34:パーティー登録をしよう
「サッバネレントは、アレスチア王国の中でも発展している町で、王都に近いみたいだね。金鉱なんかもあって、豊かなところだよ。」
レイさんはアレスチアの拡大地図をひっぱり出してきて説明してくれた。
「ここから行くと、うーん、そうだな、歩いて行って20週間、馬車を借りてアリフォニアまで出たら13週間くらい、かな。船で4日はかかるけど、そもそも間に国が3つあって、サッバネレントもアレスチア王国の端の方だからね。」
「そんなにかかるんですか!?」
飛行機とか電車とか、ないってわかってるけど、外国に行く、って言ったらそういう乗り物で何時間か、のイメージだったからなぁ。
「どーすんの、馬車借りる?」
「うん、かりる!20週間歩き続けるなんて無理だよ……。」
「歩き続けるわけじゃねーと思うけど。まあ、早く着いた方がいいし、借りるか。」
「今思ったんだけど、13週間もたったらさすがにセール終わってるんじゃないかな?」
「あー、まあ、終わってるだろうな。」
「行って何もわからなかったらどうしよう。」
「それならそれで、いいんじゃねーの?どうせ全国回って調べるんだろ?」
「そっか、そうだね。明日出発だから、今日中に馬車借りに行った方がいいかな?」
「ギルド行ってから寄ってこーぜ。」
「うん!」
「じゃ、早いけどギルド行くか?」
ギルドに行くと、ギルド女職員Bさん―――――イナハさん―――――が私たちを待っていた。
「お待ちしておりました。再登録とパーティー申請の準備はすでに整っております。ギルドマスターから到着次第に手続きを行え、と仰せつかっておりますので手続きは私が行わせて頂きます。」
ピクリとも動かない、いかにも商売用の笑顔、ほかの職員さんよりも固い言葉づかい、人が、近づくのを躊躇してしまう雰囲気。
一度、178と呼ばれていた人、私たちに関係があるかもしれない人、そう疑ってしまうと、その人の行動すべてが怪しく見えてしまう。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
だから私も、内心を悟られないように笑顔の仮面を張り付ける。
「では、こちらに。」
この前の、ギルドマスターらしい人との会話が聞こえた壁のある部屋に通された。
「まず、こちらがエレナさんの新しい冒険者カードです。再登録になりますと、銀貨1枚が必要になりますが、よろしいですか。」
「はい。――――お願いします。」
「確かに受け取りました。では、こちらです。」
手渡されたカードを見ると、ランクがBになっていた。
……Bになっていた。
うそでしょ、私、冒険者活動してないよね、ほとんど。
ていうか、昨日も実力測定やるとか言って結局やらなかったよね。
なんで上がってるんです?
そんな心の声が漏れないように、笑顔を固める。
表情筋がぴくぴくする……。
「ありがとうございます。」
「次に、パーティー登録の方ですが、すでにギルドマスターからの認可が下りておりますので、ここでパーティー名を決めて頂き、こちらの登録用紙に必要事項を書いていただければ完了となります。」
「しばらく席を外しますので、その間にお考えください。用紙の記入も合わせてお願いします。記入事項につきましては、わたくしどもが、プラーバシー保護のため、責任を持って管理いたしますのでご安心ください。それでは、15分後にもう一度ここに来ます。」
イナハさんが出て行って、私たちは思わず顔を見合わせた。
いや、安心できないよ。
そして、パーティー申請、登録に、こんな用紙は必要だったのか、と。
私たちは実際に登録した経験はないので、本当のところは分からないが、受付の職員さんにパーティーを組みたい人がカードを出して、そこでパーティー名を言って登録完了と言われた人たちがいなかったか?
どの人たちもそれで終わりではなかったか?
この紙、あやしいよ!!
いや、知らないけど、本当は事前に書いていたのかもしれないけど、こんな風に個人情報書くの?
登録用紙の項目も、読んでみて、これ、必要?っていうのがあるよ。
項目は、
①名前
②誕生日・年齢
③だいたいの魔力量(ボール魔法何発で魔力がなくなるか。)
④使える武器
⑤得意としているワザ
⑥苦手、弱点
⑦今の悩み
⑧将来の夢
⑨登録してから何をするか(行先、目的などを詳しく)
⑩家族構成、友人関係
登録に、必要かな?
⑦∼⑩は、何のアンケート?っていうかんじだし、今はあの人たちが信用できる人物であるかわからないから、自分の手の内は明かさない方がいいよね。
あと、本当のことかくとしたら、③がすごいことになる。
ボール魔法とか、半永久的に撃てるんだけど。
小さいの、まあ、普通サイズだったら打ち続けている間に魔力回復していくし。
人間の中では魔力、一番多いかもしれない。しかもダントツで。
「なあ、これ……。」
ライアン君が用紙を見て、話しかけてきた。
私と同じように怪しい、と思ったんだろう。
「かくりょう、多すぎじゃね?」
「……。えっと、そうだね。まあ、だから、てきとうに、ね?」
明確に言葉にはしなくても伝わったようで、それがいいな、と返してきた。
と、いうわけで、適当に、でもまあまあ本当っぽく書いたのが、こちら!
①エレナ
②9月18日 9歳
③ボール魔法、20発
④特にない
⑤ウォーターカッター
⑥くすぐられること
⑦友達が欲しい
⑧幸せになること
⑨成長の旅。行先は特には決めていないが、いろいろな国を回りたい。
⑩家族は、いない。仲のいい友人は、ソフィア。
①、②、④、⑦、⑧、は本当のこと。
⑤、⑨は、嘘じゃないけどほんとじゃない、みたいな。
⑩は、友人がいない、って書くのはちょっとあれだったけど、人質とか嫌だから、ソフィアナさんっぽい名前にしてみた。まあ、これは嘘だけど、可愛い嘘だよね。
で、③、⑥は、真っ赤なウソ。言うわけないでしょ。
これを見たら、イナハさんとか、こういうのを書いてほしいんじゃない、みたいに思いそう……。
「書き終わったか? パーティー名、どうする?」
「んー、どうしよう。」
考えるの、難しい。
パーティー名、って、変なのつけたら毎回いう時自分がめちゃくちゃ恥ずかしいし、簡単には決められない。
「あのさ、おれ、ちょっと考えてきたんだけど。」
「どんなの?」
「”精霊の誓い”」
「スピリットレヴメント?」
「お前にピッタリ。で、意味もけっこーかっこいいだろ。それっぽいと思って。」
この世界の言語のひとつであるラステル語で、誓い、は、レヴメントで、精霊は、なぜか英語と同じでスピリットだ。
「いいと思う。これにしよう!」
「ホントにいいの?」
「うん。わたしじゃこういうの思いつかないし、確かに、私たちにけっこうぴったりだと思うの。」
「お前じゃなくておれらに?」
「ライアン君も、行ってもらうし、何より、一緒に旅して関わっていくんだよ?もう、ライアン君が『手伝う』って言った時点で、当事者になっているんだよ?」
「そっか、そうだな。なら、なおさらこれ、ぴったりじゃん。」
「決まりだね!素敵な名前、ありがとう!」
「いや、別に……――――まあ、これでパーティー組めるな。」
しばらくしてイナハさんが戻ってきた。
「お決まりになりましたか?」
「はい、決まりました。あと、登録用紙のアンケートにも答え終っています。」
「そうですか。これで申請は以上です。受付でパーティー名と新規登録の旨を伝えてカードを渡してください。登録が完了します。」
「わかりました。――――これが登録用紙です。受付で渡せばいいですか?」
「いえ、こちらでいただきます。」
「登録の時に伝えたいことがあるので受付で渡したかったのですが、だめという決まりがあるのなら仕方ありません……。」
「決まりではありませんが、情報漏えい防止のためにも見ることができる人数は制限した方がよいというギルドマスターの指示でございます。」
「それなら、大丈夫ですよ?知られて困ることは特に書いていませんし。」
横のライアン君から、そこまでにしとけ、という視線を感じる。
この辺にしておくかぁ。
イナハさんは、少し突っついたくらいではぼろを出さない優秀者らしいし。
「まあ、訊くのは今度にします。これ、どうぞ。」
イナハさんに用紙を渡す。
ちらりと見たイナハさんが内容を読んで一瞬眉をひそめたが、本当に一瞬ですぐにいつもの商売用笑顔に戻っていた。
「どうもありがとうございました。このまま受付に向かってください。私はこれで失礼させていただきます。」
受付に行くと、たったの15秒ほどで登録が完了した。
”精霊の誓い Bランク”
ギルドカードの上部に、パーティー名とパーティーランクが現れた。
なんと、Bランクパーティーである。
わたしがB、ライアン君がBに近いCなのでこうなったようだ。
なぜか今日はギルドマスターに会わなかったが、目的は達成したので次の場所、馬車場に向かった。
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