42:サト様のお父様 ③
そうして3日。
王都の入口にたどり着いた。
門番さんは、サト様と、サト様のお父様――――ファヤイラト様を見た途端、”バッ”と効果音でもつきそうな勢いで深く礼をした。
ふむ、二人はやはり、有力貴族なのか。
そのあとは道がわからないので、一時的に護衛の人も馬のゴーレムに指示できるように許可をだして、連れて行ってもらうことにした。
馬車が進む間、サト様とファヤイラト様は、王都のことを、たくさん教えてくれた。
ここの店の卵料理がおいしい、だとか、ここの宿のおかみさんの話が面白い、だとか。
フムフム、参考になるなぁ。
……二人とも、お貴族様だよね?
よく町に出ているのかもしれない。
こういう領主とかだったら、みんな安心して暮らせるのだろうと思う。
ファヤイラト様の治めている領地が見てみたいと思った。
話が盛り上がっているうちに、貴族街に入っていた。
ファヤイラト様の説明によると、
だいたいどこの王都も、城を中心にして、それを取り囲むように貴族街、それを更に取り囲むように平民街となっている。
貴族街には、国のすべての貴族の邸がある。
領地を持つ、大公爵・公爵・侯爵・伯爵・一部の子爵は、そこで暮らしていないことの方が多いが、社交界の時期に拠点とする場所になったりする。
それ以外の子爵・男爵は、だいたいここに住んでおり、貴族街の端の方、平民街との境の辺りに準男爵や騎士や、一部の文官が住んでいる。
ということだった。
貴族街の中でも、身分の高い方が中心に近いところになるのだろう。
……この馬車、どんどん中心のほうに進んでいくんだけど。
なんだか嫌な予感がするなぁ、と思いながら窓から見える、整った、貴族の街らしい景色を眺めていると、馬車は止まった。
お城の前に。
これは、やはり、その、そういうことなのだろうか?
ファヤイラト様とサト様は、王族?
「ここ、なのですか?」
「ん?ああ、そうだが?」
あ、そうですか……。
もう逃げ道はないと。
現実逃避する場所はないと。
くっ、覚悟は決めたよ!
来るなら来い!
馬車をマジックバックにしまって、ファヤイラト様についていく。
お城の中に入っていく。
どんどん奥に進んでいく。
すれ違う人たちが深い礼をしていく。
……。
そして現在に至る。
「改めて自己紹介をしよう。私はこの国、クォーカライト47代国王、ファヤイラト・ダイス・クォーカライト。そして、息子の第一王子、サラレアト・ファラ・クォーカライトだ。」
国王様と第一王子様……。
ファヤイラト様の治めている領地見てみたいとか思ったけどそれ、この国全部のことだった……。
「早速だが、本題に入る。地竜を単独討伐し、二人の王族の命を守った、これは、国として褒美を与えるべきことだ。」
「いえ、それはお気持ちだけで十分なのですが……。」
「過去の事例よりもやったことが飛びぬけて大きくてな……。それはちと無理なのだ。」
まあ、そうだね。
地竜だったからね……。
……ん?
今思ったのだけど、今回の地竜の件、おかしくない?
普通さ、あんなに大きい、驚異的なものが町の門のすぐそばにいたら、門番も街の日とも異変に気がつくはずで、そうしたら、大きな騒ぎが起こるよね?
なのに、門番はいつも通りに門に立ってるし、町で騒ぎが起こってる感じはなかった。
それに、地竜は竜と言われてるけど、知能は低い。誰かひとりに執着して攻撃を仕掛けるのはあまりないって聞く。護衛の人がわざわざ攻撃を仕掛けたとも思えないし、もっと人のいる町に入って行かないのは不思議。
私たちも、激しい砂埃で見えなかった。
でも、これってもっとおかしい。
あの時はあまり考えていなかったけど、あそこの地面は、土。水分も含んでいたが、人や馬車によって踏み固められていたため固かった。
そんなものが、細かい乾いた砂になってまうだろうか?
そして、それだけであんなに大きい地竜が見えなくなるだろうか?
「褒美、なのだがこの国で爵位を授けたい。」
地竜が発見されないようにした?
何のために?
王様を狙うため?
暗殺ってこと?
でも、そうすると、地竜が企てるわけないから、人間がかかわってることになる。
地竜は知能が低いから『協力して』『いいよ』、みたいな関係にはならない。
じゃあ、地竜を従えられた人がいる?
「聞いておるか、エレナ殿。」
ここまでの過程が正しいとした場合、地竜を従えられて、なおかつ王様を狙う動機のある人。もしくは、王様を狙う動機のある人で、地竜を従える人に指示を出せる人。
貴族?平民?
貴族だったら、暗殺みたいな感じだよね?
王様だから、護衛も強い人が集められているだろうし、普通の暗殺じゃうまくいかないと思ったのかな?
でも、そうする前に毒とかを試す方が賢いよね?
んー、王様、っていうより王族は、そういうのに備えて毒の耐性をつけてるとかで無理だと思ったのかも。
平民だったら、今の国に不満があるとか?
でも、みた感じひどい国じゃないし、むしろいい王様だと思う。
平民だから、王様殺しても得することって少ないし。
王位継承問題とか?
「エレナ殿~。」
そうすると、第一王子で、たぶん継承権も第一位のサト様も魔物に襲われてタイミングがいいし、ありえない話ではないかも。
この国の王族貴族について全く知らないから何とも言えないけど。
というか、全部予想の話だけど。
でも、おかしい点については話した方がいいかも。
まあ、気づいていて触れていないだけかもしれないけど、万が一のことがあってからでは遅いからね。
「エレナ、考え事終ったか?いくら何でも王様を無視すんな……。」
え、もしかして、ファヤイラト様、話しかけてきていた?
う、うそでしょ、無礼すぎる……!
この考え事しだしたら思考の中にはまっちゃう癖、直さなきゃ。早急課題だ!
「も、申し訳ございません。無礼をお許しください。」
「ふっはっはっは、エレナ殿、そう気にしなくともよい。何を考えていたんだ?」
今考えていたことを、なるべく主観抜きで事実を話す。
「ふむ、そうか……。少し調べておく。情報、感謝するぞ。」
心当たりでもあるのだろうか?
そのあたりは、まあ任せておけばよいだろう。
「では、改めて褒美の話だ。」
あ、そうだった!
すっかり忘れてた……。
「今回、エレナ殿には、この国で爵位を得てもらいたい。」
ホウホウ……。
って、な、なんですとー!?
「ひゃ、しゃ、ふへ?」
……。
ゴホン。
「爵位、でございますか?」
「そうだ。それ以下にしてしまうと、今後他のものに褒美が与えられなくなってしまうからな。」
ああ、それは確かにそうだ。
地竜単独討伐でも爵位がもらえないなら、それ以外の功績は、王様のお言葉だけ、とかになりかねない……。
「おっしゃる通りでございますね……。」
「わかってもらえて助かる。肝心の爵位なのだが――――――――――」
大公爵、公爵、侯爵、辺境伯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵
これがこの世界では共通してある爵位だ。
大公爵は、王族の人のものなので、貴族の中で実質一番は公爵だ。
今回の功績だったら、男爵、よくて子爵だろうか?
「伯爵とする。」
ホウホウ……。
「って、伯爵―――――!?」
「そうだ。伯爵だ。」
あ、思わず声に出してしまった……。
「コホン。失礼しました。しかし、伯爵はおそれおおくございます。男爵、せめて子爵が限度ではないのでしょうか?」
「いや、伯爵は妥当だ。」
何か考えがあるのか?
嫌なんですけど。
爵位とか、いらないんですけど。
……ここで何言っても覆らない決定事項だということが、ファヤイラト様の目力らより察せられました。
ポジティブに考えよう。
えっと、伯爵だと、絶対領地がある。
だから、ある程度自分の好きな街づくりができる。
あと、……。
あと、なに?
貴族とか絶対面倒くさいじゃん?
爵位が高いほど友達もできにくいし?
仕事とかに時間とられるし?
社交とかあるし?
……あ、国の情報とかは得やすくなった。
異変とか、裏情報とかしれる。
調査においては悪くないかも?
「7日後に貴族向けに発表する。それまでに、王都での邸をかまえる手配をしておけ。できるまでの間は来賓として城でもてなそう。」
トントン話が進んでいく。
爵位、かぁ。
わたしが伯爵になって領地を治めるということは、どこかの貴族がつぶれたってことだろう。
ここ数年ではこの辺りの国で戦争は起きていないから、国は広がっていない。
だとすれば、そういうことなのだろう。
そうだ、それなら、その人たちが住んでいた邸が王都に残っているかも。
残っていたら、そこに私が住めばいい。
新しく作るの、もったいないし、そんなお金、持ってないからね。
きいてみると、まだ残っていたようだ。
それも、王城から馬車で10分という近さ。
そこでいいと思ったが、ファヤイラト様は、難色を示した。
「一度見ればわかる。あれは人の住む場所ではない……。」
「では、見に行ってもよいでしょうか?」
使えるものは使うべきだろう。
まずは自分の目で見てみたい。
ファヤイラト様とサト様も一緒に行く、というので、また4人で馬車に乗った。
王様って、暇なのかな?
帰ってきたばかりで仕事たまってたりしないの?
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旅路(7364年5月31日~6月7日)
この世界では、精霊界と人間界が分裂した年を0としている。
(正確には、『人間世界が生まれた年』と伝えられているため、精霊界とかはわかっていない。)
一年は365日の12か月。
季節があるところは、3~5が春、6~8が夏、9~11が秋、12~2が冬、もしくはその逆になる。
(地球とほぼ同じなのは、作者が書きづらいのと、ややこしくなって読みにくいからです。笑)
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