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最強の防具

 第1王位継承権のある各国の王子や王女などで構成されている後継者会議が、俺の国で開かれている。

 どこに居ても思っている相手と心で会話出来る魔石を渡して説明をし終わると、普段は冷静沈着な王族達が興奮して行くんですけれど……。


「「「「「「「ワォー、マジで!。トルムル王は凄いわ!。こんな魔石が欲しかったんだよ。これが有れば、後方支援も楽になるわ。奇跡だ〜〜!。ほ、本当にそんな事が出来るの?。信じられない……。トルムル王は常に我々を前進させてくれるよ」」」」」」


 え〜〜と……。

 みんな魔石を受け取ってとっても喜んでいるみたいだけれど、会議が進行出来ない……。


 でも、これで世界が一丸となって魔王と対峙する体制が整ったのは事実。

 それに、各国から魔王の大陸に進撃する精鋭部隊が俺の国に既に到着しており、5日後の出航を前に更に鼓舞させたのは間違いない。


 家族と離れ離れになる精鋭部隊の人達にこの魔石を使ってもらえれば、心で会話が出来るので精神的に良い効果が出る筈だ。

 精鋭部隊のリーダー達にもこれを渡す予定なので、残された家族と心で会話を定期的に出来る。


 やっと彼等が静かになったので、威厳のある……、と〜〜っても可愛い声で俺は会議の続きの話を再開する……。


 ◇


 会議が終わって城の中にある父ちゃんの店に行くと、臨時休業の看板がでている。

 中に入って行くと、父ちゃんと姉ちゃん達、それとヒミン王女が真剣になって防具を作成していた。


 この防具はヴォルム達ので、未知の世界である魔王の大陸に行くから最強の物を作っている。

 姉ちゃん達は誰もが父ちゃんの仕事を学生の頃に手伝っていたので防具作りに参加し、娘達の命に直接関わるので真剣そのもの。


 ヒミン王女も、学園で防具作成の授業をトップの成績だったので姉ちゃん達と一緒になってヒーヴァの為に作っている。

 でも……、みんな苦労しているのが素人の俺から見ても判るんですけれど……。


 何故なら、材料は何とヒドラの鱗!

 この世で最も硬く、しかも軽いので防具にするには最強であるのだけれど、加工が超難しいと父ちゃんが言っていた……。


 ヒドラの妖精でもあるモージル妖精女王が、歴代のヒドラの中で最も大きく偉大だったヒードド王の亡骸から調達をしてくれた。

 ヒドラ達しか知らない秘密の墓所で、どうやら墓を掘り返したらしい……。


 そこまでして俺達に協力をしてくれるなんて、嬉しい限りだ。


 ヒドラ達もアンゲイア司令官の大部隊と合流する予定で、間違いなく右翼を任せられる戦力。

 人間側に味方してくれる魔物達も日増しに増えており、俺の公平な考えに賛同してくれている。


 人間の住んでいる大陸には昔から魔物も住んでいたけれど、彼らに一定の土地を与えて和平を申し込んだ。

 これは魔物達も大喜びで、人間達との争いはそれから殆ど無くなった。


 でも……、人間側と魔物側に多少悪い奴がいて規律を乱すんだけれど、各国の治安部隊が対処に当たっている。


 そう言えば、元賢者の長であるリトルを石から元の人間に戻した。

 彼は強力な魔法を使うので、今は猫の手も借りたい程なので復活させたという訳だ。


 復活させた時、涙を流しながらチカンはもうしませんと俺に誓っていた。

 でも……、正直言って……、またやる気がする……。


 だから、男だけの部隊に配属するようにアンゲイア司令官には伝えた。

 でも……、まさか……、リトゥルは男には手を出さないよな……。


 ふとアトラ姉ちゃんを見ると、怪力の姉ちゃんでさえ裁断に苦労している。

 他の姉ちゃん達も苦労しており、ヤスリで少しづつ切っている。


 ヒドラの鱗は超〜〜硬いので、ハサミでの裁断は不可能で、残る手段はヤスリのみ。

 木に穴を開けるノミやノコギリさえも全く通用せず、まるで金属を切っている感じ……。


 父ちゃんを見ると、やはり同じ様に苦労している。

 ヒドラの鱗は非常に高価なので、父ちゃんでさえも過去に一度だけしか経験がないと言っていた。


 近くに居たシブ姉ちゃんを見ると手に血豆ができて、そこから血が出ている……。


「まただわ。

 これで何度目かしら……」


 そう言ったシブ姉ちゃんは自ら血豆の治療している。

 姉ちゃんは治療師なので手の皮が薄く、何度も血豆を作っては治しているみたい……。


 シブ姉ちゃんと視線が合い、懇願する様に俺に言う。


「これ、何とかならないかしら……?

 父さんとアトラ姉さんでさえも苦労して裁断しているし、私は血豆を作っているだけ……。


 裁断も殆ど進まず、力仕事は私には向いていないみたい。

 トルムルだったら何とかしてくれそうな気がしているのだけれど?」


 え……?

 姉ちゃんから突然のご指名を受けても、俺はシブ姉ちゃん以上に力が無いんですけれど……。


 俺が裁断を手伝うのは、姉ちゃん以上に無理なのは火を見るより明らか。

 でも……、シブ姉ちゃんが血豆を作っているので、何とかしてあげたいのだけれど……。


 俺の魔法は強すぎて、ヒドラの鱗を真っ二つにするのは朝飯前なんだけれど、細かな裁断をする魔法は思いつかない……。

 鎌鼬かまいたちの魔法は直線しか切れないので、複雑に切り刻む裁断には無理がある。


 もし……、裁断に適した魔法が有るとすれば新しくイメージするしかないのだけれど……。


 え〜〜と。

 前の世界で硬い物を複雑に切る方法は確かあった様な気がする……。


 そうだ!

 ウオータージェットで細かく切る事が可能だよ。


 でも、ここはもっと詳しく思い出さないと失敗する……。

 ヒドラの鱗は予備が無いので、失敗が許されないからだ!


 確か硬い金属を切る時は……、研磨剤を水の中に入れて高圧で細い口から出すんだったよな。

 理屈は簡単だけれど、高圧で細い口から出すのが難しそう。


 それに、出た水を循環するイメージも必要だし。

 周りに水が飛ばない様にしないと、部屋中が濡れる可能性もある……。


 後は……、そうだ!

 裁断する線の上を、正確に細い口が移動するイメージも必要だし、ある程度の空間も必要なので重力魔法で切る素材を浮かすイメージも必要だ!


 全てのイメージが出来たので、父ちゃんの店にある魔石を重力魔法で取り寄せて、魔法力マジックパワーを使って魔法を付与する。


 シュゥーーーーーー!


 静かな音と共に魔石に魔法が付与され、直ぐに検査魔法で調べると、イメージ通りの魔法が付与されていた。

 出来上がった魔石をシブ姉ちゃんに渡すと、笑顔で俺は言う。


「この魔石を裁断する上に置いて、魔法力マジックパワーを注ぎ込んで、開始の合図を送って下さい。

 姉さんの魔法力マジックパワーを使いながら、空中でヒドラの鱗を裁断をしていきますから」


 シブ姉ちゃんは最初、俺の言ったことが直ぐには理解出来なかったみたいでキョトンとしている。

 横に居たヒミン王女が、シブ姉ちゃんの持っている魔石を凝視しながら言い始める。


「トルムル王は凄すぎます。

 ヒドラの硬い鱗を裁断出来る魔法を魔石に付与出来るなんて!」


 シブ姉ちゃんも理解出来たみたいで、魔石を強く握りしめて言う。


「この魔石で、この超硬いヒドラの鱗が裁断出来るのね。

 やってみるわよ!」


 気合のこもった言葉を言ったシブ姉ちゃんは、魔石をヒドラの鱗に置いて、魔法力マジックパワーを使って開始の合図を送る。

 魔石とヒドラの鱗が宙に浮き、超高圧の水流が裁断する線を切り始める。


 シャァ〜〜〜〜〜〜〜〜!


 水が循環を初め、思っていた通りの効果で満足する俺。

 何事が起きたのかと父ちゃんをはじめ、他の姉ちゃん達も集まって来て、大きな目を更に大きく見開いて裁断するのを見守っている。


 しばらくすると全ての裁断が終わり、元の作業台の上に魔石とバラバラになったヒドラの鱗が置かれた。

 父ちゃんが専門家らしく、裁断されたヒドラの鱗の検査を初める。


 検査を終えた父ちゃんは、呆気に取られた様に俺を見て言う。


「まさか……、こんなに硬いヒドラの鱗が水だけで切れるなんて……。

 しかも、寸分違わず裁断されている。


 更に、こんなに短時間で切れるとは私の常識をはるかに超えているよ。

 ありがとうトルムル、これで孫達の防具が完璧に出来上がるのは間違いない!」


 そう言い終えた父ちゃんは、わざわざ俺の方に歩いて来て抱き上げてくれる……。

 父ちゃんに抱かれるのは久しぶりなので、俺も小さな腕を使って父ちゃんの首を強く抱いた。


「トルムル、少し苦しいけれど……。

 でも、こうして抱いて上げるのは久しぶりだったね」


 そう言った父ちゃんは、更に強く俺を抱きしめてくれる。

 父ちゃんの優しさを久しぶりに体で感じる事が出来て、俺も更に、更に強く首を抱いていったのだった……。


読んでくれてありがとうございます。


久しぶりに父さんに抱かれて、トルムルは幸せそうでしたね。

でも……、少しだけお互いに強くだき過ぎている気はするのですが……。


次話もお楽しみに。

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