大発見
ヴァール姉ちゃんが歌い終わると、録音を終えた。
その後、いつも以上に大騒ぎが始まって誰が何を言っているか分からなくなる……。
『凄いわヴァール、こんなに素晴らしい「故郷」の歌は始め……。流石ヴァール姉さんね、それにハミングしていた人も息が合って感動……。これって、ハミングしていた人と練習していたんでしょ……。ハミングしたひとも、すばらしかったで……。
ヴァール姉さん以外にも、音楽の才能があった姉妹っていたの?』
ヴァール姉ちゃんの歌声はいつも通り素晴らしかったけれど、いったい誰がハミングしたんだ……?
『ヴァールねえさん、ハミングした人はだれですか?』
『うふふ、それは私のお腹の中にいる赤ちゃん』
『『『『『『『本当に!』』』』』』』
みんな一斉に言う。
驚いた〜〜〜〜!
まだ胎児なのに、こんなに素晴らしいハミングができるなんて!
まさか、ヴァール姉ちゃんのお腹の中にいる赤ちゃんがハミングしていたとは……。
この子は、俺が無意識のうちにした「祝福の魔法」によって普通よりもかなり早く……、成長している。
俺を認識できて、簡単な会話をして驚いた事があった。
『毎日この子に「故郷」を歌ってあげていたら、いつのまにかハミングするようになったの。
今のところは心の声でハミングするだけだけれど、この子が生まれたら一緒に歌いたいわ』
明らかにヴァール姉ちゃんの才能を受け継いでいるよこの子。
将来が楽しみ〜〜。
『ヴァール姉さんがさっき歌った「故郷」を、私にもくれないかしら』
シズン姉ちゃんが言うと、私も欲しいと他の姉ちゃん達も言い始める。
それに、ヒミン王女とウールも。
俺も欲しいので、沢山コピーを作らないとな。
あ……。
これって、ハーリー商会で売れるよな。
それに、買った人達は「故郷」を聞いて心が和む。
賢者の長として、世界の人々に安らぎを与えるのも立派な役目。
それにこれだと、必要な人達に安く売る事ができるし
でも……、一個づつ魔石に付与するので商品として売るには、大量の魔石に魔法を付与する必要があるので無理かな……?
いや、まてよ……。
できるよ!
魔石の付与を一個づつしかできないと思っていただけで、同時に大量の魔石に付与する事を誰もやった事がないだけだ。
今回は簡単な魔石の付与なので同時にできる気がする。
岩蜂の魔石を再び重力魔法で取り寄せる。
皮のバックに入っている全部の岩蜂の魔石を。
18個の魔石が俺の前に来ると、イメージを開始。
アンナが何事が起きるのかと、こちらに近付いて来ている。
部屋を見渡すふりをして、俺はアンナを見る。
絶妙なタイミングで……、アンナの胸を見て魔石強化のイメージを得た……。
別の部屋にいたエイル姉ちゃんと、スィーアル王子が静かに部屋に入って来た。
魔石を受け取りに、早速来たみたい。
シュゥーーーーーーーー。
18個の魔石から静かな音が聞こえてきた。
18個、全ての魔石を検査したら、思っていた魔法が付与されていた。
エイル姉ちゃんを見ると、口元を押さえて目を大きく見開いている。
言葉に出すと録音に支障が出るので、姉ちゃんは声に出していないけれど、かなり驚いている。
何をそんなに姉ちゃんは驚いているのだろうか……?
後で姉ちゃんになぜ驚いたのか聞くとして、今はヴァール姉ちゃんの声を録音しないとな。
録音している魔石を真ん中に置いて、他の16個の魔石を周りに配置する。
近くで録音した方が、綺麗な音が再現できるから。
準備ができたので、ヴァール姉ちゃんの声が録音されている魔石には再生と、他の魔石は録音するように魔法を発動した。
「ゴブリン追いし彼の山、ピラーニャ釣りし彼の川〜〜」
ハミングの音もしっかりと再生できており、最後まで順調に進んだ。
終わってふと気がつくと、近くで誰かが泣いている感情がしている。
その方を見ると、アンナが涙を流しながら魔石を見ている。
「だいじょうぶですか、アンナさん?」
俺がそう言うと、アンナは涙声で驚きながら言う。
「こんなに素晴らしい「故郷」が魔石から聞けるなんて、感動して涙が止まりません。
父母や、幼い姉妹達の事を思い浮かべて……。
それに、多くの魔石に同時に魔法を付与するのを始めてみました。
流石、賢者ですね」
横で聞いていたエイル姉ちゃんが、驚きの声を爆発させるように、興奮しながらアンナに言う。
「アンナさん、これらは全てトルムルがさっき考え出した事なのよ!
「故郷」を歌ったのはヴァール姉さんなんだけれど、魔石に歌を入れるのを、ついさっきトルムルが考えて魔石に付与したわ。
更に驚くべきは、こんなに沢山の魔石に高度な魔法を同時に付与した事実!
同時に魔石に付与するのはトルムルは今までやったことが無いはずだから、これもさっき考えて実行したんだと思うの。
世界的な2つの大発見を、いとも簡単に出来るトルムルは凄すぎるわ!」
ヴァール姉さんに匹敵するほどの速さで言い終えた姉ちゃん。
姉ちゃんって、早口に上限がないの……?
おっと、そっちではなくて2つの大発見ですか?
そんなに凄い事とは知りませんでした……。
姉ちゃんにそこまで褒めてもらうと、凄く嬉しい。
まるで母ちゃんに褒められたみたいで。
母ちゃん、俺……。
エイル姉ちゃんに、いっぱい褒められたよ。
読んでくれてありがとうございます。