表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指せへいおんライフ!……波乱万丈なんてお断りです!!  作者: おいしいクルミ
第1部 エレナ・幼女期~異世界生活スタートです!~
20/50

17:心の壁

今回は、ちょっと気分が悪くなるような主人公の心の負の部分がメインです。

気分が悪くなったらすみません

ギルドから宿に戻る途中、夜ご飯を買いに、露店がたくさん並んでいる広場のようなところに来た。


「いらっしゃーい!きょうは、オーク肉が安いよー」


オークっておいしいのかなぁ。

ためしに食べてみようかな。

大銅貨1枚と銅貨3枚(130円)

それなりに安い。


ポケットからお金を取り出そうとしたその時、


「こんにちわぁ~。そこのかわいいお嬢さん、不思議な魂を持ってるねぇ~。」


「え?えっと、わたし?」


全体的に黒くて、フードをかぶった占い師のような、不思議な格好をした、怪しい女の人が私の目を見て声をかけてきた。町の中でその恰好は浮いて見えるのだが、誰も気にしていない。まるで見えていないみたいだ。

不思議な魂、とは、転生してきたからだろうか?

なんでそんなことがわかるのだろう。


「そうだよぉ~。」


「んー?あなたの魂、少し歪んでいるねぇ。ちょっと、ゆっくりお話ししたいなぁ、みんなじゃま。」


そういった瞬間、歩いていた人、買い物をしていた人、落ちてきた葉っぱでさえも、そのまま止まった。

時間が止まって、私とその人だけが残った。


危険だ。


本能がそう告げている。


逃げないと。


わかっているのに、その女の人の言葉が気になって、自分がおかしいとつきつけられて、体が動かなかった。


 前世の私、荒川英理菜として生きたとき、両親の愛情が欲しいと嘆いた。認められたいと頑張っても無駄だった。周りの、自分の能力だけを見ている人が、内面を見てくれない人が嫌だった。

 いつしか、あきらめて、自分からアピールできなかった自分が情けなくて、何より醜く見えて、本や知識へと逃げた。それらは何も変わらない、誰が読んでも知っても公平に同じことがわかって、そして何より自分を裏切ることもないから。

 最初は楽しかったそれを逃げに使ってしまったことは、もっと嫌だったのにそんな気持ちを心の底に押し込めて。

 親がいなくなって、引き取り先でもめている声を聞いたとき思ってしまったのだ。”わたしはうまれてこないほうがよかったの?”と。

 悲しいとか、苦しいとか、そういうことを忘れるために無心でいることにしたら、うれしい、とか、楽しい、もわからなくなってしまっていた。でも、わからなくなっていたこともわからなくなっていて。


 転生してきて、エレナとして生を受けて、あたたかい、家族の愛情を注がれて、そういう過去を忘れて楽しく過ごしていた。そのあたたかさをあたりまえだと勘違いしていた。前世に忘れた、感情をしっかり持った。

 それが急に終わって、愛されていたと思っていた兄に恨まれていたと知って、衣食住をとりあえず揃えられて落ち着いたとき

あぁ、そうか、人間は、表面だけ見たってわからないんだった。愛情って、当たり前に、無償でもらえるものじゃないんだった。

と思い出した。

 

 私がおかしいのは、ゆがんでいるのは、確かにそうかもしれない。

 

 そういう自覚が、本当は心の中にあったから、この女の人の言葉は、心の奥深くまで突き刺さった。


「何か大事なところにふたがされてるねぇ~。そのふたのせいで、人生の大切なことを勘違いしてるんじゃないかなぁ~。」


どういうこと?

だいじなこと?

ふたをしている?

なにに?


「ねぇ、あなたの心の中にある、大きな負の感情をつかって、私たちの役に立つ気はなぁい?当たり前に愛情をもらっている人たちに、真実をしっかり教えてあげましょうよ。『人間ってそんなにやさしいもんじゃないんだよ』って。」


私の中の”フノカンジョウ”?

ヒトノヤクニタツ?

ソレハイイカモシレナイ。

ミンナガニンゲンノヤサシサヲウタガエバ――――――――――


っ!

だめ、なにかんがえてるの?

私の過去は、万人にあてはまるわけじゃない。

私の魂がゆがんでいたとしても、負の感情が多かったとしても、こんな怪しい、見るからに危険な雰囲気の人に乗せられて力を使わされるのは、正しい力の使い方じゃない。

私の持つ力は大きいって知っているから、こんな言葉に惑わされてはたくさんの人に、世界に危害が及ぶ。


「お断りします。誰だかわかりませんが、そんなに怪しいお誘いに乗るわけにはいきません。」


「ふぅ~ん。ずいぶん心が揺れてたわよぉ~?そんな、正論に従ってるばかりじゃいつか破滅するよぉ~?それだけあなたの魂には負の感情が多いのよぉ~?」


「それでも、です。」


「後悔しても、知らないわよぉ~。私たちの世界変革を黙ってみてるといいわぁ~。」


「私の私的な感情で世界を変えることは、許されないことなはずです。私の感情は、自分でけじめをつけていきたいです。」


「そぉ。使えそうだったんだけどねぇ。でも、いつかあなたが悔しがって私たちを見てひざまずく姿が目に見えるわぁ。またねぇ~。」


言い終わった瞬間、また時間が流れ出した。

色の戻った町で、私は動くことができず、立ちすくんだ。


誘いに乗らなくてよかった。よく思いとどまれた。

そう思う一方で、

人間の優しさを疑う目がまた戻ってしまった。




『あなたの魂、少し歪んでいるねぇ。』というあの女の声が耳に残った。




心の奥深くがちくっと痛んだ。


ブックマーク・評価、ありがとうございます。

ちょっとでも気に入って頂けましたら、ぽちっと押してくれるとうれしいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ