死闘……?
「娘を拐かしたトルムル王もこれで終わりだ!
一瞬のうちに燃え尽きるがよい!」
そう言ってテューポーンから、超超高温の猛火が俺に向かって来る。
いつものオッパイ型の盾を魔法力を使って、瞬時に魔法を発動して作り出す。
でも今回は、いつもの弾力に加えて耐火煉瓦のイメージも加える。
こうすることによって、テューポーンの超超高温の猛火にも耐える事が出来る、筈……。
盾が現れて小刻みに震えている。
思っていた通り耐火煉瓦のイメージを盾に加えたから、超超高温でも盾は溶けず、更に、熱がこちらには伝わって来ない。
でも周りは高温すぎて、景色がぼやけて見えている。
そのぼやけた景色をよく見ると、山林火災が大規模に発生。
って、よく見ると山林火災ではなく、山の表面が溶けて流れ出している。
何という高温!
さすがに俺の周りも熱くなってきたので、ブリザードの魔法を発動して周りを冷やし始める。
ふ〜〜。
これで、完璧にテューポーンの猛火を防ぐ事が出来たよ。
しばらくして猛火が収まると、テューポーンが驚愕の目で俺を見ている。
「そ、そんなバカな事があるのか!?
儂の猛火を浴びて、平然として空中に浮かんでいるのはあり得ない事だ!
あのヒドラでさえ、鱗が焼けただれて敗走したというのに……」
ま、猛火を防ぐ耐火煉瓦のイメージを他の人が出来ないだけ。
それ以外は特別な事はしてないんですけれどね……。
「儂はトルムル王を少し侮っていたのかも知れぬ。
これなら瞬殺でお前を殺せるだろう」
テューポーンがそう言った途端、下から無数のヘビが牙を剥いて一斉に襲って来る。
テューポーンから離れたヘビ達は巨大だけれど、動きがとっても遅い……。
それに、どの方角からヘビが襲って来るのかが気配で分かるので、重力魔法を使って簡単にかわし始める。
巨大なヘビが怖い顔をして俺に襲って来るけれど……。
よく見ると……、どのヘビも可愛い顔をしている。
メデゥーサの頭の上にいるヘビ達と日常を一緒に過ごしてきたので、彼等の顔が可愛く感じているよ俺……。
ヘビに飲み込まれた時、脱出するのに1匹殺してしまったけれど、今思えば可哀想な事をしたよな。
魔矢を使わなくても脱出できたのに……。
「あははは!
トルムル王も、ヘビ達の猛攻には為す術がが無いようだな」
えーと。
ヘビに愛情を感じているので、殺せないでいるんですけれど……。
このまま逃げているだけだと時間が過ぎるだけだ。
ここは何とかして打開しないと……?
そうだ!
岩石巨人を出して、ヘビを遠くに投げ飛ばせば良いのでは……?
投げ飛ばしたら彼等は多少は怪我をするかもしれないけれど、命を奪うほどでは無い筈だ!
俺は巨大なヘビ達の猛攻を避けながら、俺に似た岩石巨人を魔法で五体作り出す。
でも俺似なので、二歳児の頭でっかちな手足の細い岩石巨人……。
でもこの岩石巨人で、クジラを海から城まで運んだ事が有るので見かけ以上に力はあるのは実証済み。
俺は意識を集中して五体の岩石巨人の操作を開始する。
テューポーンの腰ぐらいの高さの岩石巨人達だけれど、ヘビ達を遠くに難なく投げ飛ばし始める。
ビュー〜〜!
ビュー〜〜!
ビュー〜〜!
ビュー〜〜!
ビュー〜〜!
襲って来るヘビ達を掴んでは投げを繰り返していると、いつのまにかヘビ達は全て飛ばして、ここには居なくなっていた。
「おのれ〜〜、トルムル王〜〜!
ヘビは飛ばされたが、そんな岩石人間では儂を倒せないぞ!」
テューポーンの言う通りで、俺もそう思う。
大人の周りに、五人の二才児が戦いを挑んでいるようなものだからな……。
アトラ姉ちゃん似の岩石巨人だったら、もしかしたら倒せたかもしれない。
しかし、二度と姉ちゃん似の岩石巨人は出さないと決めたから。
でも万が一って事もあるし、あわよくば俺似の岩石巨人達で倒せるかも……。
俺は五体の岩石巨人を同時に操作して、テューポーンに猛攻をかける。
グシャ!
テューポーンの足によって、瞬時に一体の岩石巨人が潰された。
ってか、テューポーンて足がちゃんと二本あるんだ……。
メデゥーサ達のように、ヘビが居なくなったらその部分が無いのかと思っていたよ。
あ……、またメデゥーサの頭からヘビ達が離れて、髪の毛が無いのを想像してしまった……。
グシャ!
グシャ!
グシャ!
グシャ!
し、しまった〜〜!
メデゥーサの事を考えていたら、残りの四体も潰された〜〜!
「わははは!
トルムル王も大した事はないな。
オモチャの様な岩石人間で、儂を倒そうとしたからだ!」
テューポーンを倒すために岩石巨人達を魔法で作り出した訳でないので、壊されても予定通り。
魔矢でテューポーンに攻撃を開始しても良いのだけれど、メデゥーサ達の父ちゃんだから使いたくはないんだよな。
それよりも、お腹が空いてきたな……。
太陽を見ると昼が過ぎて、おやつの時間ぐらいに太陽が傾いている。
このままだと体力が続かないので、ウールが作ってくれたオニギリを食べないとやばいかも。
魔法力はまだあるし、気力も十分なんだけれど、二歳児なので体の持久力が余りない。
筋トレを毎日しているのだけれど、やはり食事は決まった時間に食べないと体力が続かないよ。
でもテューポーンの見ている前で、オニギリを食べる事は出来ないよな。
どこか安全で、ユックリと食べれる場所は……?
あ、あった〜〜!
テューポーンの耳の中だ〜〜!
家ぐらい大きな耳の穴なので簡単に俺は中に入れる。
それに、テューポーンの指は耳の穴よりも大きいので俺を捕まえる事は出来ない筈だ。
テューポーンが手を使って俺を捕まえようとしているのを避けて耳の中に入る。
入り口はとても大きいのだけれど、奥に行くに従って急に狭くなって行くのは何で?
壁に岩が貼り付いていて狭くなっている。
でも、ここなら安全にオニギリを食べる事ができるよ。
丁度いい岩があったので、腰掛けてウールの作ってくれたオニギリを食べ始める。
モグモグ。
やっぱりオニギリって素朴だけれど美味しいよね。
それに、腹持ちがいいので戦いの途中で食べるには最高だよ。
「トルムル王よ、何処にいる?
近くで気配は感じるのだが、いくら探しても見えない……」
えーと。
オニギリを食べ終わるまで黙っていないと、ユックリと食事が出来ないよ。
テューポーンの耳の中に居ると分かると、何かしてきそうなので。
オニギリを食べ終わると、俺はテューポーンに言う。
「僕はテューポーンの耳の中に居るよ」
「な、何だと〜〜!
いつのまに儂の耳の中に入ったんだ〜〜!」
テューポーンてば、相当怒っているみたい。
何かをするみたいで、前かがみになっている。
バサァー。
バサァー。
バサァー。
木の枝をもぎ取る音が聞こえて来るんですけれど、これって……。
もしかして俺を捕まえる為に、耳掻きを作っているとか……?
ゴワァー!
何かが耳の穴に入って来ている……。
どうやら大木の枝を取って、中心部分だけ耳の中に入れているみたいだ。
でも、耳の中には岩が沢山あるので俺の所まで大木は届かない。
大木の出し入れを繰り返しているテューポーン。
「イタタタ!
何故だか知らないが、耳の中にゴミが沢山詰まっておるわ。
これを取り除かないと、トルムル王を捕まえる事が出来ぬ。
しかし、なんという痛さだ!」
え……?
この巨大な岩みたいなのがゴミって、もしかしてこれは耳ク……ソ?
うっそ〜〜!
こんなに巨大でカチカチにかたまているって、テューポーンてば、何年も耳掃除してないの……?
いやいや、こんなに巨大で岩みたいになっているって事は、何千年も耳掃除をしていないのか……?
も、もしかして……、何万年……?
それに腰掛けて俺はオニギリを食べたんだよな。
食べる前知っていたら、絶対に座らなかったのに……。
あ〜〜あ、テューポーンてば無理矢理こびり付いている岩を取ろうとするから、あちこちから血が出て来ているよ。
「イ、イタイ〜〜!
ゴミを取るだけなのに、こんなに痛いとは!
しかし、ごみを取ってトルムル王を早く捕まえないと、奴が何をしでかすか分からん。
しかし、こんな激痛は生まれて初めてだ!」
耳掃除をしているだけなのに……、激痛って……。
何だか、テューポーンを倒す方法が浮かんできたんですけれど。
この一番大きな岩を取ろうとすると、テューポーンは激痛に襲われるかな……?
重力魔法を発動して、一番大きな岩を外に移動を開始する。
「イタタタ!
トルムル王め、耳の中で攻撃を開始しおったわ。
イタタタ!
こ、これはたまらん!」
テューポーンてば、大げさ。
単に大きな岩……、を外に出そうとしているだけなんだけれど。
でも、長年掃除していなかったからしっかりと壁にくっ付いていて取れないよ。
もっと重力魔法を強めるしか無いよね。
テューポーンに攻撃しているよりも、耳掃除をしているような展開になってきた……。
ベリィ、ベリィ〜〜!
「イタタタァーーーーーーー!!
トルムル王よ、もうやめてくれ〜〜!」
一番大きな岩を取って、耳の外に重力魔法で出す。
取った後には血が吹き出ていて、とても痛そう。
血の海になっては俺が困るので、止血の魔法をイメージを手の中でる作って、魔法力を使い魔法を発動すると、出血が徐々に止まってくる。
「トルムル王よ、儂の負けを認めよう。
だから、耳の中で攻撃はもうしないでくれ」
マ、マジですか!?
耳掃除をしただけなのに勝ってしまったよ。
でも、耳掃除は続けてしないといけないよね。
ここで終わったら中途半端で後味が悪い……。
不衛生だし、何かの病気になるかもしれないし。
それに、こんなに大きな岩が耳の穴を塞いでいたら、よく聞こえないと思う。
「分かりました、テューポーン。
もう攻撃はしないですが、耳の中の岩を全部出したいので、協力して下さい」
「攻撃はやめてくれるのだな。
それで、協力とは?」
「耳の下に手を出して下さい。
そこにゴミを落としますから」
「よく分からんが、痛くしないでくれよトルムル王よ。
これでいいかな?」
「ちょっとだけチクっとしますが、我慢して下さい」
「チクっとだけだな……。
お手柔らかに頼むぞ」
無理やり剥がすと激痛に襲われるみたいなので、麻酔の効果がある魔矢をイメージで作り出す。
そして剥がす岩の周りに魔矢を打ち込んで行く。
それが終わると重力魔法で岩を剥ぎ取り耳の外に出した。
出血があると、血を止める魔法も発動する。
これを何十回も繰り返して、やっと耳の中がキレイになった。
でも、反対側もあるよな……。
耳の外に出ると、テューポーンの手の中には掻き出された岩が家ぐらいの量になっている……。
流石、最強最大の魔物の耳ク……ソだ!
「儂の耳の中にこんなにもゴミが在ったとは驚きだ!
申し訳ないがトルムル王よ、反対側の耳の中もお願いできまいか……」
……。
予想通り、テューポーンが手の上にある岩を見て、反対側の耳掃除もお願いしてきたよ。
俺は反対側の耳に入って、巨大な岩の耳ク……ソを取る戦いに精神を集中していった……。
読んでくれてありがとうございます。
今回も話が長くなってしまいました……。
やっとテューポーンを倒すことができましたね。よかった、よかった。
思わぬ方法でしたけれど……。
次話もお楽しみに。