太郎ちゃんではなかった
腹ペコな虎は一人のキツネを捕まえて食べようとしました。
キツネは己が食べられまいと必死で他の美味しい物を虎に与えました。
すっかり味を占めた虎は絶対にキツネから離れなくなりました……とさ。
べろり……。
何かがわたしの顔を舐める感触がする。
実家に置いてきた太郎ちゃん(柴犬)?
実家には忙しくて何年も帰れてないから、懐かしいなあ。
ごめんね。いつも寂しい思いさせちゃって。今度のお正月は帰れるかもしれないから……。
ザリリ……。
ん?いや違う。太郎ちゃんの舌ならもうちょっとベチョッというかヌメッとした感触で……。
なにこの皮膚に引っかかるザラリ感。
ゾリリ……。
いやいやいや。なにこの顔全体をカバーするようなフェイスパックな範囲!
大きさ的に、これ絶対太郎ちゃんじゃないね!
もあっとした生臭い息が顔にかかってるけど、なにこのアッツイ息!
風圧すごっ!
クーラー効いた部屋から出た途端に感じる真夏の外気かっ!
ごり……っ
「って頭いたぁぁあああ!」
誰だ!あたしの頭を万力で閉めつけようとする不届き者は!
本能で対象物を無我夢中で振り払おうとする。
その時になってやっと気が付いたのだが、わたしは意識を失って倒れていたらしい。
その上に何かが伸し掛かっていた。
大きな、何かが。
「あん?」
必死にもがくわたしから離れた物体は……虎でした。
うん。まだ夢見てるわ、わたし。
これからのんびりよろしくお願いたします。