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ヤールンサクサ王女の悩み

 スノートラ王女と、ヤールンサクサ王女達とは一時的なお別れになる。

 ガルドール王を倒す為にこの国に来て、戦争で荒れた国の再建に今まで俺は尽力を尽くしてきた。


 その甲斐あって、独立した国として立派にやっていけるレベルまで回復する。

 有能な宰相も見つかり、この国は益々発展するだろう。


 という訳で、今夜は俺達の送別会が開かれている。

 この国の主だった人達と、新設された新しい部隊の面々も全員参加している。


 更に、隣国のヤールンサクサ王女も招待しており、王女からの一通の手紙から、ガルドール王の野望を打ち砕くキッカケになったので特別に招待したとういう訳だ。


 でも……、ここにはウールも居るので、いつもの様に2人の間で火花が散ると思っていたけれど……?

 大広間では、俺に好意を寄せているウールとヤールンサクサ王女がなごやかに会話をしている……。


 な、仲良くなっているよあの2人……。


 それに……、この国の王女であるスノートラ王女も加わって、時折こちらを見ながら、3人で時々クスッと笑いながら会談をしている……。


 魔法で俺の聴力を上げてあるのだけれど、大賢者を目指したい俺は、聞きたい気持ちを抑えて我慢した。

 でも、何でウールとヤールンサクサ王女が急に仲良くなったのか、全く理解できない俺……。


 今回、ヴォルム達も参加しているのだけれど、公の場で重力魔法を使うのを禁止しているので、お母さん達に抱かれている。

 何故なら、ヴォルム達が重力魔法を使うのは極秘で、戦闘能力が高いのを魔物側に知られたくない為だ。


 彼女達にとっては、初めての正式な晩餐会とダンスパーティーになるので、興味津々で彼方此方あちらこちら見回している。

 ここに居る老若男女が全員礼装しているので、それに目が釘付けになっているみたい。


 やはり女の子達なので、服装に興味があるようだ。

 でも……、彼女達は乳児なんだよな……。


 ヴォルム達は礼装はしていなく、ちょっとだけ綺麗なドレスを着ているだけ。

 仕方ないよね、日増しに体が急成長しているから、高価な礼装は作れないし。


 俺も体が急成長しているので、今の年齢に合う礼装を持っていなかったのだけれど、ダンスパーティーで最初に踊る事が決まってから急いで作ってもらった。

 注目されるのは嫌いだけれど立場上……、やらなくてはいけないみたい……。


 送別会も終わりに近付いてダンスを始める時刻になると、礼装している俺はスノートラ王女の所に行き、ダンスを申し込みに行く。

 王女も礼装しており、今まで俺が見たことがないくらいに可憐だ……。


 でも、スノートラ王女の両横にいる2人の王女もそれぞれ別の可憐さで、人形を見ている様で見惚れるほど……。


 2人の王女はウールとヤールンサクサ王女で、何故か3人の王女達の仲がとっても良い……。

 俺に好意を抱いているスノートラ王女が加わったので、更に悪化するのではと思っていたら予想を大きく裏切り……、3人の王女達は仲がとっても良い……。


 何か……、3人の王女達の間で密約を交わしたのではと、俺は推測している……。


 おっと……!


 可憐な3人の王女達を交互にもっと見ていたいと思ったけれど、多くの人達が俺がスノートラ王女を最初にダンスに誘うのを待っている。

 この国のスノートラ王女と俺がダンスを始めないと、皆んなが踊れないからだ。


「僕とダンスをしてくれますか、スノートラ王女?」


 俺はそう言うと、正式なお辞儀で王女を踊りに誘う。


「はい、トルムル王。

 誘ってくれて、ありがとうございます」


 そう言ってスノートラ王女は、優雅に王族独特な挨拶をする。

 こうしてダンスパーティーが始まり、俺はダンスを習って3年以上も経つので、それなりに踊れるようになった。

 スノートラ王女とのダンスが終わると、ヤールンサクサ王女とウール達も踊りに誘う。


 ウールとは背が殆ど変わらないので普通に踊ったけれど、スノートラ王女とヤールンサクサ王女は俺よりも背がかなり高いので、重力魔法で俺は浮いて背丈を合わせて踊る……。


 仕方ないよな……、俺まだ3才だし。

 後12年もすれば、確実に2人の背丈を追い越している筈で、俺の未来は明るい……、と思う。


 ◇


 ベッドで寝ていると、異常を感じて起きる俺……?

 どうやら……、誰かが横のバルコニーで悲しんでいるみたいだ……。


 気になったので重力魔法でバルコニーに移動すると、ヤールンサクサ王女が……、隣のバルコニーで星空を見ている……?

 聡明で強気な王女だと思っていたけれど、王女からは悲しみの感情がひしひしと伝わって来る。


 このままだと気になって寝れないので、失礼だと思ったのだけれど、隣のバルコニーから優しく声をかける。


「今晩は、ヤールンサクサ王女。

 満天の星空で、ゴブリン座がよく見えますね」


 突然、俺が声を掛けたのでびっくりする王女だったけれど、急に笑顔になって言う。


「今晩は、トルムル王。

 本当に、今夜はミノタウルス星も光り輝いて見えます」


 そう言った王女はミノタウルス星を指し示す。

 沈黙が2人の間に続いた後、心配そうに王女は俺に言い始める。


「ところで王は、心配事があって眠れないのでしょうか?

 失礼とは思ったのですが、こんなに夜遅く起きていているのは、お身体に悪いと思ったので」


 え〜〜と……。

 本当の事を言った方が良いよな。


「ヤールンサクサ王女が悲しみの感情を持っているのが判って、確かめる為に起きて来たのです。

 何か悩みがあるのならば、僕で良ければ聞きますが?


 話せば王女の気が楽になって、グッスリと眠れると思うのです」


 ヤールンサクサ王女は超驚いて、俺を凝視している。

 俺が人の気配や感情を感じるのに驚いたみたいだ。


「王の能力には限界が無いようで、とても驚きました。

 王は、私の為に起きて来られたのですね。


 本当にすみませんんでした。

 感情をもっと抑えていれば、こんな事にはならなかったのに……。


 それで……、とても言い難いのですが、王が魔王の大陸に行った時、ウールバルーン王女は同行しますし、スノートラ王女は命力絆ライフフォースボンドで繋がっているので、いつでも王と心で会話ができます。


 しかし、私には王と連絡を取る手段がありません。

 手紙を書いても、魔王の大陸に届く筈もないので……」


 そこで王女は、うつ向いて黙ったままになる。


 そ、それって、どう答えていいのか、全く判らない。

 そこまで俺の事を……。


 ウールと、スノートラ王女は今にも死にそうだったから命力絆ライフフォースボンドをしたのであって、こうなる事を予想してした訳でない。

 ヤールンサクサ王女に命力絆ライフフォースボンドをする訳にもいかないし……。


 良い、解決策はないのか……?


 前の世界だと、スマホで連絡が簡単に取れるのに……。

 この世界ではスマホが無いので不便だよな。


 まてよ……。


 もしかして……。


 今思いついた事が実際に出来るのならば、長年の懸案を解消できるかも……?


 重力魔法で俺のカバンから魔石を呼び寄せ、ほんの少しの魔法力マジックパワーを使って、魔石に思っているイメージを魔法で付与する。


 シュゥーーーーーーー!


 小さな音と共に、魔石に魔法が付与される。

 すぐに検査魔法を使って調べると、思った通りの魔法が付与されていた。


 やったね、これでヤールンサクサ王女の悩みを解決出来るよ!


 しかも、今まで連絡に時間の掛かっていた各国との連絡も解消される。

 まるで、瓢箪ひょうたんから駒みたいだ。


 横のバルコニーに居るヤールンサクサ王女は、突然俺が何を始めたのか興味津々。

 俺はなごやかな笑顔と共に、重力魔法で出来上がったばかりの魔石を渡す。


「その魔石は遠く離れていても、心で会話が出来る魔法を付与してあります。

 会話をしたいと思う人を心に描いて会話をすると、王女の魔法力マジックパワーを少し使って会話が出来ます。


 これで僕が遠く離れていてもいつでも会話が出来ますし、同じ魔石を持っている人達や、命力絆ライフフォースボンドを僕がした人達とも会話が出来ます。

 この魔石を後継者会議のメンバーに配ろうと、先程考えつきました」


 それを聞いた王女は驚き過ぎて、魔石を見つめたまま動こうとはしない。


 突然顔を上げ、王女本来の笑顔になって言う。


「トルムル王、本当にありがとうございます。

 私の悩みを一瞬で解決してくれた事に感動すると共に、これで各国同士の連絡が瞬時にできるのには本当に驚きました。


 神の様な技で、この様な魔法を魔石に付与出来るなんて、有名な付与師である王のお父様の血を受け継いでいると思いました。

 本当にありがとうございました」


 そう言った王女は、深く頭を下げた。


 ……?


 ん……?


 誰かが……、感動している気配が……?

 気配は、バルコニーの真下からしてくる。


 確かこの下にはエイル姉ちゃんとエイブが寝ていた筈だけれど……。

 意識をバルコニーの下に伸ばすと、エイブの気配がする。


 どうしてエイブがこんな真夜中に、下のバルコニーに居るんだ……?

 俺はエイブに話しかける。


「エイブ、眠れないのか?」


『トルムルおじさんと、ヤールンサクサおうじょのかいわをきいて、しょうらいの、さんこうにしようとおもって、ここにいるの。

 へやのなかできくよりも、バルコニーできいたほうが、よくきこえるから」


 え〜〜!

 エイブはまだ6ヶ月児なのに、将来の参考にするって……、マジなの……?


 しかも、大人の会話を聞いていたなんて。

 って、俺はまだ3才だったのを忘れていた……。


 俺は強い口調で命力絆ライフフォースボンドを使って言う。


『エ・イ・ブ!

 人の話を立ち聞きしてはダメ!


 それに、夜も遅いんだから、早く寝なさい!』


『ごめんなさい、もうしません。

 おやすみなさい、トルムルおじさん』


 そう言ってエイブは部屋の中に入っていった。

 横を見ると、ヤールンサクサ王女が再び驚いていて言う。


「エイブちゃんが心で言ったのが、この魔石を通じて直接頭の中に届いたのでとっても驚きました!

 しかもエイブちゃんが、あんなに話せるのが凄いです!」


 エイブ達とも話せるって、予想外の効果……。

 この魔石を父ちゃんに渡せば、俺や姉ちゃん達と会話が出来るし、孫であるヴォルムやエイブ達とも会話がいつでも出来るので良い土産が出来た〜〜!


 父ちゃんに会うのが、今から楽しみ〜〜!

 それに、ヤールンサクサ王女に本来の笑顔が戻ったし、少し夜遊び……をしたけれど、この魔石で世界のネットワークが完成だ〜〜!


読んでくれてありがとうございます。


トルムルって、モテ過ぎですよね……。


次話もお楽しみに

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