リヴァイアタンの悩み
姉ちゃん達の荷物が多いのは後で考えるとして、久しぶりに会ったリヴァイアタンに挨拶をする事に。
でも、前にあった時よりも元気が……。
「お久しぶりですリヴァイアタン。
少し元気が無いようですが……?」
リヴァイアタンは超低音の声で、悩みがあるように言い始める。
「トルムル王はいつも元気そうでなにより。
しかし儂は歳のせいか分からないが、便秘が長く続いで体調が優れない……。
もう何万年も生きてきたから、仕方ないのかも知れないが」
リ、リヴァイアタンも便秘になるんですか……?
少しでも元気づけてあげないと。
「数日お通じが無くても大丈夫ですよ。
僕の姉さん達も時々便秘になるみたいですが、元気ですから」
それを聞いたリヴァイアタンは超低音でため息を吐く。
「ハァーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そしてリヴァタリアンは諦めた様に言う。
「数日なら問題ないのだが……。
儂の場合、十数年間続いておる。
何か腹の中で詰まった感覚がして、どうにもならないのだよトルムル王よ。
とにかく、南海岸にはトルムル王達を運ぶ事は出来るが、その後は静かに余生を送りたいと思っておる」
べ、便秘が十数年間って……、思わず目が大きくなっていく俺……。
と、とにかくリヴァイアタンに乗り込んで出発しないと。
重力魔法を使って、荷物と一緒にみんなでリヴァイアタンの口の中に入って行く。
口の中は暗いので、ヴァール姉ちゃんと友達の儀式をしており、姉ちゃんの横に浮かんでいる光の妖精であるライトに言う。
「光をお願いします、ライト」
ライトが俺に笑顔を見せると、指でパッチンと音を鳴らす。
すると突然、リヴァイアタンの口の中が明るくなっていく。
「ありがとうライト」
俺がそう言うと、ライトは礼儀正しくお辞儀をして言う。
「おやすいご用です」
今回はモージル妖精王女だけでなく、姉ちゃん達と友達の儀式をしている妖精達も一緒に行動を共にする。
妖精達が近くにいると、姉ちゃん達の能力が更に上がるから。
ヴァール姉ちゃんはライトの影響で、暗い夜でも昼間の様に見えると言っていた。
リヴァタリアンの口が完全に閉じると動き出し、食いしん坊のエイル姉ちゃんが言う。
「お腹空いたわね。
少し早いけれど、お昼のお弁当を食べない?」
え、もう食べるの……?
今朝は上陸作戦があったから朝早く朝食を食べたのは事実だけれど、昼にはまだ時間があるんですが……?
「いい考えだよエイル。
私もお腹が空いていたんだ」
アトラ姉ちゃんが賛同の意見を言うと、みんなもお腹が空いていたらしく誰も反対しない……。
俺は、リヴァタリアンの便秘の事が気になって食欲が出ない……。
みんなと行動を共にしないと規律が乱れるので、仕方なく俺も弁当を食べる事に。
食べ始めても、やはりリヴァイアタンの事が気になって殆ど食べれない……。
俺の胃って、精神的に影響されるみたい。
「どうしたのトルムル、食欲が無いみたいだけれど?」
隣りで食べていたエイル姉ちゃんが言う。
姉ちゃんの弁当箱を見ると既に食べ終わっており、食べ足りない感情が伝わって来る……。
「リヴァタリアンの便秘が気になって食欲が無いのです。
残り物ですが、お姉さん食べますか?」
姉ちゃんは弾ける様な笑顔で俺に言う。
「え……!?
いいの?」
俺の返事を聞くと、直ぐに姉ちゃんは俺の弁当箱を取って食べ始める。
そして食べながら言う。
「リヴァタリアンの便秘はモグモグ、私も気になっていたけれど、治すには薬効があるルバーブが大量にいるわねモグモグ。
ルバーブジャムを20個持って来たけれど、足らないわよねモグモグ……?」
ね、姉ちゃんって、便秘になった時の為にルバーブジャムを20個も持って来たから荷物が増えるんだ……。
でも……、リヴァタリアンは巨大船ぐらいの量のジャムが必要か……?
現実的にそれだけ集めるのは到底無理なので、何か解決策は無いかな?
確か十数年前は、リヴァイアタンが魔王に心を支配された頃からだ。
もしかして……、船の残骸が便秘の原因か……?
船がリヴァイアタンに襲われていたと聞いた事があるし。
あ、そうだ!
リヴァタリアンは巨大生物なので、俺が直接現場に行って確かめると良いのでは?
直接見れば、リヴァタリアンの便秘の原因が何か解るはずだ!
それに、食後の運動にもなるし……。
リヴァイアタンに心で会話を始め、便秘を治すために直接現場に行く事を告げると凄く喜んでくれる。
「それはありがたい事だ。
トルムル王ならば、儂の便秘を治せそうな気がする」
そう言うとリヴァイアタンは、胃腸へと続く巨大な喉を大きく開き始めた。
俺が喉の奥に行こうとすると、アトラ姉ちゃんが気になったのか言う。
「トルムルはリヴァイアタンの便秘の原因を探しに行くんだろう。
弁当を食べ終わったから私も行くよ」
「多少危険があるかも知れませんが、それでも一緒に行ってくれると助かります」
俺がそう言うと姉ちゃんは頷いて、剣を腰に装着した。
そしてヴォルム達の乳児も、俺達と一緒に付いて来る。
彼女達はオッパイを飲み終えて、俺がリヴァイアタンの深部に行くので興味津々みたいだ。
アトラ姉ちゃん以外の姉ちゃん達や、ヒミン王女にウールも仕方ないなと言う顔で立ち上がる。
そしてお互いに持って来た荷物について夢中になって話しながら歩き出した。
持って来た服とか化粧品、或いは調味料や料理器具などなどを話しながら。
ね、姉ちゃん達って、化粧品までも持って来ているんだ……。
魔物相手に、化粧品はいらない気がするんだけれど……?
姉ちゃん達の話を聞いていたらめまいがしそうなので、今はリヴァイアタンの事だけ考えないと……。
光の妖精のライトも一緒に来ているので再び頼んで辺りを常に明るくしてもらう事に。
喉を通り過ぎると急に大きな空間に出る。
どうやら胃の辺りみたいで、荒れた荒野を歩いている感じ……。
リヴァイアタンは最近食べ物を食べられなかったみたいで何も無い。
更に進むと大きな洞窟が続いている。
ここは腸の部分みたいで、ここでも空洞で何も無い……。
食べ物が入って来ないので消化液も出てなくて、思っていた以上に内部は乾燥している。
これではリヴァイアタンでも長くは生きれれない……。
更に時間を掛けて奥に進むと、前方に何かが大量にあり腸を塞いでいる。
近くに行くと段々と明るさが増して、予想通り船の残骸が……。
「これがリヴァイアタンの便秘の原因か〜〜。
行くよ〜〜トルムル!」
そう言ったアトラ姉ちゃんは、いきなり伝説の魔剣である超音波破壊剣を使う。
俺が制止する間も無く……。
バッゴォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
お、遅かった〜〜〜〜〜〜!
リヴァイアタンの中で伝説の魔剣である超強力な超音波破壊剣を使うなんて、腸がズタズタになるよ〜〜〜〜!!
思わず手で目を覆っていた俺は指の間を少し開けて見るとリヴァイアタンの腸は無事で、船の残骸が細かくなっている……。
アトラ姉ちゃん、威力を抑えて超音波破壊剣を使ったんだ。
良かった〜〜。
「トルムル、何しているんだ?
手で顔を覆っても、リヴァイアタンの便秘は治らないと思うんだけれど?」
……。
ま、まさか……!
アトラ姉ちゃんが理性的に行動するとは予想外で、大惨事を思わず想像してしまった俺……。
「そ、そのう……。
は、破片が顔に当たるのを、と、止めようと……」
「ん……?
破片がこちらに来ない様に、力を制御しているから大丈夫だよトルムル。
それよりも、みんなで協力すれば船の残骸を粉々に砕けるのが早く済むと思うんだけれど?」
ね、姉ちゃんのおっしゃる通りです。
それから俺達は、船の残骸を細かくしていった。
ヴォルム達も戦闘訓練さながら、あらゆる魔法を使って船の残骸を細かくして前進して行く。
かなり先に進んでも船の残骸で腸が塞がっており、思った以上に時間が掛かったけれど、ついに俺達は肛門と思われる場所まで辿り着いた。
「ここはもしかして肛門なのか……?」
アトラ姉ちゃんがそう言ったと同時に腸が活発に動き出し、粉々にした船の残骸が背後から俺達に怒涛の如く押し寄せて来る。
も、もしかしてこれって、俺達は残骸に押し潰される……?
船の残骸が隙間なくこちらに押し寄せて来るので後には戻れない……。
どうする俺達……?
これって前門の肛門、後門のウンコで挟み撃ちだ〜〜!
ここで圧死する訳にはいかないので、魔法力を使って大きな盾を魔法で作り出して俺達を包み込む。
ドバァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
爆音に近い音と共に俺たちは肛門を通って外に押し出される。
外に出ると海面で、すぐに重力魔法を使って空中に移動する。
リヴァイアタンからは歓喜の感情が伝わって来て、こちらに顔を向けて言う。
「流石トルムル王だ!
十数年来の便秘が治った。
急にお腹が減って来たので、しばらくそこで待っていてくれ。
魚を食べたら直ぐに戻る」
そう言ったリヴァイアタンは海に潜って行った。
えーと……。
何か俺達……、リヴァイアタンに忘れているような気がするんですが……?
急にエイル姉ちゃんが、顔面蒼白で騒ぎ出す。
「わ、私達の荷物がリヴァイアタンの口の中に置きっ放しだわ!
ど、どうしましょう!?」
あ……、それだ!
でも既に遅すぎたみたいで、リヴァイアタンからは魚を大量に食べている感情が伝わって来る。
荷物は魚達と一緒になって胃の中に入っているのか……。
リヴァイアタンの歯によって荷物が粉々に砕かれて胃に移動しているのは、もはや疑いのない事実だ!
姉ちゃん達が大量の荷物を持って来た事は一瞬の内に解消されたけれど、俺のごく少ない荷物も無くなった。
喜んで良いのか、悲しんで良いのか判らない……。
でも、友達であるリヴァイアタンの便秘が治ったので良しとしよう。
姉ちゃん達を見ると、目と口を大きく開けたままになっていた……。
読んでくれてありがとうございます。
トルムル達は荷物が全て無くなり、装備している武具だけになりました……。
はたしてこれで魔王の大陸の内部まで行けるのでしょうか……?
次話もお楽しみに