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ウール王女のオニギリ

 スノートラ王女との朝食を終えると、テューポーンと戦うための準備を始める。

 姉ちゃん達やヒミン王女、そしてさっき『トルムル、大っ嫌い!』と俺に言ったウールに、命力絆ライフフォースボンドで単独で戦う事を告げる。


 今回ばかりは単独で戦わないと、近くに味方がいたら気が散って本来の力が出せないので。

 それと、魔法力マジックパワーが足らない時の為に、みんなには待機してもらう事に。


 アトラ姉ちゃんが言う。


『今回の戦いは、トルムルに任せるしかないか……。

 人類の命運を掛けた戦いに、可愛い弟1人に任せるのは心苦しいのだけれど。


 私達の魔法力マジックパワーが必要な時は、いつでも使ってくれ。

 最も、それしかトルムルを応援する方法は無いのだけれど……。


 無事に戦いが終わったらトルムルと一緒に、また温泉に入りたいな。

 それまでは、お願いだから死なないでくれよ!』


 え〜〜〜〜!


 アトラ姉ちゃんと一緒に温泉ですか……?

 2年前に、姉ちゃん達と一緒に入った温泉……、が脳裏に蘇る。


 温泉に入った時、目を瞑って姉ちゃん達を見ない様にしたのだけれど、抱かれていたので俺の体に柔らかな物が当たって……。

 姉ちゃん達は、俺を変わりがわり優しく抱いてくれたのだけれど……。


 でも今は、アトラ姉ちゃん達と一緒に温泉に入りたくはありませんて、姉ちゃん達を安心さす為には口が裂けても言えない!

 それにここは、姉ちゃん達に何か言わないといけない場面……。


『アトラ姉さん、ありがとうございます。

 きかいがあったら、一緒に温泉に入りましょう』


『温泉、楽しみしているよ。

 じゃーな、トルムル』


 言いたくないのに、言ってしまった……。

 もし……、もし、その時になったらどうしよう……?


 ウールの事だけでも頭が一杯なのに、また悩む事が増えた……。

 それに、ウールはまだ怒っているみたいで、聞こえているはずなのに何も言ってくれなかった……。


 俺って、女難の相があるのかな……?



 出撃準備を整えてペガサスの居る馬屋に移動すると。ウールがそこで待っていた……。

 やはりまだ怒っているみたいで、俺を睨みつけている。


 でも……、何でウールがここにいるの……?


「はい、これ!」


 何かの包みを俺に渡して、ウールはすぐに去って行く。

 言い方が強く、明らかに怒っている。


 でも、この包みって何?

 恐る恐る包みを開けると……。


 横で見ていたペガサスが、包みの中を覗き込む。


「美味しそうなオニギリですね。

 オニギリにはきっと、ウールバルーン王女の心がこもっていますよ。


 でもどうして、怒った様にトルムル王にオニギリを渡すのでしょうかね?」


 それは、俺が聞きたいのですけれど……?


 確かに美味しそうなオニギリ……。

 単純だけれど、俺のお気に入りでもある。


 素朴で飽きのこない美味しさ。

 オニギリが俺のお気に入りだと、ウールは知っているけれど……。


 柔らかく握ったオニギリが俺の好みで、今まで何度も作ってくれたウール。

 今回も見た限りでは、俺好みに柔らかく握ってあるみたいだ。


 まだ相当怒っているのに、オニギリを俺の為に作ってくれるウールの心境がよく分からない……。

 テューポーンとの戦いが終わったら、スノートラ王女に相談してみようかな?


「失礼ですが、トルムル王でも最強、最大と言われているテューポーンと戦うので悩むのですね。

 真剣な表情で一心不乱にテューポーンの事を考えているみたいでしたから」


 ……。

 ペガサスまで勘違いをしているよ。


 でも、ウールの事で真剣に悩んでいましたなんて言えないし……。

 ってか俺、テューポーンに勝つ気でいるよ。


 最大、最強の魔物なのに……。


 でもハッキリ言って、負ける気はしない。

 何故なら、テューポーンが吐く超超高温の火炎を防ぐ方法が分かるから。


 問題は、どうやって倒すかだよな……?


 ◇


 ペガサスに乗って目的地に行く途中、眼下にヒドラ達が敗走しているのが見えてくる。

 数十頭いるヒドラ達はテューポーンによる超超高温の猛火によって体表を覆っていた鱗が焼けているのが見えた。


 モージル妖精女王からの報告以上のダメージをヒドラ達は受けている。

 でも、命に関わるまでのダメージまでいっていないとモージル妖精王女が言っていたので、彼等の治療はテゥーポーンを倒してからでも間に合う。


 それよりも、遥か山脈の向こうに山が移動しているのではないかと思うほどの巨大な何かがこちらに向かっている。

 視力を上げてよく見ると、みんなから聞かされていたテゥーポーンそのもの。


 テゥーポーンは大きな山ぐらいの大きさで、下には巨大な蛇が沢山いてうごめいている。

 それに背中からは、山ほどの大きな翼が左右に生えており、優雅に羽ばたいて空中を移動中。


 ペガサスと別れてテューポーンの近くに移動して行くと、俺に気が付いて彼は周りを見回す。


「誰だ!?

 強大な魔法力マジックパワーを持った者が近くにいるはずなのに見えない……?」


 え〜〜と。

 テューポーンの目の前に浮かんでいるんですけれど、俺って小さ過ぎて見えないみたい……。


 それにしてもテューポーンって凄い声!

 言葉を普通にはっしているだけなのに、強風が吹き荒れている。


「僕はトルムル。

 貴方の目の前に浮かんでいますよ」


「何だと!」


 テューポーンはやっと俺を認識出来たみたいで、超驚いている。

 そして、巨大なヘビ達が口を開けて、鋭い牙を俺に見せながら下から迫って来ているんですが……?


「お前が娘達をかどわかしたトルムル王か!?

 豆粒みたいな小さな体なのに、底知れぬ魔法力マジックパワーを感じる!?」


 テューポーンてば、勘違いしているよ〜〜。

 メデゥーサ達を拐かしたのではなくて、魔王によって彼女達が支配されていただけなのに……。


 それに、底知れぬ魔法力マジックパワーを持っているとテューポーンから言われて嬉しく思う俺って変かな?

 でも、テューポーンも底知れぬ魔法力《マジックパワーを持っているのを感じる。


 これは戦いが長くなりそう。

 戦いの途中で、ウールからもらったオニギリを食べないと、体力が続かないかもな。


 これを予測して、怒っているのも関わらず、ウールは俺にオニギリを作ってくれたのかな。

 トルムルは嫌いだけれど、死んでは困るって事……?


「儂を前にして、噂に聞いていたトルムル王もビビって何も出来ないみたいだな。

 所詮は人間で、儂の敵ではない」


 え〜〜!

 テューポーンてば、また勘違いしているよ〜〜!


 ウール王女の事を考えていただけなのに……。


 パクゥゥーーーー!!



 オット〜〜!

 下から迫って来た巨大なヘビに、丸呑みされた〜〜!


 防御魔法が発動しているので潰されることは無いんだけれど、ここに居るわけにもいかないしな。


 俺の太さぐらいある魔矢を、魔法力マジックパワーを少しだけ使って魔法を発動する。


 バッシュ〜〜!


 簡単にヘビの体を魔矢は突き抜けて穴が空き、そこから俺は脱出する。

「よくも、儂の可愛いヘビを殺したな!」


 テューポーンはそう言うと口から猛火を吐き、俺に襲いかかる。

 テューポーンとの戦いが、いよいよ始まった。



読んでくれてありがとうございます。


いよいよ次話は、最大最強のテューポーンとトルムルが戦います。


はたしてトルムルはテューポーンに勝てるのでしょうか……?

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