新設の部隊に参加するのは……?
「攻撃開始!」
俺がそう言うと、7人の魔法使い達が7本の大木に向かって一斉に鎌鼬の魔法を発動する。
ビユゥー!
ビユゥー!
ビユゥー!
ビユゥー!
ビユゥー!
ビユゥー!
ビユゥー!
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
7本の大木が豆腐でも切る様に、何の抵抗もなく切り刻まれて行く。
思っていた以上の成果に満足する俺。
普通の鎌鼬は相手の皮膚を切るのが精一杯だけれど、彼女達は難なく大木を切り刻んでいる。
既に彼女達は、並みの魔法使いよりも数段上のレベルを達成しているのは間違いない!
でも、あまり褒めすぎるのも良くないので、少し苦言を含めて7人の魔法使い達に言う事に。
身内に甘くなると、戦場で彼女達の危険が増すと思ったからだ!
「まだまだだね。
鎌鼬の魔法を極めると、どの様になるのか見せるので、お手本にする様に」
「「「「「「「よろしく、おねがいしまーす!」
姪達と、ヒミン王女の娘さんに見つめられたら思わず顔が緩んでくるので、無理やり強面にする。
だって、と〜〜っても可愛いんだもの〜〜!
って、強面が崩れない内に、早く魔法を発動しないと……。
俺は神経を右手に集中して、ほんの僅かな魔法力を使って、鎌鼬の魔法を発動する。
ビュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
ザッッックゥゥゥーーー!
鋭い風の音と、細かく切る音が聞こえたかと思うと、大木がサイの目状に細かく切り刻まれて地上に降り注いでいる。
しばらくすると、サイの目に切られた木片が山の様に積み上がっていた。
「「「「「「「すごーい!」」」」」」」
彼女達は羨望の眼差しで俺を見ているので、思わず顔が再び緩みそうになって行く……。
でもここは威厳を出さなければならないので、彼女達を無理やり睨んで言う。
「これくらいの鎌鼬の魔法を使わないと、魔物達は強敵だから反撃を食らう可能性があるので、日々の訓練を怠らない様に。
それでは、オッパイ休憩に入る」
「「「「「「「ハァーイ!」」」」」」」
7人の魔法使い達は、それぞれのお母さん達の方に重力魔法で高速で移動して行く。
そして彼女達はオッパイを飲む為に、待ち構えていたお母さん達に抱かれる。
おっと、姉ちゃん達のオッパイを見る訳にはいかないので、視察に来ていたアンゲイア司令官の方を向いた。
でも……、アンゲイア司令官は石になったみたいで、呼吸さえもしていないみたい……。
アンゲイア司令官は驚きすぎると呼吸が止まる珍しい人なのだけれど、今回は更に石の様に全く動いていない……。
「まずまずの出来だと思うのですが、司令官の意見をお願いします」
えーと……。
俺が質問したので、やっと動き出したよ。
「はぁー、はぁー、はぁ〜〜〜〜!
こ、こんなにも長く息を止めていたのは初めてです!
し、失礼しました!
これほど衝撃はトルムル王がガルドール王を倒した以来で、もしかしてそれ以上に驚いたのかもしれません。
何故なら、一番年上のヴォルムちゃんの9ヶ月を筆頭に、最年少であるエッダちゃんが6ヶ月なのに、彼女達の戦闘能力がこんなにも高いので驚いています。
一個師団の戦闘能力を、たった7人の乳児達で出来るなんて!
予想を遥かに超える戦闘能力で、魔王の大陸に進撃する時には、是非必要な人達であるのは間違いないです。
それに、お母さん達が賢者ですので、更にこの部隊の戦闘能力は計り知れない程になっています」
うん、それは言えている。
身内として甘く評価しているのではなく、客観的に見てもこの子達の戦闘能力は驚異的だ!
魔王の大陸に進撃が決まった前回の後継者会議から、新しい部隊の創設が必要だと考えて、俺は試行錯誤を繰り返していた。
彼女達を部隊に参加せるのには問題があり、それはオッパイ休憩が一日の内に何度も必要な事……。
まだ幼いので、お母さんのオッパイは心身共に健全に成長する為には絶対に必要な条件だ!
でも幸いな事に、彼女達のお母さんは俺の姉達とヒミン王女で、たった1人でも一個師団の戦闘能力を有している。
だから戦場でも、安心してオッパイを彼女達にあげる事ができる筈……。
って、俺の意見ではなくて、姉ちゃん達が口を揃えて言っている。
乳児を戦場に出すのは危険だからダメだと俺が言っても、姉ちゃん達とヒミン王女の決心は硬い。
ガルドール王を倒した時の魔王側のダメージが大きいので、この機会を逃すと永久に魔王を倒す機会が回っては来ないと姉ちゃん達は言う。
魔物達は鼠算式に子孫を増やす事が出来るので、数年すると再び数で圧倒されてしまうからだ!
この子達は幼いとは言え、戦闘能力は普通の大人では足元に及ばないほどだから、それを使わない手はないと姉ちゃん達は言う。
そして姉ちゃん達と一緒に幼い子供達が行動を共するのなら、合わせた総合戦力はかつてない程高くなるからと。
魔王の大陸に進撃する機会は今を置いて永久にチャンスが巡って来ないので、人類の未来がかかっているこの戦いを有利に進める為には、幼い子であろうと最大限に生かしたいと。
それに、この子達の未来も掛かっているので、自らの力で成し遂げるのも必要ではないかと。
俺はそれを聞いて判断に迷っていた。
客観的に見てもらう為に、アンゲイア司令官の意見を聞いて最終判断をしようと思って今回の演習になったのだけれど、予想を遥かに超える戦闘能力を目の当たりにしたアンゲイア司令官は度肝を抜かれたみたい。
やはり彼らの戦闘能力は、魔王の大陸を攻略するのに必要不可欠だ!
俺は最終的に今、彼女達の参加を認める決断を決めた!
ふと何かかが急速に接近してきたのでその方を向くとヴォルムが重力魔法を使って俺の方に近付いて来る。
俺とアンゲイア司令官との間で話し合われた結果を早く知りたい為だ。
心配そうな顔で、ゆっくりと俺の周りを回り始めたヴォルム。
再び強面の顔を俺は無理やり作って、威厳に満ちた声でヴォルムに言う。
「アンゲイア司令官と協議した結果、何とか、やっと、ギリギリ、部隊に参加できる最低の戦闘能力は有していると認められた。
よって、ヴォルム達が新設される部隊に参加する事を正式に認める!」
って、威厳に満ちた声で言ったけれど、俺は3歳児なのでいつも通りの可愛い声しか出せない……。
早く声変わりしたいよ〜〜。
ヴォルムを見ると不安そうな顔から満面の笑みに変り、いきなり俺に抱き付いて心の声で言う。
『トルムルおじさん、だいすき〜〜。
みんな〜〜、わたしたち、ぶたいのさんかが、みとめられたよ〜〜!』
『『『『『『『ヤッター!』』』』』』
他の乳児達も重力魔法で一斉に飛んで来て、俺に抱き付いて来るんですが……。
あまりにも嬉しいので顔がゆ、緩んで行く〜〜!
読んでくれて、ありがとうございます。
次話は、魔王の大陸に長期に単独潜入していたモージル妖精女王が、トルムルに報告をする話です。
ヴォルム達もそこに居合わせ、何やら起きそうな……?
次もお楽しみ。