結婚しているので、王妃になるのは間違いないのに、行動と言葉遣いが粗野な気がするんですが……?

 ここは戦場なので仕方がないかもしれないけれど、もう少し丁寧な歩き方と言葉遣いをした方が良いと俺は思うんだよな。


 少し待っていると……。


 ドォッゴォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!


 ドォッゴォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!


 姉ちゃんが魔剣を使う音が聞こえてきた!

 ワイバーンの見張りの兵士がテントの中に入って来て、笑いながら報告をする。


 って、ワイバーンは笑うと牙がむき出しになるので、返って怖い顔に見えてしまう……。


「アトラ様が城塞都市の城壁の一部を、2撃で破壊しました!

 味方はそれを機に、ゆき雪崩のごとく内部に侵入を開始し〜〜!」


 魔剣の破壊力を目の当たりに見た見張りの兵は、興奮しながらそう言った。


 しかし……。

 次に来た見張りの兵は、駆け込むようにしてテント内に入ると、緊迫した様子で言う。


「ガンダル兄弟の攻撃力が凄まじく、トルムル総司令官のお姉様達でさえ歯が立ちません!

 侵入した味方の兵達は、後退を余儀なくされております!」


 何と、姉ちゃん達でさえも倒せない魔族がいるなんて!

 やはり魔族は、最も手強い種族だ。


 ここは、俺が出るしかないよな。

 総司令官たる者は不動の如く動かず、戦況を把握して指示するだけで、味方の勝利につながると思っていたけれど甘い考えだったみたい。


 ちょっと反省……。


「僕が戦線に出ます。

 最前線にいる兵達に、総退却の命令を出して下さい。


 そうしないと、僕の攻撃魔法に巻き込まれる恐れがあるので」


「オォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜!」


 テント内に居いた各種族のリーダー達が安泰の声をあげた。


「トルムル王が出陣するのだから、勝利は間違いないゴブ〜〜!」


 そう言ったのはゴブリン族のゴーブブ王女。

 王女は今までも、俺の戦闘を何回も見ていたので勝利を確信しているみたいだ。


 でも問題は、ガンダル兄弟を倒すのは簡単と思うのだけれど、城塞都市から未だに逃げていない魔族に、被害が及ぶのを俺は恐れている。

 俺の魔法は強力すぎて、城塞都市そのものを破壊しかねないからだ……。


 そうなると、非戦闘員の魔族を多数殺してしまうことになり、俺の本意ではない。

 でも、姉ちゃん達がかなわないのであれば、俺が出るしかないよな、ヤッパリ……。


 とすると、使いたくなかったけれど俺の秘儀の中で、魔法を使わないで敵を誘い出す方法を使って、ガンダル兄弟を城塞都市から誘き出すしかないのか……?


 ちょっと恥ずかしいけれど……。


 俺は意を決してテントから出ると、重力魔法を使って城塞都市に移動する。

 見えてきた城塞都市の城壁が、アトラ姉ちゃんによって大規模に壊されているのを確認できた。


 敵の情勢を見てみると、壊された瓦礫の上で、まるで勝ったかのように気勢を上げている。

 ガンダル兄弟の攻撃に俺達が総退却したからだ。


 気配でガンダル兄弟の位置を探ると、最も魔族が集まっている場所に居る。

 やはり、これではガンダル兄弟に対して最大魔法は使えなくて、秘儀を使うしかない……。


 この状況では最大魔法を使うと、周りの魔族にも被害が及ぶのは間違いがない。

 魔族を殺すのは最小限に留めたいし、真の敵は魔王だけだからだ!


 魔族は魔王の命令にしたがっているだけで、本心から俺達とは戦いたくはないのを知っている。

 それでも、ガンダル兄弟だけは倒さないと魔王城に行くことが叶わないので今回は仕方がない……。


 ガンダル兄弟に俺が見える所まで空中移動すると、魔族達からは一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 火炎、吹雪、雷などを……。


 でも、余りにも攻撃が幼稚なので、いつもの盾で十分に防げている。

 ガンダル兄弟から強力な攻撃を仕掛けて来ているんだけれど、遠くからなので、何とかこの盾でも防げている。


 そろそろ、俺の秘儀中の秘儀を出す時だ!

 ガンダル兄弟を城塞都市から誘き出す為に。


 俺はふざける様にして、ガンダル兄弟に聞こえるように可愛い……、声で言う。


「そんな攻撃では、僕は倒せないよ。

 近くから攻撃しないとね。


 それとも、僕の可愛いお尻が怖いのかい?」


 つ、ついに……、言ってしまった秘儀の言葉……。

 今こそ、秘儀中の秘儀を見せる時だ!!


 俺は意を決して、とっても可愛い俺のお尻を、ガンダル兄弟の方に向けてて左右に振り出す。


「「お、おのれ〜〜!!!

 我らをバカにしおって〜〜〜〜〜〜!!!」」


 俺の可愛いお尻……、を見たガンダル兄弟は怒り狂って、俺の方に重力魔法を使って飛んでくる。

 それに呼応するように、誰も居ない平原に俺は、お尻を振りながら兄弟を誘導して行く。


「「待て〜〜、トルムル王〜〜!!

 俺達と戦うのではないのか〜〜!!」


 平原の上空に来たので、お尻を振るのを止めた。


「ト、トルムル王は、ハァハァ〜〜。

 飛ぶのは、は、早いな……」


 ここまで俺は、余裕で飛んで来たのに、ガンダル兄弟は飛ぶのが不慣れなのか、息を切らしている。

 それにしても、簡単にここまで来てくれるなんて、俺の秘儀は凄いよな。


「トルムル王よ!

 これでも喰らえ〜〜」


 ゴァ〜〜〜〜!!


 ガンダル兄弟の1人が猛火の魔法を発動すると、他の兄弟が何かの魔法を追加で発動する……。


 ゴァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!


 な、何と!!

 魔法の威力が数段上がっている!


 こんな魔法が存在したなんて、聞いた事が無い。

 賢者の本の中にも書かれていなかったし、やはり、世の中は広いんだな。


 って、これってヤバいくらいの猛火!

 俺はいつもに盾を魔法力マジックパワーを使って作り出し、追加で強化する。


 猛火が盾に当たると、小刻みに震えながら耐えている。


 多分、この特殊な魔法は防御でも応用が可能で、姉ちゃん達の攻撃が通用しなかったのは、この魔法を使ったからだと推測できた。

 イメージ的には簡単で、増幅や強化を加える様なものか?


 ガンダル兄弟の猛火をしのいで2人を見ると、ビックリしているんですが……?


「「う、嘘だろ?

 俺達兄弟の、最大攻撃魔法が全く効かないなんて……」」


「降参しますか?」


 俺がそう可愛い声で言うと、再び怒り狂うガンダル兄弟。


「「まだまだ〜〜!!

 これならどうだ〜〜〜〜!!」


 今度は吹雪の魔法で、それがさらに強化魔法を加える事で、ブリザードの魔法になっている。

 でも、この程度では俺を倒せないんですけれど?


 ブリザードの魔法に簡単に耐えた俺は、本物の冷気魔法である絶対零度アブソリュートゼロの魔法を、お返しに発動する事に。


 絶対零度アブソリュートゼロのイメージができたので、兄弟めがけて俺は魔法力マジックパワーを使って魔法を発動した。


 ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜。


 銀色の大きなかたまりが、ガンダル兄弟めがけて行く。

 かたまりの通った後には、冬の太陽の光を浴びてダイアモンドダストがキラキラと輝いている。


 カッキィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!


 ガンダル兄弟の方で、凍った音がした。

 ダイアモンドダストが風に流されて視界が元に戻ると、兄弟が完全に氷づけになっていのが見える。


 周りの木々や、小さな池も完全に凍っている。


 まっ、当たり前だけれどね。


 ガンダル兄弟を重力魔法で城塞都市まで牽引して行くと、魔族達は急速に戦意を失っていった。


 その後、ガンダル兄弟が敗れたのが魔族の間で広まって、抵抗をここもみる魔族が少なくなり、魔王城まで俺達の快進撃が止まらなかった。


新年明けまして、おめでとうございます。


今年もよろしくお願いします。


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