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最終決戦

 メデゥーサが居城している城塞都市での戦闘が始まった。

 この大陸から魔物の脅威を無くす為に、人間は老若男女を問わず総力を挙げて戦いに挑んでいる。


 前線で戦っているもっとも歳を取っているのは、元賢者の長だったリトゥル。

 彼は手癖が悪いので、魔物の攻撃で怪我をするよりも、若い女性隊員にちょっかいを出して反撃を食らって怪我をする方が多い……。


 困ったリトゥルだけれど、戦闘能力はかなり高いので、前線で戦うのを許している。

 姉ちゃん達から若い女性隊員に警報を出していて、リトゥルが不用意に近付いたら攻撃をしてもいいと……。


 彼の防御魔法はそれなりに高いので、死ぬ事は無いと思うけれど……?


 戦いに参加している、もっとも若い者は言うまでもなく俺とウール王女だ!

 その次に若いのはヤールンサクサ王女。

 6才にも関わらず、大人並の統率力を持っている。


 戦闘には直接参加はしないけれど、輸送部隊の一角を担って、戦線に物資を届けている部隊hの指揮をしている。


 安全を確保した城塞都市の一角で、俺は偶然ヤールンサクサ王女と久し振りに会う。

 王女は以前俺に、フィアンセになって欲しいと言っていたけれど、俺がまだ若い……のでお断りして、友達ならばいいですと言った過去がある。


 それ以降、友達関係は良好に続いているのだけれど、ウール王女が同じ場所に居合わせると、とても気難しい雰囲気が王女達の間に出る……。

 メデゥーサの事だけでも頭が一杯になっているのに……。


 俺まだ赤ちゃんなのに、もしかしてこれが俗に言う……?


 って、ウール王女は俺の彼女ではないんだけれど、王女はそのように行動している気がする……?

 ウール王女のことは嫌いではないけれど、俺が彼女を作るのは早い気がするんだよな。


 だって、俺まだ……?


 おっと、今はメデゥーサの事を考えないとヤバイ!

 意識を伸ばしてメデゥーサの場所を再度確認すると、いまでも塔の最上階にいるみたいだ。


 そこに行くには、複雑な城の内部を通らなければならず時間がかかる。

 重力魔法を使って、塔の窓から侵入する予定だったけれど、姉ちゃん達に反対された。


 その理由が、トルムルが重力魔法を使って塔の窓から入る可能性をメデゥーサが見過ごすはずもなく、罠を仕掛けていると。

 もし行くのであれば、私達も一緒に行きますと。


 罠の可能性を否定できなかったので、今まで塔の窓から侵入するのをためらっていた。

 しかし、城塞都市内部での戦闘は激戦を極め、負傷者がうなぎ上りに増えている。


 このまま作戦を推し進めるのもいいのだけれど、まだまだ日数がかかるし、負傷者が増えると士気が低下していく……。

 それに、戦闘で亡くなった人達が二桁を昨日超えて心を痛めている……。


 作戦をこのまま、本当に続けてもいいのだろうか……?

 それよりも、罠を覚悟で塔の窓から侵入して、メデゥーサとの決戦に出た方がいいのでは……?


 俺が何かで悩んでいるのが分かるらしく、ヤールンサクサ王女は心配顔だ。

 そんな王女の心配顔を笑顔に変えたいと思って、悩んでいた事に決断を下す。


 命力絆ライフフォースボンドで繋がっている姉ちゃん達とウール王女、そしてヒミン王女に緊急連絡を言う。


『メデゥーサのいるとうの、まどから侵入する決心をしました。

 ねえちゃんたちは、はいきゅうしている、たてものまできてください』


『『『『分かったわ、トルムル』』』』


 緊張した声で姉ちゃん達は返事をしてくる。

 これが本当の最終決戦になり、これで勝利すると、この大陸は魔物の脅威が殆ど無くなる。


 しかし失敗すると、俺は死んでしまい、二度目の人生も終わる可能性が十分に考えられる。

 それに、メデゥーサと魔王がこの世界に生きている限り、人間は安住の地が無くなってしまう可能性も……。


 姉ちゃん達も危険を十分承知しているからこそ、緊張が声に出ている。

 ウール王女にもさっきの事を伝えたので、緊張して俺を見つめたままだ!


「しんぱいしないでください、ウール。

 メデゥーサをたおして、ニーラをよべるように、ぜんりょくをだしますから」


 ウール王女は言う言葉が見つからないみたいで、頭を軽く下げて返事をする。

 近くに居たヤールンサクサ王女が、何事が起きたかと、俺とウール王女を交互に見ている。


 決断のきっかけを作ってくれたヤールンサクサ王女には、これから起こる事を伝えないとな。

 このまま何も言わないで行くと、余計に心配するので伝える。


「これから、メデゥーサのいる、とうにしんにゅうします。

 ねえさんたちといくので、あんしんしてください」


 俺が言った途端、ヤールンサクサ王女の目が大きくなって行く……。

 直接、メデゥーサの居る塔に侵入するのが危険だと知っているかの様に……。


 やはり、ヤールンサクサ王女は状況を把握する能力に長けている。

 それに、驚いた顔も可愛い……。


 おっと……。

 ウール王女を見ると、一瞬俺を睨んでいた……。


 ほんのすこしの間、ヤールンサクサ王女を必要以上に見つめていたのに気が付いたのか……?


「トルムル、それで侵入するのはいつ?」


 そう言って声を掛けてきたのはアトラ姉ちゃん。


 た、助かった〜〜〜〜。

 この気まずい雰囲気が、もっと長く続く所だったよ。


「じゅんびができしだい、しんにゅうします。

 じかんをのばすほど、みかたの、ししょうしゃがふえるので」


 俺が言い終えたところで、他の姉ちゃん達も集まって来た。

 姉ちゃん達は真剣そのもので、最終的な装備の点検を始める。


 準備ができたので建物を出ようとすると、ウール王女が近寄って来て、髪飾りを俺の前に出して言う。


「これを、もっていてください。

 すこしでも、トルムルのぼうぎょがあがるので」


 この髪飾りは、王妃様がウール王女の為に防御魔法を付与してある大事な髪飾りだ!

 その髪飾りを俺に持つようにと言ってくれた。


 防御魔法を付与したバンダナを、頭部に巻いて保護しているけれど、ウール王女から渡された髪飾りを受け取った。

 女の子用の髪飾りだけれど、ウール王女の気持ちを無下にも断れなかった……。


 エイル姉ちゃんが近寄って来て、髪飾りをバンダナに付けてくれる。


「こうやって髪飾りを付けると、女の子用だとは分からないわよ、トルムル。

 バンダナの色とあって、カッコいいわよ」


 そ、そうなの……?

 エイル姉ちゃんのセンスは悪くないので、信じるしかない……。


 エイル姉ちゃんの言葉に、他の姉ちゃ達も頷いている。

 という事は、少なくても俺に合った髪飾りの結び方をエイル姉ちゃんはしてくれたんだ。


 よかった〜〜。

 これで、安心して戦える……。


 って、ヤールンサクサ王女が、俺とウール王女を交互に見ているんですけれど。

 今は、これ以上考えるのはよそう……。


 ◇


 ウール王女の補助を得て、俺と姉ちゃん達はメデゥーサが居る塔の侵入に成功した。

 といっても、窓から入っただけなので安心はできない。


 メデゥーサの気配を探ると、最上階に居るみたいだ。

 俺たちが塔に侵入したのが分かったみたいで、殺気を放っており、それだけでも凄すぎて圧迫されそう。


 らせん階段が最上階まで続いており、アトラ姉ちゃんを先頭にして俺達はゆっくりと登って行く。

 塔の内部は静かで、俺達が階段を上っている足音だけが聞こえるだけ。


 突然、上の方から何かが転がって来る!


 ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン。


 上の方を見ると、丸い岩が階段を転がるように俺達に向かって猛スピードで降りている!

 巨大な岩は階段の幅にピッタリと合わせたように、隙間がほとんどないほど。


 俺は赤ちゃんなので隙間に行けばなんとかなるけれど、姉ちゃん達はそうはいかない。

 この岩をなんとかしないと、姉ちゃん達が押し潰されてしまう!


「ここは私に任せて!」


 そう言ったのはアトラ姉ちゃんだ!

 姉ちゃんは剣を構えると、いきよいよく転がり落ちてくる丸い岩に斬りかかる。


 ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ。


 大きな岩が剣で小さくなっていき、最後には姉ちゃんの驚異的な胸の弾力で粉々になった岩……。

 さすが、俺に恐怖を与えたアトラ姉ちゃん。


 こんな大きな岩を、簡単に粉々にするとは!


 感心している次の瞬間に、今度は無数の何かが上から飛来して来る。

 鳥か……?


 いや、あれはコウモリだ!

 しかも、過去に一度だけ見たことのある大型吸血コウモリ。


 人間の血を吸う時、神経毒を使って人間の心臓を止める、超危険なコウモリだ!

 カマイタチの魔法を発動しようと俺が身構えると、エイル姉ちゃん、ディース姉ちゃん、そしてイズン姉ちゃん達が言う。


「「「ここは、私達に任して!」」」


 イズン姉ちゃんはカマイタチの魔法を連続で発動して、大型吸血コウモリを切り刻んでいく。

 エイル姉ちゃんは弓矢を連射し、コウモリを射抜いていく。


 ディース姉ちゃんは近くに来たコウモリを、ヤリを高速に動かして突き刺している。

 その速さは、俺の目では追えないほどだ!


 三人の姉ちゃん達によって、あっという間に無数の大型吸血コウモリは、階段に全て叩き落とされて魔石に変わっていった。


「トルムルの魔法は、メデゥーサと戦うために使って!」


 そう言ったのはエイル姉ちゃんだ。


 急激に成長しているエイル姉ちゃん。

 以前のエイル姉ちゃんからは、絶対に言えないセリフだよ。


 戦いの何たるかを心得ており、自分の立ち位置を知っている。

 王子を彼氏にすると、ここまで変わるとはすごい効果!


「エイルねえさん、わかりました。

 ぼくのまほうは、メデゥーサのときにつ……」


 俺が言い終わらない内に、急激に冷気が上から降りてくる。

 真冬よりも寒く、凍え死にそうなくらい寒い。


 イズン姉ちゃんが火炎魔法を左右の手から発動して、冷気の相殺を始める。


 暖かい〜〜。


「塔の最上階に着いたよ!」


 アトラ姉ちゃんの声が、塔内に響いた。

 最上階に着くと、丈夫な石の扉の向こうからメデゥーサの殺気だった気配を感じる。


「みんな、後ろに下がって〜〜!」


 そう言ってアトラ姉ちゃんは剣を身構えて、得意の超音波破壊剣ソニックウエーブディストラクションソードを発動する。


 ドッゴォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!


 丈夫な石の扉はもちろんのこと、最上階の前面方向の壁と屋根も一瞬の内に粉々になった……。

 以前よりも遥かに破壊力が増しているよ、アトラ姉ちゃん……。


 もしかして、メデゥーサもやっつけたか……?



 いや……。

 埃でメデゥーサは見えないけれど、殺気がさらに強まっている。


 突然、何かが急速にこちらに迫っているのが分かったので、反射的にいつもの盾を俺達の前面に発動!


 ボヨッヨォ〜〜ン、ボヨッヨォ〜〜ン、ボヨッヨォ〜〜ン、ボヨッヨォ〜〜ン、ボヨッヨォ〜〜ン。


 なんと、人間の頭ぐらいの岩が、メデゥーサから無数に飛んできている。

 おっぱい型の盾は、最大限に強く、そして弾力をイメージして発動したので、メデゥーサの攻撃を軽く跳ね返している。


「流石、噂の賢者達だ。

 では、これならどうだい!!」


 ドスの効いた声で言うメデゥーサ。


 どんな攻撃で来るのか身構えていると、上空から巨大な岩が落ちて来る〜〜!

 塔の大きさを軽く凌駕しており、落ちてくれば間違いなく塔は壊され、俺達は潰されてしまう。


 俺だけだったら逃げれるけれど、姉ちゃん達を置いて逃げる訳にはいかない!

 何か、手はないのか……?


 考えるよりも先に、俺の手が勝手に動き出し、両手から超音波破壊魔法ソニックウエーブディストラクションを発動。


 左右の手から放たれた超音波破壊ソニックウエーブディストラクションは、共鳴の効果で更に威力を増して、落ちて来る大岩に向かう。


 ドッゴォォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンンン!!!!!!


 凄まじい音と共に、上空から落ちて来た大岩は粉々に砕け、砂のような物が降って来るだけだった。

 姉ちゃん達は呆気になり、破壊された大岩があった空間を、大きく口を開けて見ている。


 無意識の内に、超音波破壊ソニックウエーブディストラクションを両手で使ったよ、俺。

 そうだ、今が反撃のチャンスだ!


 メデゥーサも、まさか大岩が粉々になるとは予想できなかったみたいで、上空を見たままだ!


 俺は巨大蛸足クラーケンレッグを発動。

 賢者の塔を破壊した経験を踏まえて、今度は横方向からメデゥーサを襲う。


 メデゥーサは不意を食らったのか、遠くの山に飛ばされて行く……。

 これって、もしかしてホームラ……ン?


 遠くの山に飛ばされたメデゥーサの気配を探ると、更なる殺気を感じる。

 俺は重力魔法でメデゥーサのいる山まで移動。


 ここは、誰にも邪魔されなくて戦う事が出来るので好都合。

 俺はメデゥーサに対して、絶対零度アブソリュートゼロの魔法を発動。


 シュゥゥーーーーーーーーーー!!!


 銀色の大きな塊が、メデゥーサめがけて飛んで行く。

 銀色の塊のあとには、空気中の水分が瞬時に凍ってダイアモンドダストとなって、太陽の光を浴びて光り輝いている。


 メデゥーサに命中すると彼女が急速に冷やされ、凍って行く。

 しかし、メデゥーサもそれに対抗して火炎魔法で俺の絶対零度アブソリュートゼロを相殺する。


 俺も負けじと、絶対零度アブソリュートゼロを何度も発動。

 絶対零度アブソリュートゼロを何回発動したか分からなくなる頃、俺の魔法力マジックパワーが殆ど無くなった。


 もはやこれまでかと思った時、メデゥーサの戦意が急に無くなる……。


 よく見ると、メデゥーサが氷漬けになっている。


 も、もしかして、俺……、勝ったの……?

 ギリギリだったけれど、やっとメデゥーサを倒したみたいだ!


 やったね!!


 母ちゃん……。

 ついに、メデゥーサをやっつけたよ、俺。


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