表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/195

そこは、瘴気の世界

 新設部隊の作戦会議中に、突然懐かしい気配を感じて重力魔法で窓を開けると、ヒドラの妖精でもあるモージル妖精女王が入って来る。

 単独で魔王の大陸の調査をしていたモージル妖精女王が帰って来たのだけれど、余りにもみすぼらしい姿になって驚く俺……。


 出発した時はポッチャリとしていたのに、容姿が激変して痩せ細っていたので俺は思わず手を差し伸べると、倒れ込むようにフラフラと舞い降りる……。

 3人とも精根尽き果てた様相で、あの食いしん坊のモージル妖精女王が、こんなにも痩せているのを見たのは初めてだ!


『食べ物を……、先に頂けないでしょうか?』


 力のない声で、俺の手の上で言うモージル妖精王女。

 ヴォルム達は初めて見るモージル妖精王女に対して、興味津々の目付き。


 モージル妖精女王のために昼食を早める事にして、給仕係にその事を言う。

 給仕係は、美味しそうな昼食を持って来てくれた。


 内密の話がまだあるからと、給仕係の人達には部屋から退出してもらう。

 妖精達は普通の大人達は見えないのだけれど、幼少期には見え、ヴォルム達もモージル妖精王女が見えるみたいだ。


 ヴォルム達はモージル妖精王女に質問があるみたいで、今にも嵐のような質問攻めを始めそう。

 でも母親達からは、相手が了解しないと質問をしてはいけないと、硬〜〜く禁止されている。


 何故なら、ヴォルム達は見るもの聞くもの全てが新鮮に映っており、「何で?」の質問が止まらないからだ!

 俺も経験があるのだけれど、彼女達の質問に答えると、その答えから更に「それは何で?」と別の質問で聞いてくる。


 知識を吸収するには効率的な方法だとは思うのだけれど、質問された方は何度も何度も、何度も何度も質問に答えなければ成らなくなり、とっても時間が掛かってしまい予定していた事が出来ない事がしばしば起こるから。

 普通の子でもよくあるみたいだけれど、ヴォルム達は特に俺が『祝福の魔法』を使ったから知能の発達が早く、質問の量が桁違い!


 子供の頃はスポンジが水を吸う様に知識を得ると言われているけれど、この子達は知識を吸収するのにブラックホールみたいに、いつまで経っても終わらなくて、朝から晩まで『何で?』を繰り返す……。

 しかもこの子達は7人もいるので、質問の量が半端では無い!


 と言う訳でヴォルム達はお母さんから、相手の迷惑となるので相手が了解しないと質問をしてはいけないと硬く、硬〜〜く禁止されている。


 モージル妖精王女はヴォルム達に見られているのに気が付いて、目の前に食事が山の様にあるのに食べようとはしない……。

 モージル妖精王女は横にいるマグニとドゥーヴルに、妖精王女らしく威厳に満ちた言葉で言い始める。


『さ、マグニとドゥーヴル、一緒に食事を始めましょう』


 それを聞いたマグニとドゥーヴルは驚きを隠せない様子で、モージル妖精王女を穴が開くくらいに見つめて言う。


『俺達も……、食べていいのかモージル?』


『勿論ですよ。

 いつも一緒に食べているではありませんか?』


 ……?


 いつもだとモージル妖精王女だけが食べており、3人一緒に食べる事は滅多に無い。

 さらに言えば、食いしん坊の王女はお腹がはち切れんばかりに食べるので、横の2人が吐き気を起こすのが普通の状態……。


 しかし今回は、ヴォルム達が見ているので妖精王女としての威厳を出したいみたいだ。

 ヴォルム達を通じて、モージル妖精王女が食いしん坊だと言う噂を、どうやら広めて欲しくないみたい……。


 3人はそれから、いつも以上に上品に出された食事を食べ始める。

 しかし、遂にヴォルムが我慢しきれなかったのか、モージル妖精王女に軽く会釈をし、つぶらな瞳で目を輝かせながら心の声を使って言い始める。


『はじめまして、モージルようせいおうじょ。

 わたしはヴォルムです。


 ヴァール母さんから、れきしてきに、ゆうめいなモージルようせいおうじょのことは、いろいろきいています。

 しつもんがあるのですが、いいでしょうか?』


 少量づつ食べていたモージル妖精王女は、ヴォルムを見ると軽く頷く。

 そして妖精王女らしく、威厳に満ちた雰囲気を最大限に出してゆっくりと言う。


『初めまして、ヴォルムちゃん。

 何なりと質問して下さい。


 お母様のヴァールさんには、色々とお世話になっていますから』


 色々とお世話って……、ヴァール姉ちゃんが作った料理を食べていた事かな……?

 それ以外は、全く思いつかない……。


 おっとそれよりも、ヴァールの質問の数を制限しないとモージル妖精王女が食べれなくなる気がする。

 は、早く忠告しないと〜〜!


『ありがとうございます。

 まおうのたいりくに、いっていたのですよね?


 それで、どうしてフラフラして、いたのですか?』


 モージル妖精王女が俺の方を見て、言っても良いのかと目線で聞いてくる。

 俺もその事を知りたかったので、軽く頷いて了解の合図を送った。




『闇の神アーチの影響で、瘴気しょうきが魔王の大陸には蔓延しており、清浄な気が必要な私達にとっては生命力を奪う気でしかなかったのです。

 徐々に生命力を奪われていきながら、私達は調査をしました。


 その甲斐あって、魔王の大陸の詳しい調査が終わったのですが、フラフラになってしまったと言う訳なのですよ、ヴォルムちゃん』


 瘴気しょうきだって!?


 モージル妖精王女の予想外の言葉に、ヴォルムの次の質問が頭に入らない……。


 瘴気が魔王の大陸に蔓延しているという事は、人間にも悪影響があるのは明白だ!

 今回は陽動作戦をする予定で、アンゲイア司令官率いる大部隊と、俺が率いる新設の部隊の2面攻撃を考えていた。


 でも……、瘴気を無効化するには防御魔法が必要になる……。

 新設部隊は人数が少ないので、問題なく瘴気を無効化する防御魔法を俺は発動できるけれど、問題はアンゲイア司令官率いる大部隊の方だ!


 俺が居れば瘴気を防御できる魔法を大部隊に発動できるのだけれど……。

 何か、良いアイデアは無いのか……?


 そうだ!

 魔石に瘴気を防御する魔法を付与すれば、魔法力マジックパワーを供給するだけで、常に防御魔法が働くはずだ!

 でも……、普通の魔石では大部隊に供給できるだけの魔法を付与できない……。


 そんな大きな魔石、今まで見た事が無いし……。


 いや、待てよ!

 過去に見た事があるよ、俺!


 しかも、俺が王妃様に預けている頭ぐらいある大きな魔石が!

 2年以上も前に、俺が倒した万年眠亀テンサウザンドスリーピングタートルの巨大な魔石だ!


 父ちゃんが言うには、この魔石は町ごと防御できると。

 それに、王妃様に預けてある巨大な魔石はもう一つある。


 それはクラーケンの魔石で、超強力な攻撃魔法を付与する事が出来る。

 当時の俺はレベルが低かったので、それらの魔石に魔法を付与するのが出来なかったけれど、今の俺なら問題なく出来る筈だ!


 俺達にはこの二つの魔石があるので、アンゲイア司令官の大部隊は有利に戦える。


 ふと気がつくと、ヴォルム以外の姪達もモージル妖精王女に質問しており、王女は全く食べる事が出来ないでいる……。

 でも、横の2人は笑顔で食事を続けており、こんな光景を見れるとは思いもしなかった……。


 この新設部隊には、モージル妖精王女も同行するので、ヴォルム達が王女を見ている限りは、この微笑ましいこの光景が続きそうだ。

 モージル妖精王女と目が合って、俺に助けを求めているのが判ったけれど、日頃の食事ではマグニとドゥーヴルが食べれなかったので丁度良いかも……?


 2人が食べているので、体には栄養が補給されて、健康面では全く問題ない。

 それよりも、2人に食事をさせない王女の性格の方が良くないので、これを機会に悪習を直してもらわないとな。



 それに、ヴォルム達の質問はこれからの俺達に関係のある魔王の大陸に関する事が多い。

 俺も気になった箇所を、モージル妖精王女に対して、嵐の様に質問を繰り返したのだった……。


読んでくれて、ありがとうございます。



次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ