24:リーベを取りに、いざ儀式の間へ!
やっと、やっと全属性のボール魔法をリーベで打ち出せました!
「で、できました!!」
「やっと終わったのね……。さて、ここからが本番よ。」
「えぇ!?」
これまでのは準備運動、みたいな?
ハ、ハード……
「今作ったのは、あくまでも、”簡易版”リーベ。本物のリーベを使うには、儀式の間に行かないといけないの。」
「儀式の間、ですか?」
「ええ。で、儀式の間から道が開かれるから、そこを歩く。ひたすら歩く。その時、光が見えたらそれを体に吸収する。光は一人一つしか見えないの。それは、その光―――――リーベがそれぞれに合う一つしか存在しないから。」
「精霊たちは、誕生から5年たつとリーベを得るためにこの儀式の間に行くの。それが洗礼式。」
「人間も5歳で洗礼式にいくのですよ。似ていますね!」
「あれは偽物よ!に・せ・も・の!」
「?そうなのですか?」
「もともと―――7000年前くらいかしら?まだ精霊界と人間界が交わっていたころ、人間も洗礼式でリーベを得るのが普通だったの。あ、私はまだ誕生してなかったんだけど、前の私はいたから。でも、愚かな人間によって、精霊は利用され、たくさん殺された。それが一部の人、というより愚教会の私益にしか興味ない最低なやつらだったから、人間が滅ぼされることはなかったし、その教会が実質取り仕切ってた一つの国がなくなっただけだったんだけど……」
突っ込みどころが多い!
前の私とは?まさかの前世の記憶持ち?
人間、って精霊に勝てるものなの?
ていうか、国が滅ぼされちゃったんだね!?
「実は殺された中にね、前精霊王の妹さんがいたの。他の精霊を守ろうとして巻き込まれた。前精霊王は、人間が好きだったの。だから罪のない人は罰したくなかった。でも、新たな犠牲は増やせない。そうして精霊界と人間界が分裂することになった。そのせいで、精霊魔法や召喚魔法は使えなくなったし、人間界全体の魔素レベルが低下。今の人間界の魔法レベルはあのころの半分にもいかないわ。リーベを扱える人なんていない。それどころか、700年のうちにそういう記録、記憶も変わって伝えられてた。」
ソフィアナさんは今にも泣きだしそうに、苦しそうに、でも静かに起こっていてなんと声をかければいいのかわからなかった。
「……ソフィアナさん、あの……。」
「……っもうこの話やめやめ!さっさとエレナちゃんのリーベ、とりに行くよ!」
「はい!」
ソフィアナさんの転移魔法できたのは、精霊界に連れてこられた日についた、あの丘だった。
「こっちきて!」
「はい!」
空元気にも見えるソフィアナさんに、私はどうしても尋ねてしまった。
「あ、あの、ソフィアナさんは、人間が嫌いになっていないのですか?そんな風にいやなことがあって。」
私は人間だから嫌われているのが怖かったのかもしれない。言ってから尋ねたことを後悔した。
ソフィアナさんにはとても答えにくいことを聞いた気がする。
「ええ、嫌いにはなっていないわ。」
しかし、ソフィアナさんは即答だった。
「というより、嫌いじゃなくなったのよ。前の私がそのあとに素敵な二人の人間に出会ったの。その人たちはね、私の心を溶かしてくれた。とても大切な人。二人のお墓もこの丘にあるのよ。ここで初めて会ったから。ここに私がよく来るのは、そういう理由。」
どんな人たちだったんだろう。ソフィアナさんが大好きな人に、私もあってみたかった。
「ここの上に立って。」
ソフィアナさんが丘の端の方に有った円形の石舞台を指す。
そこには、魔法陣が掘られていて、立つと少し魔力が吸い取られていく感じがした。
「気を付けてね。光を吸いこんだら自動的にここに戻ってくる仕組みになっているの。ここでまっているわ!」
そういうソフィアナさんの声に見送られて私は別の空間に降り立った。
ついたところは一本道。草花が生えていてきれいなところ。
ソフィアナさんが言っていた通り光が見えるまで歩き続ける。
ただ、いつまでたっても光は見えない。
もう1時間くらい歩いている。
精霊にしか見えないのではないか?という不安を抱き始めたころ、目の前に扉があった。お城とかにありそうな豪華な扉だ。
ここで行き止まりなのか、道はない。
でも、扉はある!
ずっとまっすぐ歩く、って言っていたのだから、扉を開けてまたまっすぐ歩けばいい。
そう思って扉を開けると、道はなかった。
代わりに、石でできたような床に石舞台の時のように魔法陣が書かれている。
あの時のようにこの上に立つべきかな?
物は試し、と上にのってみる。
すると、やっぱり魔力を吸い取られていく感覚。
しかし、さっきよりめちゃくちゃ時間がかかっている気がする。
自分から流し込んでみたらすぐ終わるかもしれない。
全身の魔力を足の方に集める。
その魔力をどんどんと流しこんでいくと、目がつぶれるほどのひかりが出てきて、それが虹色に輝く。
見ていられなくて眼を閉じようとするのだが、どうにも目が閉じられない。
ようやく光が収まると、目の前の祭壇のようなところに虹色に輝く光があった。
きっとこれがソフィアナさんの言っていた光だろう。
体に吸収する、って、どうすればいいんだろう。
とりあえず手をかざしてみる。
すると、すぅーっと体に入ってきた。
少しくすぐったいような、しかしポカポカした心地よい感覚だった。
……あ、あれ?
光を吸収したのに、あの石舞台に戻らないんですけど!?
なんで!?
話が違うよー!
ど、どうすれば?
あ!元来た道を戻ればいい?
でも、転移魔法っぽいので来たから石舞台にはつながらないか……。
ぬー……
『はじめまして。エレナさん、だったかしら?』
だ、だれ?
「そ、そうです。エレナです。こんにちは。」
『緊張しなくて大丈夫。私はここの間の、んー、守護精霊?みたいなものよ?』
なんで自分のことなのに疑問形?
『私ってね、精霊なんだか女神なんだかわからない存在なんだよね……こっちの世界とつながれるのは、こことあと3つしかないし、神の世界でつながれるのは2つしかないし……。』
「えっと、守護精霊さん?が私に何の御用ですか?」
『あ、そうそう!これ、持って行って!』
守護精霊さん?がそういうと腕輪が祭壇に現れた。
「どうして私に?」
『んー、私が決めてるわけじゃなくて、この儀式の間の意思で、私はその意思を代行しているだけだからわからないわ。でも、あなたに必要、ってことらしいわよ?』
「そうなんですね。ありがとうございます!」
『また遊びに来て?ここでならお話しできるし、あと、儀式の間の意思もまた来て、って言ってる。』
「はい、また来ますね!あ、でもここに来るまで1時間くらい歩いたんですよ。毎回歩くのはきついです……。」
『あ、一回ここにきて魔力流した人は、いつでも直接ここに来れるって。』
「それなら安心です!」
『じゃあ、楽しみにしてるわ!』
守護精霊さん?がそう言うと、私は石舞台の上にいた。
戻ってこれたらしい。
よかったぁ。
そういえば、光も腕輪も祭壇に、しかも聖杯っぽいのの中に出てきたけど、普通って私がお供え物する側だよね?
「おかえりなさい!どうだった?」
ソフィアナさんがさっきと同じ場所に立っていて、出迎えてくれた。
「たいへんでしたよ!」
だってあんなに歩くとは思わなかったし、あんなに魔力流し込まなきゃなんて知らなかったし、ていうか扉の中にあるとか言われてないし、光を吸い込んだ後にプレゼントあるとか、守護精霊さん?とお話しできるとか知らなかったし……。
ソフィアナさんの説明にはなかったよね?
「むこうとこっちは空間が切り離されてるから時間、こっちではたってないのよ。あなたが一瞬消えて、またあらわれた、っていう風に見えるの。」
へー、だから同じ場所にいたのか。
ソフィアナさんに無効であったことをすべて話して大変だったことについて語ったのだが、
ソフィアナさんの反応は思っていたものと違った。
「そんなことがあるなんて、初耳よ?豪華な扉とか、あるなんて聞いたことない。……ちょっと調べた方がいいかもしれないわ。」
え?なんか、普通じゃなかったの?
「そのもらった腕輪、きっと何か意味があるはずなのだから、絶対にはずしちゃだめよ?まだ何かもわからないし。」
「わ、わかりました。」
こうして不思議な不思議なリーベ取り……精霊界式ホントの洗礼式は終わった。
「さて、帰ったらそれでまたボール系魔法の制御ね。」
「えぇ!?」
まだまだ修行は続くのです。
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