表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/195

最強の女、再び

 城に入って行くと、魔物達の抵抗は続いていた。

 雑魚の魔物だけだと思っていたけれど、異常に高い魔法を持っている魔物の気配を感じる。


 その方向は、ヤリ使いのディース姉ちゃんが向かった方角だ!

 俺はすぐに、命力絆ライフフォースボンドを使ってディース姉ちゃんに連絡を入れる。


『ねえちゃんの、いくさきには、きょうてきの、まほうつかいがいます。

 ぼくがいくまで、そこでまっていてください』


『魔法使いからの攻撃は既に受けているよ、トルムル。

 辺り一面猛火で、壁の岩が溶け始めている。


 隊員達を後退させ、私一人で食い止めている。

 妖精のサラマンダーと友達の儀式をしていなかったら、一瞬で私は焼け死んでいた所だった』


 良かった〜〜。

 冬の間に、ディース姉ちゃんと火の妖精であるサラマンダーとの間で、友達の儀式をしていて。


 でも、壁の岩が溶けるほどの高温を出せる魔法使いがいるなんて、油断できない。

 並みの魔法使いでは、岩が溶け出さないからな。


 ディース姉ちゃんの近くに行くと、サラマンダーがディース姉ちゃんの前面に出て、魔法使いから来る高熱を受け流している。

 以前戦った、魔王直属の部下であったラミアと同じくらいの火炎魔法が出せる魔物って誰だろう?


 猛火の向こうからは、ステンノーの気配が僅かにしているんだけれど……、気のせいだよな……?

 城に入る前に、強力な眠りの魔法で眠らせたんだから。


 でも……、もしかしたら復活したのか……?

 他の魔法使いが、異常状態を治す魔法を使った可能性がある。


 でもこの魔法、最上級治療魔法なので使い手は殆ど居ないと元賢者の長であったリトゥルが言っていた。

 俺はこの魔法を使えるけれど、魔物側に居るとなると厄介だ。


 待てよ……!

 ステンノーが、魔石にこの魔法を付与した可能性がある。


 自身が状態異常になった時に、この魔法が発動するようにしておけば出来る筈だ。

 俺だったら出来るので、ステンノーも出来て不思議では無い……。


 とすると、この向こうに居るにはステンノーだ!

 流石、ゴルゴーン三姉妹の長女。


 って、感心している場合では無いよな。

 いつものオッパイ型の盾を、ディース姉ちゃんの前に出した。


 小刻みに震えながらも、この猛火に耐えている。

 ディース姉ちゃんに俺は言う。


「ねえちゃん、うしろにさがって、ください。

 このてきは、ステンノーです。


 ねむりからさめて、せんせんに、ふっかつしたようです。

 ぼくがあいてをします」


 ディース姉ちゃんは俺を見て、ビックリしている。


「強力な眠りの魔法から、ステンノーが復活したの?

 私では倒せそうにないので、ここはトルムル任せるわ」


 そう言ったディース姉ちゃんは、妖精のサラマンダーと共に、別の通路を通って行った。


『今度は、オレの出番だよな、トルムル?』


 そう言ったのは、後ろから付いて来ていたモージル妖精女王の横の頭であるマグニだ。

 普段は内気で、他の頭であるドゥーベルの陰に隠れて存在感があまり無かったけれど、戦闘場面になると彼の性格はガラッと変わって非常に活発になる。


『オレが猛火を防ぐから、トルムルは攻撃を開始した方がいいぜ』


 話し方まで変わったマグニは、俺の前に進み出て、ステンノーの猛火を防ぎ出した。

 モージル妖精女王とドゥーベルが高温で顔が歪んでいる……。


『マグニ、凄く熱いんだけれど、どうにかならないのか?』


 そう言ったのは、ドゥーベル。

 マグニは何でって顔で言う。


『これくらいで熱いの、ドゥーベルは?

 オレにとっては、これくらい熱い方が過ごしやすいんだけれど?』


 え……?

 マジで、この熱い中が過ごし易いの……?


 壁の岩が溶けていて、溶岩の中に居るような熱さなんですけれど……?

 俺のパンツまで汗だくで、せっかく体重が増えてきたのに、一挙に減りそう……。


 早く、この熱さから脱しないと、脱水症状になりそう。

 せっかく潤いの肌に戻ったのに、カサカサ肌に戻ってしまう。


 そうだ!

 ここは、絶対零度アブソリュートゼロの魔法で、一挙に涼しくして、戦いやすい状態を作らないと。


 これまで何度も絶対零度アブソリュートゼロを使ってきたので、イメージが手の中ですぐに完了する。

 俺はステンノーが居るであろう方向めがけて魔法を発動した。


 ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜。


 銀色の大きなかたまりが、ステンノーの方を目掛けて行く。

 かたまりの通った後には、冷気で周りの空気中にある水分が凍っていく。


 カッキィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!


 ステンノーが居る辺りが凍った音が聴こえて来た。

 そして、今度はそこから冷気が俺たちの方に流れて、さっきまで暑かった空間が、真冬の様にさむくなる。


『ト、トルムル……。

 これ寒すぎる……』


 そう言ったのは、さっきまで元気だったマグニ。

 熱い中は、彼は元気がいいみたいだけれど、寒くなると急に元気が無くなったよ……。


 火炎を使うマグニは、熱いぐらいが丁度良いみたい。

 でも、俺には熱すぎるけど。


 そうだ、ステンノーはどうなった?

 気配で探ってみると、何も感じられない。


 もしかして、逃げられたのか……?


 待てよ!


 僅かに、ステンノーの気配を感じる。

 もしかして、ステンノーは凍ったのか……?


 気配を頼りに近ずいて行くと、ユウリュアレーとよく似た、髪の毛が蛇の魔物が氷漬けになっていた。

 間違いなくこの魔物はステンノーだ!


 ステンノーは分厚い氷で周りを覆われて、目だけ僅かに動いている。

 鋭い目付きで俺を睨んでいるけれど、何もできないみたいだ。



『流石、トルムル様です。

 こうも簡単に、強敵のステンノーを氷漬けにするとは!』


 そう感心したのは、モージル妖精女王。


『ステンノーを捕まえたのは良いけれど、この寒さ、何とかならないのかトルムル?』


 余りの寒さに、震えながら言ったのはマグニ。

 彼は、火炎を使いたがっているみたい……。


「マグニが、たてのかわりをはたしてくれたので、つかまえることができた。

 ニーラをよんで、もとのやさしい、ステンノーにもどったら、マグニのかえんで、このあたりを、あたたかくすればいいです」


 それを聞いたマグニは喜んでいる。


『お、そうか? 役に立って嬉しいぜ。

 この辺りには魔物が居ないみたいだから、今すぐにでも、ニーラを呼べるってことだよな』


 多くの妖精達が城の内部に入って、彼らから情報を得ているので、魔物のいる位置を把握しているマグニ達。

 早速オレはウール王女に連絡して、上空で待機しているニーラにここにきてもらう。


 ニーラが来ると、魔王から掛けられた支配の魔法を解いて、ステンノーを元の彼女に戻した。

 さっきまでの凶暴な目付きと変わり、戸惑っているのがわかる。


 マグニはすぐに火炎でステンノーの周りの氷を溶かし、辺りの凍っている壁も暖かくして行く。

 ステンノーはニーラに近付いて行き、申し訳なさそうに言い始める。


「ニーラ様、魔王の暴挙を止めようとしたのですが、私まで支配されてしまいました。

 誠に申し訳ありません」


 ニーラは悲しそうに言う。


「全ては、お父様が悪いのです。

 ステンノーは気になさらないで下さい。


 こちらの方が、今度賢者の長になられたトルムル様です。

 全ては彼の活躍で、私達がお父様から解放されているのは彼のおかげなのです」


 ステンノーは俺を見て、驚愕の表情に変わっていく。


「貴方様が、本当にトルムル様なのですか?

 情報で、赤ちゃんが賢者に長になったと聞いたのですが、人間側の何かの罠だと思っていたのです」


 ……。

 ま……、1才過ぎたばかりの俺が、賢者の長になったのを素直には信じられないよな。


「よろしくです。

 おたがい、きょうりょくして、まおうをたおしましょう」


 ステンノーは笑顔になって言う。


「こちらこそ、宜しくお願いします」


「「「「「「「「オレたちも、よろしくな」」」」」」」」


「オレはスギ」


「オレはムーキ」


「オイラはキチキだ」


 ステンノーの頭に居る蛇たちも、俺に挨拶を始める。

 新しい友達は増えるのは嬉しいけれど、名前を覚えるのに、また苦労しそう……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ