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ワイバーンの第一王子

ゴーブブと別れてゴブリンの支配する地域を抜け、今度はワイバーンの支配する地域に俺達は入って行く。

ワイバーンの領地に許可なくゴブリンが入ると、殺される可能性があるとゴーブブが言っていた。


ゴブリン族とワイバーン族は歴史的に仲が悪く、今まで何度も激しい戦いが起こっていたみたい。

魔族とワイバーンは仲が悪くはないけれど、そうかと言って、仲が良い関係でもないらしい。


ワイバーン族は一応、この大陸の覇者である魔王の命令には従っているけれど、心の底から信頼していないみたいだ。

その証拠に、魔王の娘であるニーラの逃亡を手助けしたのが、ワイバーン族の第1王子であるワイガーだからだ!


ニーラは、ワイガーのその後に起こった噂話に心を痛めている。

その噂話とは、双頭山の山頂にある独房にワイガーが囚われていると……。


何故なら、ニーラの逃亡をワイガーが手伝ったのを魔王に知られたからだと。

真偽の事は判らないまでも、間違いなくワイガーは不当な扱いを受けているのは間違いなさそう。


ワイガーはワイバーンの第一王子なので、魔王も彼を殺す事まではしなかったようだ。

人間との戦いではワイバーン族の協力が必要で、その力を利用する為には、王子を殺さないでおくことが得策と推測できるからだ。


もし、ワイバーンの第一王子であるワイガーを殺すと、ワイバーン族の協力が得られない可能性が高まる。

ワイガーを殺すのではなく、生かしておく事でワイバーン族の忠誠を留めているのだろう。


不毛な土地を数日歩いていると突然景色が代わり、俺達は林に入って行く。


ワイバーンは攻撃力が高く、好戦的でもある種族なの、彼らの町に近付くにつれてみんなの緊張が高まっていく。

俺達は魔族に変身しているとはいえ、一歩間違えると戦闘になる可能性は大だからだ!


ましてや今回、ワイガー王子に会いたいとういうニーラの願いを叶えてあげたいので、王子の居場所を知りたいのだけれど、すんなりと教えてくれるとは到底思えない。

双頭山にワイガーが居るのは噂話なので、真偽を聞かなければならないのだけれど……。


林の中を通って行くと向こうに森が見えてきて、手前の方で検問所らしき建物が確認できる。


ワイバーン族は木の上に住居を構えており、森の木々を利用して町を形成しているらしい。

俺達が検問所に近付くにつれてワイバーン達が警戒心を抱き、周りから多数飛来して来る。


今にも戦闘が起こりそうな気配が漂っており、話に聞いた以上に、魔族とワイバーン族は仲が良くないみたいだ!


検問所に着く頃には、ワイバーン達は俺達の10倍の数は集まって来ており、威嚇する様な目付きで俺達を見ている。

もし彼等と戦闘になれば、非戦闘員である年取った彼らを殺さねばならず、俺達の真意ではない。


かといって、年取った彼等の攻撃力でも俺達を殺すのに十分なので、襲ってきた場合は戦うしかない……。


モージル妖精女王をはじめ、俺達に同行している妖精達も緊張しており、いつでも俺達を守る為に戦う体制を取ってくれている。

特に、モージル妖精女王の横いる頭のマグ二は闘志満々で、今にも猛火をワイバーン達に吐きそうだ……。


アトラ姉ちゃんも緊張しているみたいで、いつもの笑顔が消えている。

姉ちゃんがワイバーンの近くに一人で行くと、最も歳を取ったワイバーンが近付いて来て言う。


「魔族が、この地に何の用だ、ガァー!

返答次第では、女子供おんなこどもでも容赦はしない、ガァー!」


魔族とワイバーン達の仲が良くないのは聞かされていたけれど、魔族に対してこれ程険悪なのは何で……?

俺達の見かけは、魔族の若いお母さん達と子供、それに乳児達なんですけれど……。


事前の話し合いの中で、ワイバーンと話をする時には取って付けた様な話はやめて、本来の目的だけを単刀直入に言うべきだとみんなの意見は一致している。

アトラ姉ちゃんが少し緊張しながらも、静かに話し始めた。


「私達は以前、ワイガー王子に世話になった者達だ。

王子が双頭山に囚われていると聞いて心を痛めている。


我々の訪問目的はワイガー王子にお会いして、少しでも元気になって欲しいとの願いから、王子の好物を沢山持って来た。

許可を頂けるのなら、王子に会って元気づけてあげたいのだが?」


姉ちゃんの話を聞いたワイバーン達は、急に態度を変えて笑顔になっていくんですが……。


よ、良かった〜〜。

今にも戦いになるのではと心配したけれど、これで何とかなりそう。


「ワイガー王子の、お知り合いの方達なのか……。

これはこれは失礼をした。


それでワイガー王子の好物は何を持って来られたのかな?」


アトラ姉ちゃんは背中に背負っている籠を下ろして、予め俺達が大量に集めてたうごめく物を見せる。

年取ったワイバーンは籠の中を覗き込むと、笑顔になっていく。


でも……、ワイバーンが笑った顔って、牙が剥き出しになり、返って怖い気がするんですが……。


「おうおう、これはミルキーモスラではないか!

ワイガー王子の好物をよく知っていたな。


お前達が王子の知り合いならば、それも当然の事か。

通行を許可するので、ミルキーモスラが蠢いている内に王子に届けて欲しい。


これが許可証で、これを見せると問題なく双頭山に居るワイガー王子の所まで行ける。

気をつけて行くんだぞ」


あっさりと許可証をもらって、拍子抜け何ですが……。

でも、これでワイガー王子の所に行けそうなので良かったよ。


再び俺達が歩き出してニーラが年取ったワイバーンの前を通り過ぎると、後ろから強く呼び止められる。


「ちょっと待て!

そこの子供は魔王の娘、ニーラ王女に似ている気がする……?


魔王城に行った時に、儂は王女を見た事があってな」


ギクゥーーーーー!


ま、まさか、ニーラを知っているワイバーンがここに居るなんて……。

雰囲気からして、ニーラに良くない感情を持っているみたい。


尤も、ワイガー王子が囚われの身になったのはニーラが原因だからな。

もしバレたら、戦闘になるのか……?


ニーラのすぐ後ろを歩いていたヒミン王女が、後ろを振り向いてにこやかに言う。


「やっぱり〜〜、似てますよねぇ〜〜?

私も似ていると思うのですけれど、本人はニーラ様に会った事がないので、自覚が全くないんですよ」


「そうなのか?

よ〜〜く見ると……、少し違う気がする……。


そうだ忘れていたが、ワイガー第一王子を見張っているのはクロッガー第二王子の親衛隊だ。

何もないとは思うが、もしかしたら……。


いや、何でもない。

儂の思い過ぎしだろうて。


引き止めて悪かったな。

行って良いぞ、お前達」



ふぅーーーーー。


一瞬、冷や汗が出たよ。


ヒミン王女の機転で、何とかやり過ごせた。

流れる様な返答は、全然違和感が無いもの。


誰が聞いても、本当にしか聞こえなかったからな。

歩きながら後ろを振り向いてニーラを見ると、流石に緊張したと見えて顔が強張っている。


ニーラはまだ若いので、緊張が顔にすぐ出るみたい。

って、俺の方が若いんだった……。



ウール王女がニーラの横に移動して、ニーラの手を繋いだ。

ニーラはそれで緊張がとけたみたいで、ウールに満面の笑みを向けている。


ウールもそれに答えるかの様に、満面の笑みを浮かべた。

ニーラの笑顔は可愛いし、ウールの笑顔は超〜〜可愛いよな。


って、さっき年取ったワイバーンが言ったことが、と〜〜ても気になる……。

第二王子の親衛隊がワイガーを見張っているという事は、王子達の間は仲が良くなさそうだ。


もしかして、王位争い……?



双頭山の麓に着く頃、西の方からワイバーンの集団が飛んで来るのが確認できた。

魔法で視力を上げてあるのでよく見ると、彼らは武装している。


双頭山に向かっているのは間違いなく、異様な雰囲気を感じるんですけれど……?

聴力も魔法で上げてあるので、彼等の会話を聞いてみる事に。


「……になるからな。

オレが王になるには、兄の息のかかった者達は皆殺しにする様に。


兄は……、オレが直接始末をする!

父が亡くなったのは、兄の責任にしてな。


手筈通り、ここで散開する。

猫の子一匹取り逃がすでないぞ!」


「「「「「「「「おォォォォォォォーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」


それからワイバーンの集団は散開して行く。


え〜と……?


もしかしてこれって、ワイバーンの王が崩御したって事だよね。

そして第二王子であるクロッガーが、実の兄であるワイガーを殺すって事だ!


た、大変だ〜〜!!


このままだと、ワイガーが殺されてしまうよ。

走って行っても、山頂に行く頃には彼等の方が早いので到底間に合わない。


どうすればワイガーを救える……?

考えるんだ、考えるんだ俺!


読んでくれてありがとうございます。


トルムル、ワイガーを助けるために、どうするんでしょうね?



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