海での戦い
命力絆を使ってウールとヴォルム達に指示を出す。
『二人一組になって魔物を迎え撃つ!
ヴォルムとアダラは前方方向に移動!
ジョヴンとディーヴァは右前方!
イビョークとエッダは左前方!
ヒーヴァとウール王女は右方向!
僕は左方向に向かう』
『『『『『『『りょうかい』』』』』』』』
気合の入った声で彼女達が返答すると、それぞれの方向に飛んで行く。
俺も左方向から来る角鯨に向かって急いで飛んで行く。
俺が左方向の角鯨を迎え撃つのは、もっとも頭数が多いからで、およそ30頭。
半数以上が船団に向かっているからだ!
角鯨は独特な巨大なツノを持っており、これを使って船団を襲って来たらひとたまりもない……。
俺の胴体と同じくらいの大きな魔矢の射程距離に先頭の角鯨が入ったので、魔法力を使って射る。
ドッシューーーーーーーーーーー!
バァシャーーー!
角鯨の頭に命中して、一瞬の内に魔石になっていった。
この魔矢は、魔王城攻略の為に俺が編み出した最強魔法の中の1つなので、角鯨でも一撃で倒せたので満足する俺。
その後、続けて魔矢を連射して行く。
ドッシューーーーーーーーーーー!
ドッシューーーーーーーーーーー!
ドッシューーーーーーーーーーー!
バァシャーーー!
バァシャーーー!
バァシャーーー!
あっとゆう間に4頭を魔石に変えて重力魔法で拾い上げる。
でもこの魔石って何の魔法が付与できるんだろうか……?
後で父ちゃんに聞いてみないとな。
更に俺は魔矢を連射して、角鯨を魔石に変えて行く。
あ……。
異常を感じたのか、残り数頭になった時に角鯨が深く潜ってしまった……。
気配で探ると、船団の方に深く潜ったまま移動しているんですけれど……。
ど、どうしよう……?
水の抵抗があるので、魔矢は深い所を泳いでいる角鯨を射貫けない……。
凍らす魔法は深さがありすぎるので到底無理だ!
他の魔法でも、深い所にいる角鯨を捉えることが出来ないよ〜〜!
角鯨達はどうやら、船団の真下から襲って来るみたいだ!
こんな時、リバタリアンが居てくれたら……。
ウールから緊張した口調で命力絆を使って連絡が入る。
『トルムル大変!
残り1頭になった時、深く潜られて私では角鯨を殺せない。
何とかして〜〜!』
な、何とかしてって言われても。
とっても可愛いウールから言われても、今の俺では……。
ヴォルム達も同じ様に緊急の連絡が入る!
『いっとう、ふかくもぐられて、ころせない。
おじさんたすけて!
このままだと、おかあさんたちがあぶない!』
ウールだけでなく、ヴォルム達も同じ様に俺に助けを求めて来るのに、有効な魔法を思い付かない……。
このままだと本当に船団が襲われて全滅の危険が……。
ど、どうしよう……?
考えるんだ俺!
今までだって、あらゆる困難を乗り越えて来たじゃないか!
きっと何かあるはずだ!
深い海に居る敵を攻撃するには……。
魚雷……?
そうだよ、魚雷なら何とかなるかもしれない!
でも……、手元に魔石が無いので不可能か……?
ん……?
そう言えば、角鯨の魔石がここにある。
重力魔法で集めて牽引していたんだった。
もう時間がない!
この角鯨の魔石が魚雷のイメージに合うかどうかぶっつけ本番になるけれど……。
船団が襲われる前に何かしないと、多くの人が俺のせいで死んでしまう〜〜!
魚雷のイメージをすぐに開始して、角鯨を沈めないと。
形は魚雷で、高速で海中を移動するイメージ。
そして角鯨に向かってどこまでも追いかけて、追いついたら自ら大爆発をする。
いつもの様に魔石を強化するのも忘れてはダメだ!
アトラ姉ちゃんの……、を思い出してと。
全てのイメージが完了したので一個だけ重力魔法で引き寄せて、魔法力を使って魔法を付与する。
シューーーーーーーー!
静かな音と共に魔法が魔石に付与された。
直ぐに検査魔法で調べると、思っていた通りの魔法が付与されている。
出来たばかりの魔石に付与された魔法の魚雷を、船団に一番近い角鯨に向かって投下する。
ヒューーーーーーーーーーーー。
ドッボォ〜〜ン!
魚雷は海中に入ると角鯨に向かって高速に移動して行き、そして……。
ボッワァ〜〜〜〜〜〜!
魚雷が爆発して海面が盛り上がる。
さっきまで泳いでいた角鯨を探ると生命反応が消えていなくなっていた。
よ、良かった〜〜!
これで何とかなるよ。
沈んだ角鯨の魔石は回収できないけれど、緊急事態なので仕方がない。
俺は早速、牽引している角鯨の魔石に魚雷の魔法を付与して、次から次へと海に投下して行く。
逃げ回る角鯨達だけれど、魚雷の方が早いみたいで確実に捉えて爆発が起きている。
船団の近くで魚雷が爆発して海が盛り上がっているので、その波が船団に届き、あの巨大船が大きく揺れている……。
でも……、何とか持ちこたえているみたいでこれで何とかなりそうだ。
え……?
角鯨の生命反応が1頭づつ無くなって行くのだけれど、残り1頭の生命反応が船団の真下まで来ている……。
魚雷は全て爆発したみたいで、もう俺にどうする事も出来ないのか!
たった1頭逃しただけなのに、それでも船団にとっては破壊的な攻撃力を持っているのは間違いない。
真下からくるので、姉ちゃん達でも角鯨を迎え撃つのは不可能だ!
ど、どうする俺!
あ……。
角鯨が上昇を開始しているよ!
最後の最後で、たった1頭の角鯨によって船団が壊滅状態になるのか……?
いや、まだ諦めてはいけない!
まだチャンスがあるはずだ!
考えろ俺!
考えるんだ!
そうだ!
海面近くに上がって来た角鯨なら、絶対零度の魔法で、海面と一緒に凍らす事ができるよ。
それに、それぞれの船には巨大蛸足の魔法を付与してある魔石が設置されているから、一回の攻撃なら攻撃できるし!
よし、何とかなるかもしれない。
俺は角鯨が上昇している気配をたよりに急降下して行く。
船団の先頭にいる船に角鯨は狙いを定めているみたいで、真下から急上昇しているのがわかる。
絶対零度の魔法を発動するはタイミングが大事だ!
早かったら角鯨は氷漬けにならないし、遅かったらツノが船を突き破って木っ端微塵になって沈没するの可能性もあるからな。
俺は神経を集中して、角鯨の動きだけを追っかける。
船の真下から角鯨が近寄って来て、巨大蛸足の射程距離に入って巨大なタコの足が現れる。
角鯨はそれでも上昇を止めようとはせず、回転を加えながら更に上昇して行く。
巨大蛸足が角鯨に襲いかかったけれど、回転するツノでズタズタになっていく……。
何という破壊力!
まさか、あの巨大蛸足でも撃退出来ないなんて……。
でも、上昇速度だけはかなり落ちており、さっきよりは絶対零度の魔法を発動するタイミングが分かりやすくなったよ。
角鯨が海面近くに来ているので海水が盛り上がり、 巨大船も上へと上がって行く……。
今だ〜〜!!
俺は魔法力を使って絶対零度の魔法を発動する。
ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜。
銀色の大きな塊かたまりが、角鯨が目掛けて行く。
塊の通った後には、ダイアモンドダストが太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
カッキィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
大きく盛り上がった海面が凍りつき、その中には角鯨の姿が……。
今まさにツノが船底を突き破ろうとした直前で、ほんの少し魔法の発動が遅かったら間に合っていなかったよ〜〜。
船は前方に偏り、凍った海面の上を滑って行く……。
シューーーーーーーー!
ドッボォ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
巨大な船が飛沫を上げて海に再び戻って行った。
船内では人々が後ろを振り向いて、氷漬けになった角鯨を見て大歓声が巻き起こっている。
「「「「「「「「「「ワァーオォーーー!!!!」」」」」」」」」」
ウールとヴォルム達もそれを見て、感心した様な感情が伝わって来る。
ウールが俺が俺の方に飛んで来て言う。
「ありがとう、トルムル。
流石だね!」
お、俺達が、勝ったんだよね……。
ウールに言われて……、始めてこの戦闘に勝った実感がしてきた……。
今回は本当に危機一髪だったけれど、な、何とか勝てたよ。
魔王側も必死みたいで、この先も手強い相手が続きそうだ。
俺は身の引き締まる思いに、武者震いが起きたのだった。
読んでくれてありがとうございます。
次話もお楽しみに。