44:貴族街の御邸 ②
ハクの話によれば、神獣は、北、南、東、西の方位ごとにいて、ハクは、フェンリルで北の一族と呼ばれる。それぞれ魔属性を二つずつつかさどっていて、フェンリルは地属性と空間属性なのだと。
また、神獣は、神の使いとも言われ、神に会うことも可能らしい。今回ハクがしごか……鍛えられた”中央の女神”というのは、個性的な女神たちをまとめている神で、この世界に一番詳しいのだとか。
なんか、思ってたよりファンタジーな話だったね。
魔法とか精霊とか神様とか神獣とか、この世界、どうなってるんだろう。
まあ、女神様がハクを鍛えた理由はよくわからないままだったけど、考えてもわかるものじゃないだろうから、とりあえずこの話は終わり。
だって、神様だよ?
人間ごときが神様の思考をよもうとか、何千年も早いわ。
ん?私が人間じゃなくなりかけてる、とか、そういうつっこみは、無しだからね?
「ねえ、ライアン君、ハク、お金、稼ごう。」
「あー、邸たてるんだっけか。そのあとの話で忘れてた。でも、その邸って、エレナのだろ?ハクはいいにしても、俺は関わっていいわけ?エレナ、貴族になるんだろ?おれは、一般人だし、そういうとこまでつっこんじゃっていいものなの?」
「ダメ、なの? というか、わたし一人で住むの?」
「他に誰がいるんだ?」
「わたしが思ってたのは、御邸を転移の魔道具に登録して、私たちのパーティーの拠点にできないかな、って。だから、ライアン君さえ良ければ、ライアン君も使うことになるよ? その方が便利でしょ。」
「いいのか!? おれさ、大きい邸たてるの夢なんだ。関われるんならめちゃくちゃうれしい。そういうのって、夢が詰まってるよな!」
夢が詰まってるかはわからないけど、秘密基地っぽいよね。
組織の拠点とか、男の子ってむだに憧れるし。
わたしも、まあ、そういうのは嫌いじゃないし?
あ! 秘密の部屋とか、仕掛けとか作ったら楽しいかも!
考えるの、楽しくなってきた!!
「主殿、お金を稼ぐ手段は考えているのか?」
「んー、冒険者の依頼、かなぁ。でも、それだと御邸の支払額をためるのに相当な期間が必要になると思うんだよね。」
「何悩んでんの? おまえ、もう金になりそうなの持ってるだろ?」
「え? 馬車とかは売れないよ?折角気に入ったの作れたし。」
「それじゃねーよ。ていうか、あれ売ったら、お前は一生馬車の依頼に追われると思うぞ。」
「? ほかに何かあったっけ?」
「地竜だよ。たおしただろ。地竜の素材はけっこー高く売れたと思うぞ。肉は超高級食材。血や内臓は超効能ポーション・薬の材料。皮膚は、超高性能鎧の素材。余すとこなしの高級素材のかたまりだ。」
「え、そうなの!?じゃあ、全部売ったら、けっこうな額に?」
「たぶん邸はたてられると思う。」
「すごい! これからお金に困ったら地竜を探しに行けばいいね。」
「地竜が金稼ぎの材料にしか見られない日が来るとは……。」
「主殿、その地竜はどこにあるのだ?」
「ん? マジックバックの中だよ。」
「あ、町2個分なんだったか、容量。地竜もマジックバックに入れられるなんて思いもし中たんじゃねーか?」
「……。と、とりあえず、売りに行こうよ。」
「売るとしたら冒険者ギルドか。なるべくなら行きたくないんだが……。」
「なんで?」
「ギルドマスターの話、覚えてるだろ?はっきりするまではやめた方がよくないか?」
「でも、そういうの気にしてたらこれから何にも出来なくなっていきそうだよ。」
「まあ、そうだな。」
「あ、なら、ファヤイラト様に直接城で買い取れないか聞いてみる?」
「一回そうしよう。で、無理そうだったら、商業ギルドに行こう。」
「商業ギルド? お店の許可もらうとこ、だよね?」
「あー、それもやってる。だけど、商業ギルドは、不正行為の取り締まりとか、トラブル防止がメインなんだ。そのためにギルドで店を管理できるようにした、っていうのが正しい。」
「へー。よく知ってるね。」
「親父が教えてきたからな。おれはおまえとは違って一般常識はあるから。」
「ぬわ!それは反論できないやつだよ!言っちゃいけないやつだよ!」
「あ、あと、背もしっかり伸びてるな。おまえとは違って。」
「ぬ――――!!それはもっと言っちゃいけないやつ!!今は結構気にしてるの!みんな7歳くらいに言うんだもん……。」
「っぷ、あははははは。」
むー!
ライアン君、私をからかうの上手くなってるよ!?
そこはレベルアップしちゃいけないとこだからね!?
「主殿、地竜の血と内臓は主殿が加工した方がいいと思うぞ。人間がやると品質は大きく落ちるからな。やり方は回復女神が教えてくれるだろう。我は、回復女神とは仲がいいからな。」
え、女神様に教わりに行くの!?
どうやって?
ていうか、人間が使うんだからいいんだよ、別に!
あと、私が人間のカテゴリーに分類されてないのが気になるよ?
「えっと、ハク、わざわざ人間のお金稼ぎのためだけに女神様の時間を使うとか普通はだめな気がするんだけど?」
「ぬ?そうか?」
「ハク、おれもそう思う。ていうか、恐れ多すぎだろ!?」
「おぬしは別に会う必要はないのだが?さっきから気になっていたが、こいつはなんなのだ?なぜ主殿の話を聞いているのだ。」
「ライアン君は、私のパーティーメンバーでお友達。二人も仲良くなってね。」
「主殿の願いとはいえ、それは難しい。我は仲良くなどする気はない。」
「あ゛? さっきから聞いてればなんなの?おれもおまえは無理だわ。」
ええぇ?
なんでそうなんのさ……。
仲良くしてくれなきゃ、これからいろいろなとこ行ったり、ほぼずっと同じ空間にいるのに大変じゃん……。
ハクは人間を自分より下だと考えているので人間とじゃれ合うなど冗談ではない、って感じですね。
ライアン君はたぶんハクと仲良くなろうとしてたんだと思いますが……。
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