死闘……。
ゴゴク将軍から、薄気味の悪い触手が急速に伸びて来た!
思っていた以上に早く、あっとう間に俺の周りに。
触手からは嫉妬、憎しみ、恨みなどが感じ取れる。
俺はとっさにアトラ姉ちゃんの胸をイメージした強力な盾を魔法力を使って魔法で作り出して防御する。
盾は小刻みに震えながら耐えている。
さすが、これまであらゆる攻撃を防御してくれた盾だ!
でも……、よく見ると……。
盾は小刻みに震える間隔が早くなり、ついに……、ついに……?
ズゥザァーーーー!
霧散した。
う、嘘だろ〜〜〜〜!!
この盾はどんな攻撃にも今まで耐えてきたのに、こんなにもあっさりと霧散するなんて!
なんて強力な攻撃なのだろうか!?
更に触手が伸びて俺を捕まえようとすると……。
ポヨォヨォ〜〜〜〜ン。
防具に埋め込まれた魔石から防御魔法が発動して盾が出現して、ゴゴク将軍の触手を防いでくれる。
この防御魔法は激戦が予想される魔王戦で、もしもの時のために、俺が考案した最終防御魔法だ!
この防御魔法は姉ちゃんの胸の弾力と、防弾チョッキの両方をベースにしてイメージした魔法で、あらゆる攻撃から俺の身を守ってくれる……、筈……。
アトラ姉ちゃんの胸をイメージして作られた盾が霧散した今、俺を守ってくれているのはこの最終防御魔法だけだ!
予想を遥かに上回る攻撃をして来たゴゴク将軍。
このままでは身動きが取れずに、俺は触手に絡み取られてしまう!
重力魔法を使って全力で逃げ出そうとしても、触手から逃げられない!
どうする俺……?
グォ〜〜〜〜〜〜!!
触手が急に動き出した!
ドッガァ〜〜〜〜〜〜ン!
俺は地面に強く叩きつけられ、その衝撃で地面に穴が出来た……。
姉ちゃんの胸と防弾チョッキを合わせた防御魔法は、俺をフンワリと包み込んでいるので衝撃を吸収してくれ、柔らかなベッドに飛び乗った感覚。
だけれど……。
ドッガァ〜〜〜〜〜〜ン!
ドッガァ〜〜〜〜〜〜ン!
何度も何度も、地面に叩きつけられても怪我は無いのだけれど、まるで船酔いしている時と同じ様に吐き気がしてきた……。
や、やばい吐きそう……。
『トルムル、大丈夫か!?』
アトラ姉ちゃんが心配して聞いてくる。
『僕は大丈夫です。
これから反撃を開始します』
って、姉ちゃんを安心さすために言ったけれど、吐き気がして精神を集中出来ない。
みんなからは、心配する感情が伝わって来る。
船酔いは俺にとって、最大の弱点だ〜〜!
って、ここで反撃しないと、マジで吐いてしまいそうだ!
俺は吐きそうな気分を無理やり押し込めて、精神を極限まで集中していく。
ドッガァ〜〜〜〜〜〜ン!
ドッガァ〜〜〜〜〜〜ン!
何度も何度も地面に叩きつけながらも俺は、大賢者の本に書かれてあった伝説の魔法、灼熱龍刃を魔法力を使って、ゴゴク将軍から伸びている触手に向かって発動する事に。
大賢者がこの魔法を考案したのだけれど、大賢者さえも完成には至らなかった秘技中の秘技だ!
俺は長い年月を……。
3年以上の月日を費やして、やっと完成までこぎつけた。
実戦で使ったことは無かったので、試すにはもってこいだ!
俺は触手に地面に叩きつけられながらも、更に精神を集中していく。
灼熱龍刃のイメージが鮮明にできたので、魔法力を使って魔法を発動する。
バッシュゥーーーーーーーーーー!!!
真っ赤に燃えさかる灼熱の刃が空中に現れたかと思うと、急速に周りの空気を熱していく。
そして灼熱の刃は、寸分違わない正確さで触手に襲いかかった。
ザックゥゥゥゥーーーーーーーーー!!!
まるで、豆腐を切るかの様に触手を簡単に切断する。
「グゥオォォォ〜〜!
よくも儂のシッポを〜〜!!
ゴゴク将軍は苦痛をあげた。
えぇ〜〜!
触手はゴゴク将軍のシッポ……?
ゴゴク将軍は……、もしかしてドラゴン系か、あるいは蛇……?
俺は自由になると、今度は灼熱龍刃を、ゴゴク将軍に向かって魔法力を使って魔法を発動する。
バッシュゥーーーーーーーーーー!!!
再び剣が空中に現れたかと思うと、灼熱の刃は急速に周りの空気を熱ししていく。
そして灼熱の刃は、寸分違わない正確さで黒い靄の中心部に襲いかかった。
ザックゥゥゥゥーーーーーーーーー!!!
ガッキィィ〜〜〜〜〜〜〜〜!
灼熱龍刃は、ゴゴグ将軍の防御に阻まれて霧散する。
巨大な魔矢でも射抜けなかったし、最終魔法の1つでもある灼熱龍刃もゴゴク将軍に防御されてしまった。
なんという防御力の高さ!
でも、シッポを切断できたので、取り敢えずは良しとしよう。
「流石、トルムル王だな。
ここまで儂を追い詰めるとは!
だが儂も、闇の世界では猛将として知られたアーチ様の最高幹部の一角をなす者。
人間如きに、絶対負けるわけにはいかぬわぁ〜〜!!」
そう言ったゴゴク将軍からは、燃え盛る闘志が伝わってくる。
再びゴゴク将軍が魔法力を使う感覚が伝わってきたかと思うと、上空に雷の音が鳴り響く。
お俺はとっさに、上空の雲から地上まで細い針金を魔法で作り出す。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ。
ピカァーーーーーーーーーー!!
ドッカァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
ピカァーーーーーーーーーー!!
ドッカァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
ピカァーーーーーーーーーー!!
ドッカァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
空気を揺るがす大音響と共に、今まで見たことがない様な巨大な雷が、細〜〜い針金を伝わって地上に3度落ちる。
近くに雷が落ちたので、鼓膜が破けそうになるぐらい耳がいたい……。
耳を塞ぐのを忘れていたよ……、俺。
まだまだ修行が足らないよな、俺って……。
ゴゴク将軍からは、雷が俺に当たらなかったので驚きの感情が丸出しになる。
「そ、そんなバカな!?
儂の最大魔法、闇蛇雷が当たらないだと!?
トルムル王の近くを通っただけで、何故当たらない!!
お、おのれ〜〜!」
何故って言われても、どんなに巨大な雷でも、金属に引きつけられるのをゴゴク将軍は知らないみたい。
尤も、この世界の人達は雷が電気で、金属に引きつけられるって知らないからな。
今が反撃の大チャ〜〜ンス!
最大の魔法が俺に通じないので、ゴゴク将軍は動きが止まっているからだ!
って、俺も、ゴゴク将軍に通じる攻撃魔法が思いつかない……。
ん……?
待てよ!?
アトラ姉ちゃんが、最大の攻撃を繰り出す時に魔剣の魔法力と自身の魔法力を加えて攻撃を繰り出したら威力が倍どころか、二乗したぐらいの効果があったよな。
という事は、灼熱龍刃を左右の手から同時に魔法を発動したら同じ様な効果を発揮して、ゴゴク将軍の防御を突破出来るかも……?
やってみる価値はありそうだ!
それに、温度に下限が有っても、上限はいくらでも高くする事が出来るのを俺は知っている。
1億度でも、それ以上の温度でも出せる……、筈……。
さらに言うと、左右の手から繰り出される灼熱龍刃の交わる箇所は更に温度が上がるのは間違いない。
もしかしたら……、一兆度を軽く超えるかも……?
いや、もっと上の温度になるのか……?
でもそれには、俺の体内にある魔法力を殆ど使う必要がある。
危険だけれど、これしかゴゴク将軍には通じない気がする。
躊躇している暇は無い!
俺は精神集中させて、左右の手の中で灼熱龍刃のイメージを開始する。
鮮明なイメージが完了してしたので、俺は体内に有る魔法力の殆どを使って左右の手から同時に、灼熱龍刃の魔法を発動した。
バッシュゥーーーーーーーーーー!!!
バッシュゥーーーーーーーーーー!!!
2つの灼熱の刃が空中に現れたかと思うと、急速に周りの空気を熱していくんだけれど、更に……。
2つの灼熱龍刃の交わっている箇所からは、眩いばかりの光と共に、もの凄く暑い熱気が伝わって来る。
俺が出した灼熱龍刃なので、自身の防御魔法が全く作用しなくて、焼け死んでしまいそうだ!
でも2つの灼熱龍刃は、寸分違わない正確さでゴゴク将軍の中心部分に襲いかかる。
ザク〜〜!!
「グッハァァァァァーーーーーーーーー!」
ゴゴク将軍は断末魔の叫びをあげると、体が四方に散って霧散した。
2つの灼熱龍刃はその後、遠に行って消えるまで、夜空を眩いばかりの光の洪水を作り出し溢ていた……。
更に、超高温の影響で、辺りを真夏の温度に一瞬の内に上げていた……。
まさか、これ程の高温が出せるとは、俺自身もビックリ!
とにかく、ゴゴク将軍に勝利したので良かったよ。
「「「「「「「「「ウォーーーーーーーーーーーォォ!!!」」」」」」」」
城ではワイバーン達が大歓声を上げている。
姉ちゃん達やウール、アダル達が又しても同時に命力絆《ライフフォースボンドを使ってで一斉に話し始める。
『『『『『『『『流石、トルムル王で……。あんなに凄い魔法を使えるなんて……。トルムルおじさんスゴーイ。凄いです、トルムルは……。一時はどうなるかと……。何という高温の魔法で……。おじさん、すき〜。汗が止まらないので温泉に……。トルムルのせいで、化粧が流れ……』』』』』』』』
……?
化粧が流れたって……、俺のせいなの……?
も、もしかして真夏の様な気温になったからなの……?
それに、温泉に入りたいと誰かが言ったけれど、今回ばかりは大賛成。
尤も、姉ちゃん達とは別に入りたいけれど。
ワイガー王の側にいたヒミン王女から、珍しく興奮して連絡して来る。
『トルムル様、朗報があります。
昨夜、魔物達の王位継承者達が私達の言葉を全部信じてもらえなかったのですが、今の戦いで彼等は闇の世界の脅威を実感されました。
更に、トルムル王の脅威的な攻撃力に感嘆され、魔王を倒すに十分な能力を彼等に示す事も出来ました。
ワニ族のワニガ第一王子。ケンタウロス族のウロロス第一王女。ミノタウルス族のダウルス第一王子。そしてギガコーモリ族のギーガ第一王女の皆様方は私達の考えに賛同してくださり、一致団結して魔王を倒すと言って下さいました。
これも全て、トルムル王のご活躍の賜物です。
これでほぼ全ての魔物達が私達の味方になってくれました。
トルムル王が思い描いていた魔物達との共闘が、今ここで成立しました。
おめでとう御座います』
ほ、本当に?
ワイガー王と親交のある魔物達の第1王位継承者達に城に来てもらい、昨夜、魔王の背後には闇の神アーチがいる事を話たのだけれど信じてもらえなかったんだよな。
既に、闇の世界の住人達が、この世界に入ってい悪さをしている事を話したのだけれど、絵空事と思われた。
それが、ゴゴク将軍との戦いで俺達の主張が正しいと認めてくれたみたいだ。
こんなに嬉しい事はないよ。
これで彼らを殺さなくて済むし、戦力的にも魔王軍と戦うのには十分だ。
でも……、魔王を守っている魔族は強敵で、侮れないのも事実。
それに、ゴゴグ将軍からの情報で、闇の神アーチに仕える最高幹部がまだいるみたい。
更なる激戦が予想されるけれど、俺達は前進していくのみだ。
おそらく次に襲って来るのは、間違いなく最高幹部。
身が引き締まるのを俺は感じながら、仲間のいる城に戻って行った。
大量の汗を流しながら……。
読んでくれて、ありがとうございます。
次話も投稿が遅くなるかもしれませんが、よろしくお願いします。