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広域治癒魔法

 メデゥーサを氷漬けにしたので、命力絆ライフフォースボンドを使って、姉ちゃん達とウール王女、それにヒミン王とモージル妖精女王に勝利の連絡を入れる。


『メデゥーサをこおりづけにしました。

 ウールおうじょは、ニーラをつれてここまできてください』


 俺が言った途端に姉ちゃん達を始め,いつもは冷静なヒミン王女までもが大騒ぎを始め、誰が何を言っているのか分からないほどに……?


『『『『『『『『流石トルムル様……。トルムルのおかげで平和がこれで来る……。やってくれたわねトルムル……。凄いわトルムル……。トルムルとこれで、ゆっくりと温泉に入れるわ……』』』』』』』』


 お、温泉……?


 と、とにかく、みんなが大騒ぎだったので、ウール王女がニーラを連れて来るように俺が言った返事が聞けない……。

 でも、みんなが大騒ぎする理由も分かるので、落ち着くまで待つ事にした。


 大騒ぎが徐々に収まっていき、やっとウール王女と話しができるまで静かになっていく。

 王女と話を始めようと思ったら、城塞都市の方からペガサスに乗ったウール王女と、ニーラの姿が見えて来た。


 ウール王女とニーラは笑顔で俺に手を振って喜んでいる。

 ペガサスはそれ以上に喜んでいるみたいで、大空を踊るように走らせてこちらに向かっている……。


 ペガサスの母ちゃんがメデゥーサだと知った時は、目の玉が飛び出るほど驚いた。

 外見が全く似てないので、最初冗談かと思ったほどだ!


 こんなに喜んでいるペガサスを見るのは初めてで、ペガサスはメデゥーサの母ちゃんを、心から心配していたんだ。

 ペガサスが舞い踊る様に降りて来ると、俺の方を見て満面の笑顔で言う。


「トルムル様、本当にありがとうございました。

 これで魔王の呪縛が消えて、母も私と同じ様に元に戻ります」


 ペガサスは俺に深いお辞儀をして、ウール王女とニーラを下ろした。

 ニーラはさっそく魔法を使って、魔王に支配されていたメデゥーサの心を解放した。


 鋭い目付きで俺を睨んでいたメデゥーサは、戸惑いの目付きに変わって、息子のペガサスを見ている。

 さっきまであった怒りの感情が、何故ここで氷漬けになっているのか戸惑っている。


 俺はさっそく火炎魔法を発動……。

 あ……、魔法力マジックパワーがほとんど無い。


 さっきの戦いで殆ど使って、残りは少ししか無い。

 ど、どうしよう……?


 このままだと、メデゥーサの体が冷えていき、死んでしまう。

 せっかく元のメデゥーサに戻したのに……。


 分厚い氷なので、ペガサスが蹴ったくらいでは壊れない……。


 ん……?


 まてよ、ウール王女がここにいるよな。


 ピンクダイアモンドから魔法力マジックパワーを取り出す様に、ウール王女から魔法力マジックパワーを取り出せるかもしれない。

 ウール王女に心を移動する方法もあるけれど、遠い将来、魔王と戦うためには仲間から魔法力マジックパワーを供給する必要がある。


 何故なら、魔王は彼の子供達から魔法力マジックパワーを供給できるからだ!

 ウール王女の手を握れば、王女から魔法力マジックパワーを引き出せる気がする。


「ウール、ぼくとてをにぎってください」


 いきなり俺がウール王女にそう言うと、王女は驚いた様に俺を見つめ、頬が赤く染まっていく……。


 ……?


 もしかして、ウール王女は何か勘違いしている気がするんだけれど……?

 でも、頬を赤く染めているウール王女は、と、とっても、か、可愛い……。




 おっと、見つめ合っている場合じゃないよな。

 早くしないと、メデゥーサが死んじゃうし。


「てをにぎるのは、ウールのたいないにある、マジックパワーを、ぼくにいどうさせるためです。

 ぼくのマジックパワーがほとんどないので、こおりをとかすまほうが、はつどうできませんから」


 急に、ウール王女の肩の力が抜けた様になる。

 やはり、勘違いしていたみたい……。


 俺が手を差し出すと、王女は手を伸ばして俺の手をしっかりと握りしめる。


 い、痛い……?


 命力絆ライフフォースボンドで、体力的にも飛躍的に成長しているウール王女は、俺の握力を遥かに超えている。

 王女を見ると、意地悪で思いっきり握っているのではなくて、普通に握っているのが分かった。


 この握力は俺にとっては強すぎて、痛いほどだ!

 もしかして、ウール王女が大人になる頃には、アトラ姉ちゃんみたいになっている予感がするんですけれど……?


 いけない!

 またまた、脇道に意識が行ってしまった。


 俺は目を閉じて、握っている王女の手に意識を集中する。

 ウール王女の手を経由して、王女の体内にある魔法力マジックパワーを、俺に移動させる様に意識を集中。


 シュゥゥーーーーーー。


 殆ど聞こえない様な静かな音と共に、王女から俺に魔法力マジックパワーが移動する。

 王女の魔法力が半分になったところで、俺は魔法力の移動を止めた。

 ウール王女と握っていた手を離すと、俺の手が痺れており、さらに赤くなっている……。


 思っていた以上に、王女の握力は強い……。

 将来的に、これは……。


 だめだ〜〜!

 またまた、脇道に逸れてしまった〜〜!


 ウール王女の事は後で考えるとして、今はメデゥーサを氷漬けから助けださないと。

 俺は火炎魔法を発動して、メデゥーサの氷を溶かし始める。


 しばらくするとメデゥーサの周りの氷がほとんど無くなったので、ペガサスが足で軽く蹴って氷を剥がす。

 氷が無くなると、ペガサスがメデゥーサに言う。


「お母さんは、魔王に心を支配されていたのです。

 ここにおられる、新しく賢者のおさになられましたトルムル様が助けてくださいました。


 私もトルムル様に助けていただいて、ニーラ様の魔法で元に戻れました。

 ニーラ様は魔王から逃げ、現在はトルムル様が保護されています」


 メデゥーサは状況をすぐに判断できたみたいで、俺に頭を下げて、申し訳なさそうに言う。


「ニーラ様、並びに息子のペガサスも助けていただいて感謝申し上げる。

 魔王に心を奪われていたとはいえ、私は多くの人を石に変えてしまい、大変もうし分けないと思っている。


 魔法力マジックパワーが今は全く無いので、彼らを元には戻せないけれど、明日になれば可能だと思う。

 それまで待っていて欲しい」


 メデゥーサはそう言うと、もう一度深く頭を下げた。

 ふと、メデゥーサの頭を見ると、ヘビ達が俺に挨拶したそうな顔を一斉に向け……、そして挨拶を始める。


「私メヂ、よろしくねトルムル様」


「オレ、ムーア。よろしく頼むぜ」


「私はソヨソヨです。初めましてトルムル様」


 この後も挨拶が続いて、ヘビ達の名前を覚えるのに非常に苦労する……。

 これって、メデゥーサに勝っても、苦行しているみたい……。


 メデゥーサはペガサスに乗ってもらって、俺とウール王女は重力魔法で城塞都市に戻る。

 俺達が戻ると、既に戦いは終わっていた。


 メデゥーサが負けたのを知った魔物達の半数は降参して白旗を上げ、残りは城塞都市から四散する。


 掃討戦を今すぐに開始してもいいのだけれど、今日だけはみんなを休ませる事にする。

 何故なら、今日は記念すべき日になるのは間違いなく、皆んなで祝いたかったからだ。


 俺達が戻ると、味方の殆どが集まって来て、俺は彼らから揉みくちゃにされる。

 ここでも、苦行をしている気がする俺……。


 でも、みんなと一緒に戦ったからこそ達成出来た勝利なので、揉みくちゃにされるのも嬉しい。

 メデゥーサが魔王に心を支配されているのをみんなが知っているので、彼女にも優しく……、接していた。


 昨日の敵は今日の友と言う感じで、メデゥーサに接している。

 でも、すこしだけ……、手荒にしている人達も……、いる気がする……。


 それも、分かる気がするんだよな。

 肉親がメデゥーサに殺された人達もいるから……。


 魔王が元凶だと、その人達もわかっているので、その程度ですんでいる。

 メデゥーサもそれが分かって、あえて揉みくちゃにされているみたいだ。


 騒ぎは夜通し続いていたみたいだけれど、俺とウール王女は早めに退出して休む事にした。

 まだ俺達は赤ちゃんなので、夜ふかしは体に良くないと思う。


 何故なら、身長が日増しに伸びているし、潤いの皮膚を保ちたい。

 それに乳歯の数も増えてきて、髪の毛がフサフサになり、それらの為には睡眠は最重要だ!!


 ◇


 メデゥーサは翌日、石になった人達を元の人間に戻してくれた。

 しかし石になった人達は、完全には元の健康な体には戻れなかった。


 太陽や雨風などに、長い年月さらされていたので皮膚が思った以上にダメージを受けて、潤いがなく極端な乾燥肌になっている。

 更に、歳を取った人達は関節の節々の痛みを訴えており、歩くのが困難な人達も。


 更に悪い事には、石にされた時に体の一部が壊され、元に戻る事が出来なかった人達が多くいた……。

 シブ姉ちゃんが再生魔法を使って、その人達を元の状態に戻すように治療を開始しているけれど、姉ちゃんの魔法力マジックパワーでは限界があって一日に数人程度しかできない。


 戦争の爪痕はそれだけでなく、物理的、経済的、精神的にも深いダメージを負っている。

 しかもそれが三国にまたがっており、あれから数日経っても、俺に相談してくる人達が後を絶たない!


 夕方になって、シブ姉ちゃんが疲れ切った表情で俺に言う。


「トルムル、何とかできないかしら?

 再生魔法を使えるのは私一人だけれど、もしかしてトルムルも使えるのではとさっき思ったの。


 モージル妖精女王とトルムルは心で繋がっていて、王女とプラナリアの妖精も心で繋がっている。

 という事は、王女を通して、プラナリアの能力をトルムルも使えると思うのよ。


 一度でいいから、再生魔法を試してくれないかしら、トルムル。

 私一人では、一年以上経っても全ての人を再生治療できないので」


 それは考えなかったよ、俺。

 確かに、モージル妖精女王を通して、プラナリアの能力を俺は使えると思う。


 ん……?

 まてよ……?


 俺は広域治癒魔法ゴールデンパウダーを使えるので、それと併用すれば広い範囲で一度に再生魔法を発動する事ができるはずだ!

 しかも昨日、ウール王女から魔法力マジックパワーを引き出す事に成功したので、それを姉ちゃん達にも適用すればいいのでは?


 更に、モージル妖精女王に心が繋がっている全ての妖精達からも魔法力マジックパワーが引き出せる気がする。

 これらを使うと、かなり広い範囲で広域治癒魔法ゴールデンパウダーを使う事が出来る……、と思う。


 善は急げ、だよな。

 俺は姉ちゃん達とウール王女、そしてヒミン王女、更に妖精国に帰っているモージル妖精王女に緊急の連絡を入れる事に。


『これからみんなのマジックパワーをつかって、さいせいまほうとゴールデンパウダーをどうじに、はつどうしたいとおもいます。

 きをらくにして、ぼくにこころをゆだねてください。


 モージルおうじょは、すべてのようせいたちと、こころをつなげてください」


『『『『『『『『『わかったわ、トルムル』』』』』』』』』


 いきなり俺から言われたので、みんなから緊張感が伝わって来る。

 目の前にいるシブ姉ちゃんも同じで、大きな目をパチパチしながら俺を見て言う。


「確かに、トルムルは広域治癒魔法ゴールデンパウダーを使えるけれど、まさか再生魔法を組み合わせるとは、私は考えつきもしなかったわ。


 でも、トルムルなら必ず出来ると信じている。

 私の中にある魔法力マジックパワーはほとんど無いけれど、少しは足しになると思うので使って」


 俺もさっきまで考えていなかった……。

 シブ姉ちゃんが俺にヒントを与えてくれて、感謝している。


 って、まだ成功したわけではないので、患者さんの為にも頑張らないとな。


 さっそく俺は、再生魔法を発動するイメージを両手の中で開始する。

 体の一部が失われた人達の、失われた部分を再生するイメージと共に、乾燥肌や、関節痛などの治療も加えた。


 イメージが完了したので、今度は心で繋がっている人達から魔法力マジックパワーを引き出す為に、意識を伸ばす。

 最初は、近くに居るシブ姉ちゃんに意識を伸ばして心を繋げて、魔法力マジックパワーをいつでも引き出せる様にする。


 思っていたよりも簡単に出来たので、姉ちゃん達とウール王女、そしてヒミン王女にも同じ様に繰り返した。

 最後はモージル妖精女王に意識を伸ばすと、女王のに繋がっている多くの妖精達も感じられ、莫大な量の魔法力マジックパワーを使えるのを確認する事が出来た。


 これだけの魔法力マジックパワーを使えるのであれば、一国の地域を、一度に広域治癒魔法ゴールデンパウダーを使えそう。


 ……?


 いや、もっとできるかもしれない。

 もしかして、奪われていた三国内に居る人達に対して、同時に出来そうな気がする。


 広域治癒魔法ゴールデンパウダーを使う地域を三国にして、両手を広げる。

 みんなから魔法力マジックパワー広域治癒魔法ゴールデンパウダーに変えながら最大限発揮できる様に発動する。


 俺の手から金粉がイキヨイよく溢れ出し、あっという間にシブ姉ちゃんと一緒にいた部屋が満たされ、更に開けていた窓から津波の様に外に出て行く。

 あまりにも金粉の量が多かったので、近くにいたシブ姉ちゃんが見えなくなった。


 姉ちゃんは驚きながら言う。


「トルムルってば、もしかして今、凄いことをしている気が……。

 頑張って、トルムル」


 姉ちゃんの言葉に励まされて、俺は意識を更に集中して金粉を出し続けた。

 どれくらいの時間が経ったか分からない時、俺と繋がっている人達の魔法力マジックパワーを全て使い果たした。


 全身から力が抜けて、俺はふらついて倒れそうになったけれど、すかさずシブ姉ちゃんが俺を抱き上げてくれる。


「トルムル、大成功よ!!

 町中から、歓声が聞こえるわ。


 とても信じられない事だけれど、成功したのよトルムルは。

 トルムル……?


 体力を使い果たして寝たみたいね。

 このまま、起きるまで抱いててあげるわ。


 トルムルを抱く機会あまりないし、それに可愛いし……」


 強い眠気で、シブ姉ちゃんが言っているのがやっと分かったけれど、もう……、限界……。

 でも……、成功して……、よ、か、った、よ……。


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