表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/195

間に合うか!?

 ワイガーを助ける為に今から急いで飛んで行っても、到底間に合わない……。

 魔矢で狙って彼等を撃ち落としたいけれど、双頭山の片方の山に彼等が入り込んで見えなくなってしまった……。


 巨大竜巻を起こして彼等を吹き飛ばしてもいいのだけれど、ワイガーの居る位置が正確に判らないのでそれもダメだ!

 せめて、魔矢で狙える山のこちら側に彼等が飛んでいれば、何とかなったのに……。


 ん……?


 待てよ!?


 魔矢って、矢の先に真空状態を作りながら飛んで行くから、目にも止まらぬ速さで飛んで行くのだけれど、もしかして……、乗って行けるかもしれない……。

 でも、半端ない重力が自分に降りかかって、とっても危険……?


 魔矢が飛ぶ速度をいつもよりも遅くすれば何とかなるかもしれないよな。

 でも……、とっても危険なので、アダラ達乳児はやめた方がいい気がする。


 載せられるのは……、2人ぐらいか……?


 とすると、俺とアトラ姉ちゃんが最適な人選だよな。


 俺の胴体ぐらいある大きな魔矢を、魔法力マジックパワーを使ってすぐに作り出す。

 もちろん、乗るための椅子も付けて。


 シュゥーーーー。


 椅子付きの巨大な魔矢が目の前に現れたので、アトラ姉ちゃんに向かって俺は言う。


「アトラ姉さん、この矢に僕と乗って下さい!

 この矢に乗って、山頂まで2人で飛んで行きます!」


 姉ちゃん達も同じ様に彼等の会話を聞いていたので、山頂に急いで行かなければならないのは分かっていたみたいだ。

 でもまさか、俺が出した魔矢に乗って2人が飛んで行くとは思わなくて、みんな超〜〜ビックリしている!


 アトラ姉ちゃんが目を大きく見開いて言う。


「これに乗ると山頂に早く着くだろうけれど、どうやって下りるんだい?」


 ……。


 それは考えていなかった……。


 もっともな御意見で、えーと……?

 下りる時は、重力魔法を使えば良いよな……、多分……。


「タイミングを見計らって、重力魔法を使って離脱します。

 他のみんなは、山頂に急行して下さい!」


 みんなが了解の返事をし、俺とアトラ姉ちゃんが魔矢に乗ると、既に他のみんなは重力魔法を使って山頂に最速の速度で飛んで行く。

 みんな俺を信頼し、すぐに行動力に移してくれているのでとっても嬉しい。


 その信頼に答える為には精神を集中し、魔矢から下りるタイミングを正確にしないとな。

 少しでも遅かったら、遥か彼方に飛んで行ってしまう可能性もあるし……。


 目を閉じて、いつも以上に念入りに精神集中をする。




 クワァーーーーーーーー!!!


 俺のつぶらな瞳……、を最大限に見開いて、思い描いていたイメージを魔法力マジックパワーを使って魔法を発動する。


 ビューーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


 魔法を発動したかと思うと、体が椅子の背もたれに強く押し付けられ、周りの景色が急速に後ろに飛んで行く……。

 余りにも強い重力で意識が飛びそうになったけれど、気合で頑張って意識を失わない様にし、次の瞬間には山頂に迫っていた!


 すぐに重力魔法で魔矢から離脱すると、魔矢は次の瞬間には遠くに飛んでおり、最後には見えなくてなっていた。

 下りた周りの空間を確かめると、少しだけ遅かったみたい……。


 山頂付近を見ると、クロッガー率いる親衛隊が、実の兄であるワイガーを殺す為に山頂付近にある洞窟……、に入っている所だ!


 ヤバイ!

 間に合うか!?


 俺とアトラ姉ちゃんは急いで急行する。

 洞窟の前に居た見張り達を魔矢で射抜き、魔石に変えていく。


 シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ。


 洞窟の前に降りる頃には、見張り達は魔石になっており、俺とアトラ姉ちゃんはクロッガーを追って洞窟に入って行く。

 洞窟の中にもクロッガーの親衛隊が居たので、俺は片っ端から魔矢で彼等を射抜き、同じ様に魔石に変えていった。


 シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ。


 魔法で俺の視力を上げてあるので、彼等が俺達に気が付く前に魔矢を連射する。

 最速のスピードで重力魔法を使って移動すると、前方で声が聞こえてくる。


「……に父上が亡くなり、あとは邪魔な兄上をこの世から抹殺すれば、私がワイバーン族の王になれる!

 兄はバカだよ、魔王に逆らって小娘を助けるなんて。


 でもな、そのバカな兄のおかげで、オレ様が幼い時からなりたかった王になれるから不思議なものだ。

 邪魔だと思っていた兄を、これで容赦なく殺せる。


 覚悟するんだな、ワイガー兄!」


「父上が亡くなったのか……。

 昔、優しかった父上……。


 魔王が人間世界に侵略する頃から、父上の性格が凶暴になっていったのを、お前も知らない訳ではあるまい。

 クロッガーよ、魔王の甘い言葉には、どうか負けないでくれ!


 魔王はこの世界を、破滅へと導こうとしているのが判らないのか!?」


「クゥクゥクゥ〜〜!


 力ある者が、この世界を支配して何が悪いんだ!?

 問答無用だ、ワイガー兄!


 これを食らうがいぃ〜〜!!」


 クロッガーが言い終わった直ぐ後、口を大きく開け、ワイバーン最大の攻撃である巨像鎌コロッサスサイスを発動している彼の姿が視界に入って来た。

 俺はとっさに、ワイガーに防御魔法を発動する。


 シュゥーーーーー!


 ドッガァ〜〜〜〜―ン!


 ガラガラ〜〜〜〜!


 か、間一髪で、防御魔法が間に合った〜〜。


 クロッガーの攻撃は凄まじく、ワイガーが居た独房の壁と天井が崩れて、瓦礫の山が出来ていた……。

 ワイガーの気配を探ると、俺が発動したオッパイ型で、超〜〜弾力のある盾に守られて無傷でいるみたいだ。


 ただ、どうしてクロッガーの攻撃に対して、自分が無傷なのか、と〜〜っても不思議がっている。

 ま、俺達がワイガーを助ける為にここに来たのを、王子まだ知らないからな。



 でも……、 ワイガーは大量の瓦礫で身動きができないみたい……。


 アトラ姉ちゃんは走りながら剣を抜き、超音波破壊剣ソニックウエーブディストラクションソードを使う構えに入った。


 こんな所で、超強力な魔剣を使うなんて、洞窟の天井が崩れて俺達も生き埋めになってしまう〜〜!

 俺は急いで、姉ちゃんが魔剣を使うのを止めようとしたのだけれど……。


 バッシューーーーーーーーーー!


 姉ちゃんは魔剣を振り抜きながら、剣に備わっている魔法力マジックパワーに、自らの魔法力マジックパワーを上乗せして発動する……。

 今までだと、剣にはめ込んだ魔石に入っている魔法力マジックパワーのみで超音波の魔法を発動していたのに、今回は相乗効果で魔法の威力が半端ないんですけれど……。



 ドッガァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!


 ガラガラガラガラガラァーーーーー!!!!


 姉ちゃんは、クロッガー達の上方を狙ったみたいで、洞窟の天井が全て崩れて俺達も巻き添えを食らって生き埋めになった……。

 勿論、生き埋めになる前に、俺と姉ちゃんには防御魔法を発動したので助かったのだけれど、クロッガー達のもがき苦しむ感覚から、次第にそれも少なくなって消えていく……。


 俺……、姉ちゃんを止められなかった……。

 こんなに狭い洞窟で魔剣を使うなんて。


 しかも、新しい技を試したかったのか、今までとは威力が桁違い。

 姉ちゃんを見ると、少しの反省もなく満足した笑顔で俺に言う。


「試してみたかった新しい技が完成したよトルムル。

 それに、ワイガーの居た方向から闘気を感じるので、彼は無事みたいだしな。


 ところでトルムル、どうやってここから脱出するんだい?」


 ……。


 姉ちゃんてば、やっぱり後の事を考えずに新しい技を使いたくて魔剣を使ったんだ……。

 でも、1つだけ良い事があって、対魔王戦ではこの新しい技はきっと戦力になるのは間違いない。


 俺は重力魔法を使って上の方に移動する。

 もちろん、ワイガーも忘れずに。


 ボコォ!


 ボコォ!


 ボコォ!


 上に出ると、ワイガーが驚愕の目で俺と姉ちゃんを見つめている。

 何で、魔族がここに居るのかと言う目付きで!


 ボコォ!


 え……?


 ボコォって……、山頂が崩壊したのでクロッガー達は全滅したと思ったら、クロッガーだけ無傷で出て来た……。

 なんとういうしぶとさ!


 きっと、超強力な防御魔法を付与した魔石を持っていたんだ。

 ワイバーン族の王子だから、それを持っていても不思議では無い。


 クロッガーが俺とアトラ姉ちゃんを睨みつける。


「魔族が何でここに突如現れたんだ!?

 もしかして……、ニーラの息のかかった者達か……?


 ワイガー兄を助け出すために来たんだな、お前達!

 これを食らうがいいぃ〜〜!!」


 そう言ったクロッガーは再び口を大きく開けて、風の最大攻撃がである巨像鎌コロッサスサイスが俺達を襲う。

 反射的に俺は再びオッパイ型の盾を、魔法力マジックパワーを使って魔法を発動していた。


 ボヨォヨォ〜〜〜〜〜〜ン!


 盾は小刻みに震えながら、クロッガー最大の攻撃に耐えている。

 さすが〜〜、鍛えられた姉ちゃんの胸をイメージした盾だけはあるよ。


 どんな攻撃にも、超強力な弾力で耐えてくれる盾。

 何度も俺の命を守ってくれている、この盾に感謝。


 って、盾に感謝するよりも、反撃しないとマズイよね……。

 俺は魔矢を連射して四肢を狙う。


 シュ、シュ、シュ、シュ。


「グハァ〜〜!」


 四肢を射抜かれたクロッガーは苦痛でその場に倒れこんだ。


「くっそぉ〜〜!

 もう少しで……、ワイガー兄を殺して……、オレ様がワイバーンの王に……、なっていたのに……」


 クロッガーに対してこれ以上の攻撃は無意味。

 それにニーラがここに来るので、彼にその事実を知られたくは無いので強力な睡眠魔法で眠ってもらった。


 クロッガーが睡眠魔法で眠ると、重力魔法で移動して来たみんなが崩壊した山頂に到着する。

 その中に居た魔王の娘であるニーラに、ワイガーはさっき以上に驚いていく。


「ま、まさか、ニーラ様ご本人が私を助けに来てくださったのですか……。

 トルムル王の庇護の下で、安全に暮らしているとばかり思っていました。


 とすると……、ま、まさか……!?

 先程から子供とは思えない様な強力な魔法を使っているこの子は……、トルムル王……?」


 ワイガーは俺を見て畏怖にも似た目付きで見つめる。

 ニーラがワイガーに近寄って、微笑みながら優しく話しける。


「お久しぶりです、ワイガー。

 ワイガーの推測通り、この方はトルムル王ご本人です。


 魔王と決戦の時は近く、トルムル王自らここまで来てくださいました。

 既にゴブリン族は魔王に対して反旗をひるがえし、トルムル王側の陣営に入って、魔王と戦うべく待機している状態です。


 ワイバーン族も、魔王側からトルムル王側に来て欲しいと切に願っています。

 新しいワイバーン族の王には、乗り越えなければならない困難が多いでしょうが、宜しくお願いします」


 そう言ったニーラは、王族らしく優雅に頭を下げた。


「ニーラ様、頭をお上げください。

 昔からこのワイガー、正邪の判断をするのは得意です」


 そう言ったワイガーは、俺の方を見て言う。


「トルムル王、助けて頂き感謝申し上げる。

 このワイガー、世界の秩序を取り戻す為、魔王との死闘を覚悟しています。


 ワイバーン族はゴブリン族と同じく、トルムル王の陣営に参加したいと切に願っております」


 そう言ったワイガーは俺に頭を下げた。


 俺は重力魔法で空中に浮いており、ワイガーの目線と同じ位置だったので、最大限の威厳を出しながら言う。

 でも……、もうすぐ4才とはいえ、威厳を出すのが超〜〜〜〜〜〜難しい……。



「こちらこそお願いします、ワイガー王。

 魔王城に行くにはまだまだ長い道のりですが、ワイバーン族が加われば、百万の味方を得た様なものです」


 地上に立っていたら、威厳が出しずらかったよ〜〜!

 何たって、身長差が3倍は有りそうなんだもの……。


 それから俺達は魔王に関する情報をワイガー王に伝えた。

 それは闇の神アーチが召喚されていること。


 ニーラの兄姉きょうだい達がアーチの生贄になり、魔王は強大な力を得ている事をなどを。

 そして、もしニーラが捕まり、闇の神アーチに生贄にされると、更なる力を魔王が得る事などを。


 話が一段落すると、どこからか変な音が聴こえてくる……。


 キュゥーー、グルグルグルゥーーーーーーー!


「お腹空いたわね。

 ここで食事にしない?


 新鮮なミルキーモスラを持ってきてあるし……?」


 え……?

 さっきの音はエイル姉ちゃんのお腹の虫が鳴ったの……。


「そうさだよな。

 せっかくみんなで、ワイガーの為に集めてきたからな」


 そう言ったアトラ姉ちゃんは、背中から籠を下ろしてワイガーの前に置いた。


「皆さんが私の為に集めて下さったのですか……。

 それではありがたく頂きます」


 そう言ったワイガーは生きているミルキーモスラを数匹掴んで丸呑みし、美味しそうに食べた。

 それを皮切りにして、ニーラやアトラ姉ちゃん達も生きたままのミルキーモスラを、口に入れては美味しそうに食べている……。


「トルムルは食べないのかい、モグモグ?」


 戦場で長く戦っていた姉ちゃん達は生きたままミルキーモスラを食べられるだろうけれど、初心者の俺にはハードルが高すぎて……。

 こんがりと焼けたミルキーモスラなら食べれる様になったばかりなので、は、吐き気がしそう……。


 モージル妖精女王達も、ミルキーモスラを美味しそうに生のまま食べている。

 俺だけ食べれないって、落ち込みそう……。



 ゴォ〜〜!


 エイル姉ちゃんとヒミン王女が火炎魔法でミルキーモスラをこんがりと焼き始めた。

 香ばしい匂いが漂い、俺の食欲をそそる。


 そうだよ、その手があったんだ。

 早速俺は、2匹重力魔法でミルキーモスラを引き寄せて、火炎魔法でこんがりと焼いていく。


 ゴォ〜〜!


 焼きあがると1匹をウールに渡してあげる。


「ありがとう、トルムル」


 そう言ったウールは美味しそうに、こんがりと焼けたミルキーモスラを食べ始める。

 俺も一口目をかじった。


 パリィ!


 皮を香ばしく焼いたので、かじると表面がサクサクしており、中はとってもジューシー。

 外で食べる格別な美味しさに、自然と笑みになる。


 ウールも美味しかったみたいで、俺に飛びっきりの笑顔を見せてくれた。

 アダラ達乳児は、お母さん達から咀嚼されて美味しそうに食べている。


 魔王戦に向け、充実した時間をみんなと共有できてとても良いよね。

 魔王城に行くまで、これからも多くの困難にぶち当たるだろうけれど、このメンバーなら安心だ!


 でも……、外で食べる食事って、何でこんなに美味しいのだろうか……?

 それに、新鮮な空気を吸いながらみんなの顔を見ると、光って見えるのは何故なの……?


 それに……、母ちゃんが俺達を見ている様な感覚が、ほんの少しだけれど感じられた……。


読んでくれてありがとうございます。


投稿がかなり遅れてしまいました……。

これからも遅れ気味になるかもしれませんが、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 作者様、無理は絶対にいかんのです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ