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ヤールンサクサ王女からの手紙

ヤールンサクサ王女から手紙を受け取って、姉さん達に軍を動かす様に要請するのですが……。

「ヤールンサクサ王女からの、てがみですか?」


 俺は思わずアトラ姉ちゃんに聞き返す。

 9才になった王女とは親しい関係ではあるけれど、手紙をもらった事が今まで一度も無い。


 手にとって手紙を見ると、丁寧な文字で書かれてある。

 儀礼的な文章から始まって、中ほどまで読み進めると思わず2度読みする。


『南の国が数ヶ月前に国境を閉ざしました。不穏な動きを始めているようで心配でなりません。

 密偵を数名送ったのですが、帰ってこないのです。


 トルムル王は公務でお忙しいと思いますが、一度こちらに来て確認していただけないでしょうか?

 南の国は、トルムル王が賢者のおさになった時に反対した、王の国なのです』


 何か引っかかる……?

 国境を閉ざすということは、その国の経済が落ち込んでしまうのは間違いない。


 そこまでして国境を閉ざすには、何かの目的がなければするはずがない。

 でも、その目的とは何だ……?


 もしかして……?


 セイレーンが東の国に攻めて来ない理由と関係がある気がする。

 国境を閉ざす利点は、内部の情報を外に漏らさない為だよな。


 とすると、国の内部で俺たちに知られてはいけない事を始めたって事か?

 その意味することは、もしかして……。


 俺は命力絆ライフフォースボンドを使って、緊急連絡を姉ちゃん達をはじめ、ヒミン王女とウール王女に言い始める。


『ヤールンサクサ王女から手紙をいただいたのですが、その中で、みなみの国がこっきょうをとざしたと書かれてありました。

 セイレーンが東の国をおそったのは、ようどうさくせんで、本命は南の国だと思われます。


 軍の半分を、南の国にいどうして下さい。

 きんりんの国にもししゃを送って、ようせいをお願いします。


 まおうぐんは、南から攻めて来るので』


 ……?

 あれ、みんなから返事がない。


 何で?


 アトラ姉ちゃんを見ると、驚きながらも困惑した表情になっている。

 何か言いたいみたいだけれど、言いにくそう……。


「アトラ姉さんは、何か僕に言いたいことがあるようですが……」


 アトラ姉ちゃんが俺を真剣に見て、ゆっくりと言い出した。


「昨日分かったのだけれど、実は私は戦闘に参加出来ない体になったみたいなんだよ。

 時間があったら、トルムルに言おうと思っていた所だったんだ」


 え……?

 アトラ姉ちゃん、何を言っているの……。


「それが……。

 妊娠したと分かったんだよ、トルムル」


 えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

 姉ちゃんが、に、妊娠したって〜〜〜〜!!


「妊娠しているヴァールに相談したら、みんなも妊娠したと報告があったらしい。

 だから、みんな今回の戦いには行けないんだよ」


 な、何と!

 アトラ姉ちゃんだけでなくて、他の姉ちゃん達もなの?


「エイル姉さんもですか?」


 俺はそう言ったけれど……。

 まさか……、エイル姉ちゃんは……、まだだよね……。


「エイルも妊娠したと、今朝連絡が来たよ。

 ヒミン王女も同じく、妊娠したと連絡があった」


 ……。

 驚きのあまり……、声が出ない……。


 これって、凄く喜ばしい事だよね。


 アトラ姉ちゃんを見ると少し残念そう。

 戦闘に参加出来ないのが悔しいみたい。


 でも、こんな時代だからこそ姉ちゃん達には丈夫な赤ちゃんを生んで欲しい。

 いつの時代でも、赤ちゃんが生まれるのは喜ばしい事だから。


「それでトルムルに、みんなからお願いがあるんだけれどいいかい?」


「お願いって、何でしょうか?」


「私達のお腹の中にいる赤ちゃんに、ヴァールの赤ちゃんしたように、祝福の魔法をして欲しいんだよ」


 え……?

 俺で良ければ、祝福の魔法は喜んでするけれど……。


「僕で良ければよろこんでします。

 でも……、その子達も、ふつうの人生を送れない気がするのですが、それでも良いのですか?」


「それはみんなで話し合ったよ。

 魔王の脅威が世界を脅かしている時代なので、能力の高い子供が沢山必要だという結論にみんなの意見が一致したんだ。


 そもそも、私達の子供達が普通の人生をあゆむとは思われなくて」


 それは言えてる。

 姉ちゃん達の彼氏は、みんな第1王位継承者達。


 生まれて来た赤ちゃん達は間違いなく、各国の王子や王女達になるのは間違いない。

 上に立つ者のさだめを背負っており、普通の人生は歩めない。


 俺はそれから、命力絆ライブフォースボンドを使ってみんなにいう。


『アトラ姉さんからききました。

 姉ちゃん達とヒミン王女、にんしん、おめでとうございます。


 みんなのたいないにいる、大切な赤ちゃんに、これから祝福をします』


 それから、みんなが大騒ぎになっていく。

 誰が何を言っているのか……。


『トルムル、ありがとう、それで……。そう言うと思っていたわ、でね……。トルムル王、ありがとうございます、戦闘に……。悪いわねトルムル、これから……。ありがとう、トルムル……。妊娠したら、結婚の話……』


 ……。


 妊娠したのを俺に言いにくかったみたいで、アトラ姉ちゃんが全てを話した事で、関が切れたようになっている……。


 それから俺は、姉ちゃん達やヒミン王女の所に意識を飛ばして、体内にいる赤ちゃんに祝福の魔法を発動した。


 でもこれって……、もしかして……。

 神の領域に少しだけ踏み込んだような気がするのは、俺の気のせいなのかな……?


読んでくれてありがとうございます。



それでは、次話もお楽しみに。

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