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作戦会議だったけれど……。

 港での大火災から既に今日で10日過ぎており、情勢は一気に変わっていた。

 東海岸からウール王女が統括している軍がヤールンサクサ王女のいる城に到着して、西海岸の軍を統括しているアンゲイアの軍と合流。


 デルバード国では、魔王の大陸から来た大型船を俺が焼いたのがきっかけで、ガルドール王は犯人が領地内の反勢力だと断定して人間を信用しなくなる。

 その為、主だった軍の組織の上部にいる人達を軟禁し、全て魔物に変えたとの事。


 これに人々が猛反発して国境を閉鎖しているにも関わらず、多くの一般の人達と、兵士達が国境を越えて来ている。

 彼等から内部情報が手に取るように分かり、今後の作戦に有利になりそう。


 作戦会議が始まって、ヤールンサクサ王女が司会役を務める。


「10日前に起きた船の大火災は、魔物を運んで来た外洋船の殆どが焼けて乗船していた魔物達が焼け死んだのですが、放火をした犯人が誰なのか未だに分かっていません」


 ヤールンサクサ王女がそこまで言うと、ウール王女とアンゲイア司令官が俺の方を見る。

 目付きからして、俺がやったのではと内心では思っているみたい……。


 勘のいい2人は流石で、軍を率いているだけのことはあるよな。

 ウール王女は超〜〜可愛いし、アンゲイア司令官は多くの男が貢ぐくらいの、超が付くほどの美人。


 でも内面は2人とも全く違っており、全体の状況から正確に本質を捉える能力が高い。

 今回の船の大火災も、殆どの人が反乱分子によるものと思っているけれど、2人は正確な答えを導き出している。


 実際、俺が放火した張本人なんだけれど、口が裂けても今回は真実を言えない。

 何故なら、言った途端に姉ちゃん達から説教の嵐が来るから……。


 とういうわけで、2人が俺に向けた視線を笑顔で答えるだけ。

 俺がしていませんよ、という顔付きで……。


「犯人が誰だか判らないのですが、私達に有利になったのは間違いありません。

 脱走兵達の情報によりますと、船の火災によって魔物の数が半減しました。


 更に私達に好都合なのが、人間の兵士を今回の戦いに参加させないと、ガルドール王が決定したとの情報を先程入手しました」


 あ……、それは知らない最新情報。

 人間同士が戦わなくていいのなら、思う存分戦えるよな。


 人間同士で戦うと、どうしても情けが生まれる。

 それに、向こうの兵士達だって好きで俺達と戦う訳でないからな。


 ギィーーー。


 会議室のドアが開いて、リトゥルが入って来る。

 元賢者の長である彼に、俺は単独での偵察を頼んでいたのに、帰って来るのが早すぎる……。



 軍の中に彼がいると、若い女の子達が彼に警戒心を抱いて落ち着かないので、遠ざける目的の為に遠くに追い出したのだけれど……。


 ポコッ。


 ピカァーーー!!


 会議室の中で何かが出る音が聞こえたかと思うと、そこから光が放出され……。


 な、なんと、光が出た方を向くと……。

 リトゥルが石になっている〜〜!


 更に、メデゥーサの頭からヘビのニッキが飛び出ていた……。


「これニッキ!

 会議に参加している人を石にしてはダメでしょう!」


 メデゥーサがニッキに注意したけれど、ニッキは猛烈に反発した顔で言う。


「だってメデゥーサ、こいつメデゥーサのお尻を触ろうとしたんだよ。

 見てよ、彼の手の位置を!」


 メデゥーサがリトゥルの手の位置を見ると……。


「キャー」


 小さな驚きの声をあげて、メデゥーサがその場を離れた。


 ま、まさか……、あのメデゥーサが、可愛い悲鳴をあげるなんて……。

 も、もしかして、男性に対する免疫が全然ないの……?


 思わず目が点になって行く俺……。


 石になったリトゥルの手の位置を確認すると、今まさにメデゥーサのお尻を触ろうとしている直前だった……。

 そういえばリトゥルは、メデゥーサが若い女の子に化けているのを知らなかった筈。


 もし知っていたら、間違いなくお尻に触ろうとはしないだろう。

 あの超有名なメデゥーサに、痴漢行為をする勇気のある男はこの世には存在するはずが無いからだ!


 今回は完全にリトゥルの方が悪くて、ニッキは直前にチカンを止めたということだよな。

 でもリトゥルって、今まで何どもチカンに対して強烈なしっぺ返しを食らっているのに、全く反省していない。


 ある時なんか、アトラ姉ちゃんに触ろうとして遠くにぶっ飛ばされた事があったのに……。

 そう思うと、根性だけは凄いよな。


 見習いたくは無いけれど……。


 ポコッ、ポコッ、ポコッ、ポコッ、ポコッ……。


 残りのヘビ達148匹が一斉に出て来て、 また一斉に話し出す……。


「「「「「「「石になってる〜〜。誰なのこいつ……。あーあ、メデゥーサに……。スケベな手で……。誰、このスケベ……。手がイヤラシイ……、当然の報いだよ……、キモ……」」」」」」」


 ドサァ〜〜。


 ヘビ達が話し始めると、誰かが倒れた音がしたのそちらの方を振り向くと、ヤールンサクサ王女が床に倒れている〜〜!

 え……、何で倒れたの?


 俺はすぐに重力魔法を使って飛んで行くと、王女を抱き抱える。

 気絶している王女の顔も、か、可愛いよな……。


 って、緊急時に何考えているんだ、お、俺は……?


 2才児の俺が、9才児の王女を抱きかかえて苦労していると……。


「私が代わります、トルムル王」


 そう言ったのはアンゲイア。

 孤児院の経営に携わっていたので、9才児を抱き抱えるのが上手うまい。


「王女はヘビを見て気絶したのだと思われますよ、トルムル王。

 この頃の女の子は、ヘビが苦手な子が多いので。


 王女に関してもたぶん同じで、何ら心配する必要はありませんよ。

 ベッドでしばらく寝たら、自然に目覚めるでしょう」


 そう言ったアンゲイアは、ヤールンサクサ王女を抱き抱えて会議室を後にした。

 結局会議はこの騒ぎで終わりになり、後日という事になる。


 メデゥーサが俺に近寄って来て言う。


「この人はどうしましょうか?」


 グライアイの1人が、すぐにリトゥルを指差して言う。


「そのまま石にしといた方がええじゃろう。

 幸せそうな笑顔じゃし、わしらの様な若い女子おなご達が安心して過ごせるからのう」


 ……?

 わしらの様な若い女子おなごって……。


 き、聞かなかった事にしよう。


 グライアイに言われて、石になったリトゥルの顔を見ると鼻の下を伸ばしている。

 元に戻しても、同じ事を繰り返すのは間違いない。


 牢屋に入れるのも有りだけれど、このまま戦争が終わるまで石にした方がいいかもな。

 石にするとその期間の寿命が伸びるし、痴漢行為が出来ないしな。


 それに、本当に幸せそうな笑顔だし……。


 


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