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絶望の詩  作者: 燃花
7/9

月見草とネモフィラ

何が起こったかわからずに反射的に目線をやると、

撫子色と天色。


人工物にまみれた都会の灰色や原色の中に見つかるはずのない色彩が在った。


「あ、どーも。ごめんね遅くなりましたー!どーもどーも。失礼しまーす。よろしくーぅ、あー久しぶりーあは、元気ー?今日もかわいーねー、あは」


男性サイドと女性サイド、交互にとめどなく一方的に話しかけながら、言葉とは裏腹に欠片も悪びれもせずにズカズカと空間を破壊して塗り替える化け物がやってきた。


失礼な表現をしてしまった。女の子が入ってきた。


「どーもこんにちは!全然いーよ!先飲んじゃってごめんね。よろしく!俺大地!」


え、大地いつも優しくて懐深いけど、深すぎないか?深海?他にもっと突っ込むところない?


「あーん。優しい!神ですか。大地さん。よろしくですー。あ、みみ、つんつんごめんね。遅くなり。元気?元気そう!よかった!てか今日もまじかわいい!」


勢い!名前!ノリ!だめだ、全体的に追いつけない。

何か「異常なもの」がいることしかわからん。


「もー、ぼんよかったぁ。来てくれたんだねー。意外と早いじゃん。待ってたよ。飲も飲も」


蜜実ちゃんは優しくて良い子だ……。


「ぼん!もう、遅いよー。飲んじゃったよ。早く、ほらここ、座って。もう、絶対間に合わないと思った」


遅刻前提のひとなんだな、この、ぼんって、え、人の名前?


「えへへ、間に合って良かった。間に合ってないけど。めっちゃ急いだんだよー!あー、よかった。喉乾いちゃったー。何飲もう。あ、メニュー見てんの?一緒に見ていい?」


群青と白銅色。凡そ意志を感じさせない透明の瞳と視線がぶつかる。


ちょっとした空気にも抵抗出来なそうな柔らかい睫毛が、青色だけで作られた虹を守ってる。


製作中の紙粘土みたいに白くて滑らかな肌

星を溶かしたみたいに煌めくフューシャピンクの唇


「お人形さんみたいだね。舐めたい」


もしかして二次元?


ヴァーチャルアイドルのこぼれそうな目が大きく見開いた。


え?嘘。声に出た?こんなことってある?


やばい。死んだ。


うそ。しんだ。


なんて言い訳しよう。


原宿の綿飴みたいな色合いだったから。


いける?これでいける?

これで俺生き返れる?


綿飴は蘇生の呪文?


「はら…」


「変態さん?変態さんじゃん!」


え?なんて?


「愛用のフィギュア舐めるタイプのひと?しかもそのあとちゃんとキレイに拭いてそう!くさ!まじ草!草超えて森!でもゆーて大草原のかぴぱらっぽい!」


カピバラな。


「俺そんな短足じゃないよ?」


「てかどう言う意味?しかもなんでそんな嬉しそうなの?あと声デカいよ。」


あ、だめだ、もう、テンションにつられて心の声がどんどん漏れる。もうやだ何この子。俺のキャラ。どこいった。


「よーし、かぴさん、喉乾いたから飲もう」


「自由か」


「変態かぴぱらが笑わせるから」


ひかれるよりはマシだけどそんな笑わないで…


「くじらさんやつにしよー!ふわっふわたーめ!」


「あ、いいね。ぼんちゃんっぽい」


「はー!きも!ぼんちゃんはやめてくだされ!ぼんな!ただのぼん!ひらがななあ!」


「あ、うん。きもいの?ごめんね」


ひらがなってなに?


だめだ、ずっと心の声とツッコミが反対になってる。

俺のスーパークールイケメンキャラが崩れていく…。


「お主もさてはくじらさんがお気に召されたな?共にゆこうぞ!」


「あ、うん。なんでもいいけど…」


嘘です。それ飲みたかったやつ。

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